長年にわたり愛され続ける、アンドレイ・セルバン演出のオペラトゥーランドット

オペラ・キュレーター、井内美香氏の解説とともに見どころを一挙ご紹介!


  アンドレイ・セルバン演出の『トゥーランドット』は、1984年初演の英国ロイヤルオペラ最古のプロダクションとして、長年にわたり愛され続けている。初演キャストにはプラシドドミンゴギネスジョーンズという伝説的歌手が名を連ね、1986年の日本公演でも大きな話題を呼んだ。

 井内氏は、セルバン演出の魅力について、「トゥーランドット》の世界観を余すところなく描き出す点にあります。」と語る。本作では、古の中国を彷彿とさせる美術セットと、舞台を囲む木製ギャラリーによって圧倒的な世界観が構築されている。また、ケイトフラットによる太極拳風の振付や、照明・スモークを駆使した演出がドラマ性を高めており、「音響的にも演劇的にも理想の空間を作り出しています。」と高く評価している。さらに、井内氏はシネマ版ならでは特典のである関係者インタビューについても触れ、「初演時の振付家ケイトフラットが演出について語る貴重な映像は必見です。」と推薦している。

 また、実力派キャストたちのアンサンブルにも注目が集まる。トゥーランドット姫を演じるソンドラ・ラドヴァノフスキーについて、井内氏は「彼女の歌唱は圧巻の一言。」と述べており、第2幕のアリアから第3幕にかけて、苦悩と愛情を鮮やかに表現するドラマ性と歌唱力で観客を圧倒している。カラフを演じるソクジョン・ベクについては、「ベクの声は「誰も寝てはならぬ」を歌うためにあるのでは、と思わせる素晴らしさです。」と絶賛しており、ラドヴァノフスキーに引けを取らない存在感を見せている。リューを演じるジェマ・サマーフィールドもまた、音楽性豊かな歌唱で観客を魅了している。

また、セルバン演出では特にピン・パン・ポンの3人が特に重要な役割を担っている。井内氏は「音楽的にも重要なパートを受け持つ彼らは、躍動的な動きを見せる一方、故郷を懐かしむ場面などでは、人間味あふれる一面を見せてくれます。」と語り、彼らの人間性を描き出す演出の妙にも注目している。

 そして、井内氏は『トゥーランドット』の本質的な魅力として、プッチーニが生み出したリューの存在を挙げている。彼女の死後の展開には意見が分かれるが、「セルバン演出の舞台を観ていると、最後に彼が見せるリューの存在が、ドラマの核心をついたものだと納得させられます。」と語り、「数多くの葛藤を抱えながら生きる現代の人々こそ、プッチーニの音楽をこの上ない形で表現したこの舞台を、ぜひ体験していただきたいです。」とメッセージを送っている。

劇場とは異なる視点から作品の魅力を再発見できる絶好の機会となる、シネマ版『トゥーランドット』をぜひ劇場でお楽しみください。


井内美香(オペラ・キュレーター)『トゥーランドット』解説全文はコチラ


【STORY】

おとぎ話の時代の中国、北京。皇帝の娘トゥーランドット絶世の美女だが、求婚する者に三つの謎を出題し、答えられなければ首をはねるという布令を出していた。だが諸国からの挑戦者は後を絶たず、彼らは一人残らず処刑されていた。そこに祖国を敵に追われ流浪しているタタールの王子カラフがやってくる。生き別れになっていた父王ティムールと再会し喜ぶカラフ。年老いたティムールを支えてきた女奴隷リューは、カラフがかつて王宮で彼女に微笑んだことから彼を一途に思っていた。トゥーランドット姫の残酷な布令を知り、初めは反発を覚えたカラフだが、姫を一目見た瞬間にその魅力に取り憑かれ、挑戦を決めてしまう。

トゥーランドット》全3幕

音楽:ジャコモ・プッチーニフランコ・アルファーノ補筆版)

台本:ジュゼッペ・アダーミ、レナート・シモーニ

(原作:カルロ・ゴッツィによる寓話劇「トゥーランドット」)

指揮:ラファエル・パヤーレ

演出:アンドレイ・セルバン

再演演出:ジャック・ファーネス

美術・衣裳:サリージェイコブス

照明:F・ミッチェル・ダナ

振付:ケイトフラット

振付記譜:タチアナ・ノヴァエス・コエーリョ

ロイヤルオペラ合唱団(合唱指揮:ウィリアム・スポールディング)

ロイヤルオペラ・ハウス管弦楽団(コンサートマスターセルゲイレヴィティン)

映像監督:ブリジット・コールドウェル

【キャスト】

トゥーランドット姫:ソンドラ・ラドヴァノフスキー

カラフ:ソクジョン・ベク

リュー:ジェマ・サマーフィールド

ティムール:アダム・パルカ

ピン:ハンソン・ユ

パン:アレッド・ホール

ポン:マイケルギブソン

アルトゥム皇帝:ポール・ホップウッド

官吏:オシアン・ハスキンソン

児童合唱:カーディナルヴォーンおよびグレイコート学校




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