日向夏の小説を原作とする後宮謎解きエンターテインメント、アニメ「薬屋のひとりごと」(毎週金曜夜11:00-11:30ほか、日本テレビ系/ABEMA・ディズニープラスFODHuluLeminoTVerほかで配信)。本記事では、第33話「先帝」をプレイバック。今話では、安氏(CV.能登麻美子)が先帝にかけたという“呪い”の正体が判明。謎解きの後には、安氏の回想から先帝との秘められた過去が明かされ、安氏を演じる能登麻美子の卓越した声の演技が大反響を呼んだ。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】つぶらな瞳で先帝を見つめる幼い安氏(CV.能登麻美子)

■先帝にかけられた“呪い”の正体は雄黄に含まれる砒毒

亡くなって1年経っても、生前と変わらない姿を保つ先帝の遺体。皇太后・安氏が“呪い”と呼ぶ不可解な現象の謎を解くため、猫猫(CV.悠木碧)は久しぶりに壬氏(CV.大塚剛央)の屋敷に滞在することに。水蓮(CV.土井美加)に勧められて好みの本を探していた猫猫は、壬氏が幼い頃にお気に入りだったおもちゃが入っている行李の中に、黄色い石を見つける。それは、毒を含む石――雄黄だった。

翌日、猫猫は呪いの正体に関する仮説を確かめるべく、安氏たちと共に先帝が過ごしていた部屋へ。先帝の使用人をしていた者を呼びにいかせる間、床の汚れを観察していると、汚れが壁に近づくにつれて増えていることに気づく。壁に何かあるのかと聞かれた公奴婢は、無反応だが明らかに緊張しているようだ。そこで猫猫が壁に貼られた紙を慎重にはがすと、その下から黄色い衣装を着た女性の絵が現れる。

女性の衣装には雄黄という石を原料にした黄色い顔料が使われており、雄黄に含まれる砒毒(ヒ素)には物を腐りにくくする作用がある。この砒毒はだんだん先帝の体内に取り込まれ、先帝が亡くなる頃には全身に回っていたはずだ。猫猫の解説を聞いた安氏は、十分な働きだったと猫猫に労いの言葉をかけるのだった。

■安氏と先帝の愛憎に満ちた関係が明らかに

猫猫たちが部屋を退出したのち、安氏の回想によって先帝との複雑な関係が明かされた。文官の父と側室の母を持つ安氏は、父の思惑により、中級妃である異母姉の侍女として後宮へ。何も知らない姉は美しい先帝の来訪に心をときめかせるが、先帝はすでに成熟している姉の手を振り払い、野心に満ちた目で自分を見つめる幼い少女を選んだ。その後、安氏は男児を産み、皇太后という地位を手に入れたのだった。

しかし、少女の外見でなくなった安氏に、先帝が会いにくることはなかった。女帝の傀儡としてのみ存在し、幼い娘にしかまともに話しかけられない先帝に自分の存在を忘れられることは、安氏にとって耐えがたい屈辱だったようだ。先帝の思い出に自分を刻みつけるため、安氏は自分を恐れる先帝を無理やりいたぶった。それがきっかけだったかは定かではないが、心を壊した先帝は、亡くなるまで過ごしたあの棟に引きこもるようになったという。

ふだんの穏やかな口調が、独白では一転、激情を吐き出すような鬼気迫る口ぶりを見せた安氏。少女の頃の幼い声まで演じ分けた能登麻美子の表現力に、視聴者は圧倒されたようだ。SNSには「能登さんの演技の幅が際立っていた」「回想での皇太后の迫力がヤバかった」「少女から大人まで1話内で三転する演技素晴らしかった」など、絶賛の声が多数寄せられた。

■安氏の言葉に隠された意味とは

部屋を出た安氏に、壬氏は水蓮に返してもらった雄黄を見せ、昔安氏が好んで黄色の着物を着ていたこと、そして先帝が描いた女性は本当に女帝なのかと尋ねる。その疑問を安氏は受け流し、猫猫に目をかけている壬氏に対し、「お気に入りは隠しておかないと誰かに隠されてしまうわよ」と含みのある言葉を投げかけるのだった。

猫猫が女帝だろうと推測した黄色い衣装の女性は、実際は誰だったのか。安氏は壬氏を「不義の子」「取り違えられた子」と表現していたが、壬氏の両親は誰なのか。「お気に入りは隠しておかないと…」という言葉は何を意味しているのか。徐々に壬氏の血縁関係が見え始め、SNSには「相関図を必死に頭に思い描いた回だった…」という声も。

「安氏は愛されたかった呪いから解放されたかな?」「愛と野心に翻弄された皇太后が哀れにも思える」「女帝の傀儡で幼女趣味の暗君という印象だったけど、実態を知ると哀れに思える人だった」など、安氏と先帝の愛憎に満ちた過去に言及する視聴者も多く見られた。

◆文=帆刈理恵(スタジオエクレア)

アニメ「薬屋のひとりごと」第33話より/(C)日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会