
日本に渦巻く老後不安。少子高齢化も進むなか、サラリーマン世代は悲鳴をあげています。厚生労働省『2024年 国民生活基礎調査の概況』などとともにみていきます。
手取り19万円・30歳会社員「税金や社会保険料で…」
「30歳で手取り19万円」と聞くと、「少ないな」と感じられるでしょうか。しかしこれは決して珍しいケースではなくなっています。
厚生労働省『2024年 国民生活基礎調査の概況』によれば、全世帯の平均所得は545万7,000円です。しかし、中央値は423万円。また同調査より所得分布を見ると、所得300万円未満の世帯が全体の約34.3%を占めており、決して少数派ではない事実が見てとれます。
所得の分布には大きなばらつきがあり、手取りが少ない状況は生活や将来設計に大きな影響を及ぼしています。
30歳の誕生日を迎えたばかりの田中さん(仮名)の、毎月の手取りは19万円。大きな不満を抱えていると語ります。
長年努力してきましたが収入は期待するほど増えず、将来への不安が募るばかりです。「もう30歳なのに、手取りが20万円に満たないなんて…」と嘆く、田中さんのような会社員は今や少なくありません。
田中さんの給与明細を見ると、基本給は25万円。しかし、社会保険料や所得税、市民税などが差し引かれると、手取りは19万円程度になります。この手取り19万円で家賃、光熱費、食費、交通費、通信費などを賄うと、ほとんど余裕はありません。彼は「税金や社会保険料が高すぎる」と感じています。「これ以上社会保険料が増えるのは勘弁してほしい」と彼は切実に語ります。
日用品や食料品の価格は過去数年間で着実に上昇しており、消費者物価指数(CPI)にもその影響が現れています。しかし、給与の上昇が物価に追いついていないため、実質的な可処分所得が減少しているのが現状です。
田中さんの最大の悩みは、将来のことです。結婚を考えているものの、現在の収入では家庭を持つ自信がありません。子どもを育てるとなると、当然ながらさらに多くの費用がかかることになります。「このままでは、結婚や子どもを持つ夢は実現できないかもしれない」とため息をつきます。
全世帯の51.3%「生活が苦しい」
田中さんの働く企業では、給与改定の機会は年に一度あるものの、上昇率は微々たるものだと言います。「仕事量は増えているのに給与は据え置き」であることへの不満も膨らみますが、人事部門への訴えも効果がなく、昇進の見込みも薄い状況です。田中さんは、キャリアアップのために資格取得やスキルアップを目指していますが、そのためには結局、時間とお金が必要になります。
厚生労働省『2024年 国民生活基礎調査の概況』によると、生活意識について、51.3%の世帯が「苦しい」(「大変苦しい」または「やや苦しい」)と回答しています。これでは結婚や子どもを持つことに対する心理的障壁が高くなるというものです。
政府や企業には、若年層の経済的負担を軽減し、給与の適正な見直しや社会保険料率の見直しを講じることが求められます。また、労働環境の改善やキャリアアップの機会を提供することも重要です。
若年層が安心して将来を描ける社会はのぞめるのでしょうか。政策や支援に注目が集まります。

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