
カスピ海北部に新たな島が出現したことが、ロシアの研究チームによって確認された。
まだ名前が付けられていないこの島は、2024年11月に衛星画像で初めてその兆候が観測されていたもので、ロシア・アストラハン州に属する、マリー・ジェムチュジニー島の南西約30kmに位置する。
海面からわずかに出ている地表は湿っていて平らで、表面には風や水の流れでできた筋状の砂の盛り上がりが見られた。
研究者たちは調査の為にこの島にボートで接近したものの、悪天候に加え、水深が非常に浅く船が接岸できなかったため、上陸できなかった。
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衛星画像で島の兆候、現地調査で存在を確認
新たな島の兆候が初めて確認されたのは、2024年11月。カスピ海北部の水面に、砂と堆積物の小さな塊が現れ始めている様子が衛星画像に映し出された。
これは「砂洲(さす)」と呼ばれる、水中の砂が積もってできる浅瀬のような地形で、やがて島のように姿を現すことがある。
当初は、これが本当に島と呼べる存在なのかについては見解が分かれていたが、ロシア科学アカデミーのP.P.シルショフ海洋学研究所(IO RAS)の研究チームが2025年、現地調査を行い、島の存在を確認した。
悪天候と浅い水域のため上陸断念、ドローンで地形を記録
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遠征に参加した研究者たちは、ボートで島の周辺まで接近することには成功したが、極端に浅い水域と強風に阻まれ、上陸には至らなかった。
代わりに、ドローンを用いて上空から島の形状や地形の一部を記録することができた。
記録された画像によると、島は海面から数cmだけ顔を出しており、表面は湿っていて平坦で、細かい砂の尾根が複数見られたという。
まだ詳細な調査は行われておらず、今後の訪問が予定されている。

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水位が下がって海底が顔を出した新しい島
研究チームによると、今回見つかった島は、もともとは海の底にあった場所が水位の低下によって水面に現れたもので、「一時的にできる島」といえる。
こうした現象はカスピ海では過去にも見られていて、1930年代や1970年代にも水位が下がったときに似たような島や地形の変化が起きていた。
2010年ごろからまた水位が下がり始めており、今回の島もその影響と考えられている。
水位が変わる原因としては、気温の上昇によって水の蒸発が進んでいることが関係している可能性がある。
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また、海の下で起きている地殻の動き(地震などを引き起こす地面の変化)も関係しているかもしれない。これらの複数の自然現象が重なって、今回の島の出現につながったとみられている。
命名と今後の調査は2025年後半に予定
研究チームの上級研究員であるステパン・ポドリャコ氏は、島への再訪を2025年後半に計画していると述べた。
今後の調査では、島の成り立ちや特徴を詳しく調べた上で、正式な名称が決定される見通しである。
特徴的な地形が見つかればそれにちなんだ名前が付けられるが、そうでない場合は地域の科学・文化に貢献した人物の名が検討される可能性もあるという。
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この島は現在、海面からわずかに突き出た状態だが、夏から秋にかけてカスピ海への河川流入量が減少すると、周囲の水位が下がり、地上に現れる面積が広がる可能性があるとされている。

カスピ海とは?
カスピ海は、ヨーロッパとアジアの境目にある世界最大の「内陸の湖(内海)」で、海のように見えても外洋とはつながっていない。
面積は約37万1,000km²と日本の国土のほぼ1倍分に相当する広さを持ち、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、イラン、アゼルバイジャンの5カ国に囲まれている。
それぞれの国が一部の沿岸を所有しており、領有権や海底資源の利用をめぐって国際的な合意が必要とされる複雑な海域である。
今回発見された新島は、ロシアの沿岸から約30km南西に位置しており、ロシアが国際条約に基づき領域の一部として管理する水域内にある。
References: Tass.ru[https://tass.ru/obschestvo/24066833] / Russian scientists discover a new island in the Caspian Sea — the world's largest inland body of water[https://www.livescience.com/planet-earth/rivers-oceans/russian-scientists-discover-a-new-island-in-the-caspian-sea-the-worlds-largest-inland-body-of-water]
本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

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