
充分な加速にひと苦労 ブレーキも褒めにくい
フォルクスワーゲン・タイプ2が嫌いだという人は、いらっしゃるだろうか。エンジンは非力で、燃費はイマイチ。それでも、初夏の浜辺を目指すクルマとして、これ以上に最適な例は思い付きにくい。完璧でなくても、唯一無二。熱烈なファンは今でも多い。
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1967年にタイプ2 T1からアップデートした、タイプ2のT2、通称レイトバスでも、速さを求めるのは間違い。空冷の1.6L水平対向4気筒エンジンは、標準の最高出力が50ps。0-100km/h加速は、追い風でも30秒近く必要になる。
市街地でも充分な速度へ達するのにひと苦労ながら、ブレーキも褒めにくい。ペダルの感触はフワフワで、制動距離はボート並み。赤信号は、予測的に判断する必要がある。
背が高く重いワゴンボディだから、コーナリングも苦手項目。サスペンションはゼリーのように柔らかく、カーブでは傾くボディへ乗員が耐える必要がある。ステアリングホイールは重く、曲がる度に沢山の筋力を使う。
日々の整備と忍耐が欠かせない
好条件のタイプ2 T2は希少でも、探せばサビの少ないボディがオリジナルへ近い内装を包む例は出てくる。それでも購入後は、日々の整備と忍耐が欠かせない。
半世紀以上前のクルマだから、経年劣化で燃費は大幅に落ちていて不思議ではない。7.0km/L台に届いたら、御の字といえる。排気漏れにも注意したい。
安全性も高くはない。運転席はフロントアクスルの真上で、クラッシャブルゾーンはほぼゼロ。エンジンルームには、デッドニングを施すオーナーが多い。走行中のエンジン音が大きいためだ。速度を高めれば、風切り音も盛大に響く。
ワイパーはフロントガラスを充分には拭き取れず、雨の日は外出を諦めさせるかも。ヘッドライトも暗い。日常的に予定通り移動したいなら、最新のフォルクスワーゲンID.バズを選んだ方が賢明だろう。
所有自体が型破りな経験 トラブルにも目をつむれる?
見た目はダントツに可愛い。水平対向エンジンのサウンドも特徴的。曖昧な操縦性にも、不思議と愛着が湧くのかもしれない。オーナーの気持ちを掴んで放さない、他に例のない個性が最大の魅力といえる。
タイプ2なら、身近な場所へのドライブも、思い出に残るイベントになり得る。不測の事態へ構えている必要はあっても、所有すること自体が型破りな経験。1度魅了されたら、多少のトラブルにも目をつむれるようになるのだろう。
新車時代のAUTOCARの評価は?
新しい1584ccエンジンは、以前より軽快に吹け上がる。動力性能は80km/h程度までは悪くないものの、そこから先は大きく鈍化。空冷の水平対向エンジンが放つノイズは大きく、路上では周囲の人を振り向かせてしまうほど。
シフトレバーは曖昧で、変速には少しの慣れが必要。ステアリングホイールやペダルの感触は緩く、バネが介在するようでもある。クラッチペダルは滑らかで、充分に軽い。ステアリングは正確だが、横風で進路は乱されがち。(1968年2月1日)
オーナーの意見を聞いてみる
ジョン・コンスタブル氏
「タイプ2 T2は、メカニズム的には堅牢です。でもボディは錆びやすく、多くの予算と修理が必要かもしれません。パテでごまかされていないか、確認する価値はあります。養生したマグネットをボディに近づけて、ある程度はチェックできます」
「古いクルマなので、ボディが平滑すぎる場合は、パテ盛りされた可能性があります。新車時でも、サイドパネルが波打っているのは珍しくありませんでした。購入前は状態を確かめるだけでなく、他の例と比較するのが良いでしょう」
*この記事は、2023年4月公開分をフォルクスワーゲンID.バズの日本発売に合わせて加筆した、再編集版です。
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