
大幅なパワーアップを実現
フォルクスワーゲンは、50周年を迎える高性能ハッチバック『ゴルフGTI』の特別仕様車として『エディション50(Edition 50)』を発表した。歴代GTIで最もパワフルで「最もダイナミックな走り」を実現するモデルとされている。
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GTIという名称は、「グランドツーリング・インジェクション(Grand Touring Injection)」の略で、1975年に初めてゴルフに採用された。今回の特別仕様車は、既存のMk8.5をベースに、2.0L 4気筒EA888ターボチャージャー付きガソリンエンジンを搭載し、最高出力325ps、最大トルク42.8kg-mを発揮する。
標準のゴルフGTIより60ps、5kg-mのパワーアップを実現しており、サーキット志向のGTIスポーツと比較しても25psと2kg-mの差がある。四輪駆動のゴルフR 20イヤーズは333psと、最高出力においてはわずかに優位性があるが、トルクは同等だ。
これにより、エディション50は、0-100km/h加速5.5秒(GTIクラブスポーツより0.1秒短縮)、0-200km/h加速16.9秒(同0.4秒短縮)を実現。ライバルであるホンダ・シビック・タイプR(0-100km/h加速5.4秒)にも肉薄している。最高速度は、引き続き270km/hに制限される。
鍛造ホイールに専用タイヤで軽量化
しかし、開発に携わったエンジニアたちは、出力向上には重点を置いていないと主張している。シャシー開発責任者のラース・フロミク氏は、「サーキットでも最高の性能を発揮します。パフォーマンスとは、単なるパワーだけではありません」と語る。
シャシーは、GTIの標準装備であるマクファーソンストラット式フロントサスペンションとマルチリンク式リアサスペンションを改良し、GTIより20mm、GTIクラブスポーツより5mm車高を低くした。
主な変更点としては、スプリングとダンパーのレート調整、および大幅に増加したフロントのネガティブキャンバー(約-2.0度)がある。これは、アッパーサスペンションマウントの剛性向上、ホイールキャリアの改良、およびロアコントロールアームのブッシュ強化により実現した。
リアでは、Mk7のGTIを彷彿とさせるツインアタッチメントのトラックロッドと、新しいホイールキャリアジオメトリを採用し、荷重時、特に急な方向変更時における横方向の剛性とトー安定性を向上させている。
また、アグレッシブなハードウェア構成に合わせて、電動ステアリング、DCC(ダイナミック・シャシー・コントロール)、VDM(ビークル・ダイナミクス・マネージャー)も調整されている。
シャシーのアップグレードを補完するのは、このエディション50のために特別に開発された235/35 R19のブリヂストン・ポテンザ・レース・セミスリックタイヤだ。このタイヤは、前世代のポテンザ・レースよりも1本あたり1.2kg軽量で、19インチの鍛造アルミホイール『ヴァルメナウ』に装着される。
フロミク氏によると、このタイヤとホイールの組み合わせだけで、GTIクラブスポーツに比べて、1本あたり2kg以上のバネ下重量を削減できるという。これはステアリングレスポンスの向上にも大きく貢献するとのこと。加えて、オプションのアクラポヴィッチ製チタンエグゾーストシステムを選択すれば、さらに11kgの軽量化が可能だ。
セミスリックタイヤはドライおよびウェットコンディションの両方でグリップを向上させ、荷重時のサポート力を高めるためにサイドウォールの剛性を強化している。これらはすべて、ラップタイムの安定性とドライバビリティの向上を目的としたものだ。
ニュルではVW最速を達成
フロミク氏によると、エディション50は既存のGTIモデルよりも旋回性能が高く、ボディコントロールが大幅に改善されているとのことだ。「ロールが少なく、横方向の力の発生がより滑らかです。わたし達はこのクルマのパフォーマンスに全力で取り組んでいます」
エディション50は、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで7分46.13秒のラップタイムを記録している。これは、四輪駆動のゴルフR 20イヤーズを含む、フォルクスワーゲンの量産車として最速のタイムだ。
スタイリングとしては、GTIクラブスポーツを踏襲しているが、ドア下部のブラックグラフィック、ルーフスポイラーの「50」のデカール、ブラックのエグゾーストパイプなど、さりげない違いがある。
価格や生産予定台数はまだ発表されていないが、限定モデルとなる見込みで、価格は約4万5000ポンド(約890万円)からと予想されている。英国での注文受付は今年末ごろに開始され、右ハンドル仕様の納車開始は2026年初頭を予定している。
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