開幕投手を務めた戸郷は今季2度目のファーム調整が決まった(C)産経新聞社

 近鉄で主に中継ぎ投手として活躍、現在は野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲキ的球論」。今回は27日から再開するリーグ戦に向けて、各球団の整備ポイントを独自の視点で語っている。

 交流戦ソフトバンクが6年ぶり9度目の優勝を飾った。

【画像】近鉄で中継ぎとして活躍した佐野慈紀氏

 18試合を12勝5敗1分け。最終となった22日の阪神戦(甲子園)にも3-1と勝利。主力に不振や故障離脱の選手を多く抱えながら、交流戦打率.397と首位打者が確実となっている柳町達などの活躍も光り、層の厚さを見せつけた。

 また、交流戦ではパ・リーグのチームがセ・リーグに大きく勝ち越したことも話題を呼んだ。リーグ首位の日本ハムから4位の西武まで3.5ゲーム差(22日現在)と混パが続く中で、佐野氏は「まずパ・リーグはやっとホークスが調子が上がってきたという感じですね」とコメント。交流戦Vもあり「勢いがつきそうな雰囲気あるんで。実績のあるチームですから。ほかのチームがこの勢いをどうやって、削いでいくのか。パ・リーグはそこが鍵となるでしょう」(佐野氏)と昨年もリーグ制覇したソフトバンクを中心に回っていくという見方を示した。

 一方、セ・リーグについては各チームの「先発投手陣がカギになる」とした。

 「セ・リーグはこの交流戦先発投手が結構打たれているので、その整備をできるチームがまた、レギュラーシーズン勢いついてくるかなと思います」と佐野氏。

 実際に巨人では22日の西武戦(東京ドーム)に先発した戸郷翔征が5回6安打3失点で6敗目を喫した。今季最多の四死球、抜け球、逆球も多く、制球を乱し、好調西武打線につかまった。試合後には今季2度目の2軍再調整が決まった。

 巨人ではほかにも若手左腕の井上温大が17日の日本ハム戦(東京ドーム)で2回にプロ初となる1イニング3発を浴びるなど、このところ乱調。

 頼みの綱である山崎伊織も前回19日の日本ハム戦(東京ドーム)では5回10安打4失点と打ち込まれたとあって、リーグ戦再開を契機に先発ローテーションの入れ替え、再整備に時間を使うことになりそうだ。

 リーグ2位のDeNAでも剛腕、トレバー・バウアーが22日のロッテ戦(横浜)で初回から5失点、1回3分の0を来日ワーストタイの7失点とここにきて、各球団、投手陣に疲れが目立ち始めた。

 今夏は梅雨明け前から異例の猛暑となっていることもあり、各チーム、選手にパフォーマンスを落とさせないための施策も求められそう。いずれにせよ、ここからの戦いはファームにいる選手の活用含め、層の厚さが問われるところでもある。

 再び始まるリーグ戦で存在感を示すのは果たして、どの球団となるか。引き続き、熱い戦いに注目が高まっていきそうだ。

【さの・しげき】

1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。

「セ・リーグは先発投手陣の整備が大事」勝負のリーグ戦再開に向けて「必勝ポイント」を近鉄OBの佐野慈紀氏が解説