
痛みをこらえながら一塁方向へと進んだ大谷。(C)Getty Images
球場が騒然となる“報復行為”にも大谷翔平は毅然と振る舞い続けた。
波紋を広げたのは、現地時間6月19日に行われたパドレス戦での一幕だ。「1番・指名打者」で先発出場したドジャースの大谷は、3点ビハインドの9回裏の攻撃の際に、元阪神の助っ人で、相手守護神のロベルト・スアレスから右肩付近に“報復”と取れる死球を受けた。というのも、直前の9回表にドジャース側がフェルナンド・タティスJr.の左手にボールをぶつけ、それが引き金となって乱闘が勃発、両軍の監督が退場処分となる事態となっていた。
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そもそも今シリーズでは、両チームの根深い遺恨が明確化していた。17日の試合ではタティスが3回にドジャース右腕ルー・トリビーノから背中に死球を受けると、直後に大谷が右腕ランディ・バスケスに右太もも付近にぶつけられていた。
やられたらやり返す――。まさに米球界の暗黙のルールに乗っ取った“やり合い”によって球場全体が騒然となった。そんな異様な空気の中でも大谷は毅然とした態度で振る舞い続けた。スアレスから死球を受けた直後、「やったな」とばかりにベンチを飛び出そうとしたクレイトン・カーショウらに目を向けた背番号17は「大丈夫だから出てこないで」と左手で合図。エキサイトする味方をいさめたのである。
100マイル(約160.9キロ)の直球を受けた痛みにこらえ、顔をしかめながらも、一塁上に向かった大谷。事を荒立てようとしなかった偉才のクレバーさは、現地メディアでも称賛が相次いだ。ドジャースの専門サイト『Dodgers Nation』のノア・カムラス記者は「パドレスは100マイルの速球で報復したが、オオタニは事態が今以上に悪化しないようにした」と強調。さらに全米野球記者協会のフランシス・ロメロ記者も「ショウヘイ・オオタニは平和賞にノミネートした」とユニークに伝え、「彼はまたも格の違いを見せつけた」と脱帽した。
いがみ合いのうちに幕切れとなったドジャースとパドレスの4連戦。因縁が深まる両軍は、8月にふたたび相まみえる。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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