
アルファ・ロメオ115周年の記念日に
ステランティス・ジャパンは6月24日、新型コンパクトSUV『アルファ・ロメオ・ジュニア』を発売。都内で発表会を開催した。同日はアルファ・ロメオ115周年の記念日でもあり、それを祝う形となった。
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ボディサイズは全長4195mm、全幅1780mm、全高1585mmとコンパクト。現在のアルファ・ロメオはジュリア、ステルヴィオ、トナーレの3車種だが、その末っ子となる。ミトやジュリエッタが販売終了していて途絶えていたコンパクト・アルファ・ロメオの復活だ。
『ジュニア』は1960年代に『GT1300ジュニア』のような形で使用されていた名称で、近年ではジュリアやステルヴィオの限定車でも採用されたもの。ちなみに、昨年4月にイタリアで発表された時は『ミラノ』だったが、イタリア政府からの横やりでジュニアに変更したという経緯がある。
日本に導入されるのは4グレード。1.2L直列3気筒ターボのマイルドハイブリッドを搭載する『イブリダ・コア』(価格420万円)、『イブリダ・プレミアム』(468万円)、『イブリダ・スペチアーレ』(533万円)と、BEVの『エレットリカ・プレミアム』(556万円)となる。スペチアーレは発売を記念した限定車だ。
マイルドハイブリッドは既にフィアット600ハイブリッドに搭載されているものと同ユニットで、マイルドを名乗るものの、低速時はモーターのみで走行が可能。システム最高出力は145psとなる。一方のBEVシステムはフィアット600eと同様。最高出力は156psで、航続距離はWLTCモードで494kmとなる。
パワーユニットが共通であることからも想像できるように、ジュニアと600はプラットフォームを共有。ポーランド・ティヒにあるステランティスの工場で、ジープ・アヴェンジャー、ランチア・イプシロンと共に作られている。
アルファ・ロメオらしさはやはりデザイン
ではアルファ・ロメオらしさをどう表現するか。それはやはりデザインであろう。今回の発表会には、チーフエクステリアARデザイナーのボブ・ロムケス氏が来日し、プレゼンテーションに登壇。その後、ラウンドテーブルでも話を聞くことができた。ロムケス氏は33ストラダーレのエクステリアデザインも担当した人物である。
キーとなるのは、ES30型SZを彷彿とさせトナーレでも表現された三眼のヘッドライト、トライローブ=三つ葉形状のフロントグリル、1960年代に見られた空力のためにリアエンドを断ち切ったコーダトロンカといった部分だ。
ロムケス氏は、人間味に溢れる、感情的、直感的というキーワードを用いながら、若々しさ、機敏さや楽しさを表したと解説。顔があり、筋肉があり、肩があることで、エモーショナルなデザインとしている。
また、「コピペはしない」、「時代やトレンドを掴むデザインはしない」と断言。プラットフォームを共有するモデルも多いのでチャレンジングな部分、つまり制約もあったか聞いたが、「長いプロセスをかけてエンジニアとやり取りをしている」と自信を見せた。
確かに実車はSUVだからアクティブというよりも、形自体にどこか躍動する雰囲気がある。これまでのどのモデルとも異なるが、やはりアルファ・ロメオだと思わせるものだった。それは『スクデット』と呼ばれる、グリルの中心にある盾の存在が大きいだろう。
グリルをロゴの形で切り抜いたものが『プログレッソ』と呼ばれ、日本仕様ではBEVと限定車のスペチアーレといった上級モデルに採用される。一方グリルに往年の筆記体ロゴを組み合わせたものが、『レジェンダ』と呼ばれるものだ。
また、走行性能も特徴となるはずだが、それは別の機会で報告する。
アルファ・ロメオ再拡大の起爆剤に
また、この1月にステランティス・ジャパン代表取締役社長に就任した成田仁氏は、現在を好機と捉えている。景気が乱高下する中で、同社が扱うプレミアムブランドには一定の需要があると分析しているからだ。
これまでのアルファ・ロメオ3車種は、ポートフォリオとして苦しい面もあったと認めながら、ジュニアは以前ミトやジュリエッタに乗っていた元オーナーはもちろん、若い世代にもアピールすることで、「再拡大の起爆剤にしたい」と語る。
成田氏の就任後、5月1日には各モデルの値下げがあり、今回のジュニアも、アルファ・ロメオ事業部長黒川進一氏は「攻めた価格帯」と語っている。確かに実入りは減るが、「十分な利益は確保しています。最近は為替コストも安定していますので、適度な利益で数を販売したいです」と成田氏。
また、BEVに関しても「昨年、輸入車の販売比率で初めて10%を超えました。動きは鈍いですが、スポーティモデルの電動化は確実に進んでいます」と成田氏はコメント。今後の需要増に対し選択肢として備えておきたいと、ハイスペックモデル『Q4』導入の可能性も否定はしなかった。
発表会でビデオメッセージを寄せたアルファ・ロメオのブランドCEOであるサント・フィチリ氏は、既にジュニアが世界で4万台以上販売され、そのうち15%ほどがBEVだと説明。さらに近年はインド、アジア、太平洋地域において50%以上のアルファ・ロメオが日本市場で販売されていると語った。日本はやはり熱心なアルフィスタが多く、それを本国も輸入元も認めたうえで、ジュニアに大きな期待を寄せているわけだ。
筆者のような50歳代がかつて156や147にときめいたように、現在の若い世代がジュニアに魅力を感じれば、120周年、125周年と続くアルファ・ロメオにとって、新たなサイクルが生まれることになる。果たして起爆剤となるか、注目していきたい。

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