就任から100日を迎えたトランプ大統領は、自身の政権を「歴代で最も成果を挙げた」と自賛する一方、支持率は低迷し、経済や外交政策をめぐる懸念も広がっています。経済では関税政策が市場の不安を呼び、株価は大きく下落。ウクライナ戦争の停戦も進展せず、公約とのギャップが浮き彫りになっています。そんななか、トランプ氏は所得税の廃止と関税による国家運営という大胆な税制改革を掲げ、次なる一手を打ち出そうとしています。

トランプ政権発足から100日、経済はニクソン時代以来の悪夢?

トランプ大統領は政権発足から100日を迎え、「歴代大統領の中で最も成果を挙げた」と自らの実績を誇示しています。この発言は多くのメディアで取り上げられていますが、世論の評価は必ずしも一致していないようです。

ロイターが報じた支持率調査では、トランプ氏の支持率は39%にとどまり、不支持率は52%と過半数が政権運営に否定的な見解を示しました。特に物議を醸しているのが通商政策で、特に関税措置によって経済の先行きが不透明になっていることが挙げられます。株式市場もこれに反応し、S&P500は政権発足からの100日間で7.3%の下落を記録。これは1973年のニクソン政権以来、最悪の下落率(当時は9.7%減)となりました。

外交の苦悩と国境管理の“成功”

外交政策でも公約と現実のギャップが顕在化しています。大統領選挙中に掲げた「ウクライナ戦争の早期終結」という公約は実現できておらず、停戦交渉は難航。トランプ大統領自身も大きなフラストレーションを抱えているとされています。

その一方で、移民政策では数値上の成果が報告されています。米移民・関税執行局(ICE)の発表によると、6万6,463人の不法移民を逮捕し、6万5,682人を国外退去処分にしたとのことです。

また、直近で不法に国境を越えた人数は200人と、過去最低水準にまで減少。メキシコ国境では、政府が用意した移民用のベッド3,000台のほとんどが未使用であり、以前のような移民の殺到は見られていません。多くの移民が帰国するか、別の国で職を探すようになっており、この政策は一定の抑止効果を発揮しているといえます。

「年収3,000万まで所得税ゼロ」構想

今後の経済政策として、トランプ政権は日本の報道ではあまり取り上げられていない、大胆な減税案を打ち出しました。

それは、所得税を段階的に廃止し、代わりに関税収入で国家財政を賄うという構想です。特に、年収20万ドル(約3,000万円)以下の世帯については所得税の全廃を検討しています。

『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』によれば、すでにアメリカでは約40%の世帯が連邦所得税を納めていないとされており、年金や障害者給付が非課税である点や、所得控除により課税対象外となる層が多い点が背景にあります。

ただし、関税はすべての消費者に等しく課される間接税です。そのため所得税免除の恩恵を受ける低所得層にとっては、実質的な負担が増える可能性も否定できません。

トランプ氏は「関税中心の国家運営」は1913年以前の姿に回帰するものと主張していますが、当時とは社会制度や国家規模が大きく異なっています。当時は社会保障も航空管制も核兵器宇宙開発も存在しない小さな政府でした。

現代にそのモデルをそのまま適用できるのかは疑問が残るといえるでしょう。とはいえ、減税と関税の大胆な組み合わせで、低迷する支持率を挽回しようとするトランプ氏。今後の一手に注目が集まっています。

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

(画像はイメージです/PIXTA)