不動産関連情報を発信するいえらぶGROUPによると、東京都墨田区など一部地域では、家賃が1.5倍も高騰! 物価高はすでに我々の住まいにも影響を及ぼしていたのだ――。

◆マンション価格高騰の余波?家賃値上がりの背景とは

 入居している賃貸物件の大家から突然、家賃値上げの告知をされる──。なぜそのような事態が起こるのか。大きな要因は、やはり物価高の影響だ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が解説する。

「多くの庶民の生活に影響を及ぼしている物価高ですが、それは物件を管理する大家にとっても同じ。ほかのものの値段は上がる一方、家賃は40年以上前から据え置きという物件は多い。共用部分の光熱費などが上がり、現状の賃料では運営がままならず値上げの告知をするというケースが相次いでいます」

 実際、東京23区の賃貸物件の平均価格を’23年の1〜3月と比較すると、なんとファミリータイプの物件においては約6万円も値上がりしている。

 上昇要因として、榊氏はマンションの価格高騰を指摘する。

「投資目的でマンションを購入した場合、都心では利回り3〜4%になるよう家賃を設定するオーナーが多い。当然、買値が高くなると、それが賃料にも反映されます。また、都心ではマンションを購入してそこに住まうファミリー層が多かったのですが、今では庶民には手の届かない価格にまで上昇。これまでマンションを購入していた層が賃貸に流れた影響で需要が増え、ファミリータイプの賃貸物件の平均賃料が押し上げられた格好です」

◆マンション価格の高騰は「外国人富裕層の影響が大きい」

 宅地建物取引士の中村伸樹氏はマンション価格の高騰について、「特に外国人富裕層の影響が大きい」と続ける。

「顕著なのは中国人。先日、僕が立ち会ったケースだと、10億円近くする80㎡の部屋を一括購入していました。海外富裕層が資産を国外に逃がしておくために日本のマンションを購入する傾向は’10年代からありましたが、コロナ禍で一時落ち着き、’23年からまたぶり返している。人件費や建材の高騰も相まってではあると思いますが、特に新築賃貸物件やリノベーション物件に関して、大手不動産会社を中心に、強気の価格設定をしている側面もあります」

◆家賃の値上げ告知に効果的な対処法とは?

 では、自分が住む物件で値上げを要求された場合、どのように対処すればいいのだろうか。

「まず、大家や管理会社に家賃値上げの明確な理由を問い合わせること。国税局が定める物件が立っている前面道路の路線価、あとは近隣家賃相場が明らかに上昇していれば、裁判でも家賃値上げの正当な理由として認められやすい。しかし、『最近、どの業界も物価高で大変なので……』といった曖昧な理由であれば、住居者は突き返して問題ありません」

 それでも無理に家賃を上げられた場合は、供託という法的手段も有効だという。

「供託とは、家主が従来の金額の家賃の受け取りを拒否した場合、代わりに法務局の供託所に支払えば、そのお金は家主に届くという仕組みです。供託をしていれば、仮に裁判になっても、借り主は家賃滞納とは見なされずに済みます」

 本来、借り主の立場はそう弱くない。横暴な値上げに泣き寝入りする前に、できることがあるようだ。

東京23区の家賃上昇率(前年比)

ファミリー向け物件
【賃料】30万6004円
【上昇率(前年比)】23.8%

カップル向け物件
【賃料】14万9287円
【上昇率(前年比)】22.3%

シングル向け物件
【賃料】8万2809円
【上昇率(前年比)】8.6%

’24年1~3月家賃平均価格および上昇率(前年比)。いえらぶGROUP公表のデータを基に編集部作成

【住宅ジャーナリスト・榊 淳司氏】
同志社大法学部・慶應大文学部卒。著書に『激震! コロナと不動産』、『マンションは日本人を幸せにするか』は中国でも翻訳された

宅地建物取引士・中村伸樹氏】
優和コンサルティング執行委員で、都内の不動産に精通する。行政書士中村のぶき法務事務所の代表行政書士も務める

取材・文・撮影/週刊SPA!編集部

―[物価高で[家を失った人たち]の悲劇]―


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