中学や高校、大学の体育祭文化祭などで、クラス全員で着る「クラT」(クラスTシャツの略)。学校生活の楽しみの一つだが、ここ数年、業者への注文をめぐるトラブルが相次いでいる。

クラTはオリジナルデザインで作成し、必要な枚数を業者に発注。イベント当日までに納品されるのが一般的だ。ところが、国民生活センターによると、「当日までに届かなかった」「頼んだ業者と連絡が取れなくなった」といった相談が増えているという。

国民生活センターは、注文前に業者の情報を確認することや、トラブルが発生した際はすぐに最寄りの消費生活センターに相談するよう注意を呼びかけている。

●実際のトラブル事例「税関で没収された」

国民生活センターが紹介している事例は次の通りだ。

文化祭当日までに届かず、連絡も取れない】

学校に置いてあったパンフレットを見て、クラTを1枚2000円で34枚注文した。クラTは注文から2週間以内に発送され、代金は到着後に支払う予定だったが、文化祭当日になってもクラTは届かなかった。業者とはLINEでやりとりしており、何度もメッセージを送ったが返事はなかった。パンフレットには業者の所在地や連絡先が記載されていなかった。

【カタログでデザインを選んだクラTが税関で没収された】

文化祭で使うクラTを、1枚2500円で39枚注文した。生徒がSNSの広告で見つけた業者で、カタログから、有名サッカーチームのエンブレムが入ったデザインを選んだ。その後、業者から「名前を入れる前のTシャツが税関で没収された」と連絡があった。文化祭に間に合わないのでキャンセルしようとしたら、原価代として1枚1000円払うよう言われた。

著作権の関係でロゴやエンブレムを使用できないと言われた】

体育祭で着るクラTを、SNSで見つけた業者に注文しようとLINEで連絡した。SNSに載っていたカタログから、ロゴとエンブレムの入ったデザインを選び、1枚2000円で39枚注文した。ところが、その後、業者から「ロゴとエンブレムが著作権の関係で使えないのでデザインを変更してほしい」と連絡がきた。希望するデザインでなければキャンセルしたいと伝えたところ、「申し込み時にキャンセル不可と記載している。キャンセルするのであれば、商品の代金を全額払ってもらう」と言われた。

●消費者安全法に基づき業者名が公表されたことも

クラTをめぐるトラブルは、近年、社会問題となっている。

たとえば、2021年5月以降、オンラインショップでクラTを受注していた横浜市の業者について、納品が間に合わなかったという苦情が消費者生活センターに多数寄せられた。

消費者庁は2022年10月、この業者に「消費者の利益を不当に害するおそれのある行為」(債務の履行の著しい遅延)があったとして、消費者安全法に基づき業者名を公表している。

弁護士ドットコムニュース編集部が国民生活センターに取材したところ、この問題が公表されてから、同様の相談が年間数十件に上っており、今年も増加傾向にあることから、6月4日に改めて注意喚起をおこなったという。

●トラブルを防ぐためにチェックすべきこと

国民生活センターは、トラブル回避のため、以下のポイントも確認するよう呼びかけている。

・注文前に、業者のカタログやウェブサイトを見て、住所・連絡先・キャンセル条件等を確認しましょう。

・発送予定日を確認し、余裕をもって注文しましょう。

・実在する企業やスポーツチーム等のロゴが入ったデザインのTシャツは、正規品ではない場合、絶対に注文してはいけません。

・注文する前に、先生や保護者などにも確認してもらいましょう。

国民生活センターの担当者は「不安に思ったら、すぐに最寄りの消費生活センターに相談してください。学生や生徒が相談することも可能です」と話している。

文化祭直前なのに「クラT」が届かない…全国でトラブル急増、国民生活センターが注意呼びかけ