
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳で、銀行詐欺などの罪で実刑が確定した水原一平さんがアメリカ東部ペンシルベニア州の刑務所に収監されたと報じられた。
奇しくも大谷選手がピッチャーとバッターの"二刀流"として復帰したタイミングに重なる形となったが、これまで「受刑者」を取材してきた記者が興味をひかれるのは、アメリカと日本における情報公開の違いだ。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●刑務所の情報公開、アメリカと日本に大きな差水原さんは、大谷選手の口座から不正に送金したとして銀行詐欺罪などで起訴され、今年2月に禁錮4年9カ月と約1700万ドルの賠償支払いを命じる判決が下されていた。
報道によると、アメリカの連邦刑務所局(Federal Bureau of Prisons、BOP)は、報道各社の取材に対して、水原さんが6月16日にペンシルベニア州アレンウッドにある「アレンウッド・ロー連邦矯正施設」に収監されたことを明らかにしたという。
このように受刑者が収容された施設を公表すること自体、日本では考えられない対応だ。
アメリカではさらに、インターネット上に受刑者の情報が公開されている。
●ネット上で収容先や釈放日を公表BOPのサイトには「受刑者を探す」というページが設けられており、受刑者の登録番号などを入力すれば、本人がどこの施設にいるのかを知ることができる。
登録番号がわからなくても、名前や年齢、性別、人種といった情報があれば検索することができるようになっている。
ためしに「Ippei Mizuhara」「Asian」「Male」と入力して検索ボタンを押すと、登録番号や年齢とともに、「NOT IN BOP CUSTODY(BOP拘留中ではない)」という情報が表示された。「Release Date(釈放される日)」の欄には「UNKNOWN(不明)」と記載されていた。
また、登録番号の欄に任意の数字を入力してみると、白人男性(26)の情報が映し出され、収容先が「アトウォーター合衆国刑務所」、釈放される日が「2033年5月1日」と表示された。
BOPのサイトには他にも、「アレンウッド・ロー連邦矯正施設」を紹介する専用ページがあり、受刑者に面会するために必要な手続きや流れなどが詳しく記載されている。
●家族にもどこの刑務所か知らされない日本一方、日本の刑務所は情報公開に対して極めて消極的だ。
裁判で実刑が確定し被告人から受刑者になれば、刑務所に移送されるが、どこの刑事施設に移されるかは基本的に外部の人間には知らされない。
家族であっても受刑者本人が手紙を送るなどして、初めて本人の居場所を把握することができるのが現状だ。
事件と関係のない第三者が受刑者と連絡を取る場合、そのハードルはより高くなる。事件が起きた背景を知りたいと思った場合などに記者が受刑者に取材しようとすると、まずはどこの刑務所に収容されているかを割り出す作業が必要になる。
もちろん受刑者が釈放されるタイミングも公表されることはない。
●被害者遺族やジャーナリストの立ち会いを認める州も死刑囚になれば、原則として手紙を送ることさえできなくなる。
アメリカでは、死刑を執行する際に被害者遺族やジャーナリストなどの立ち会いを認めている州もあり、情報公開の姿勢に歴然とした差が存在している。
こうした閉鎖的な環境が、刑事施設や受刑者に関する問題を外部から見えにくくしている面は否めない。
拘禁刑の導入という明治以来となる刑罰の見直しが進む中、情報公開のあり方にも改善を期待したい。

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