
セバスチャン・スタンが主演し、A24が製作を務めた映画「顔を捨てた男」は、顔を変え別人として生きる男エドワードが主人公の物語。彼の前に現れる"かつての自分にそっくりな男"オズワルドの存在が、本作を"唯一無二の作品"へと導いている。本記事では、重要なキャラクターのオズワルドに扮した注目の俳優アダム・ピアソンにフォーカスする。
顔に極端な変形を持つ、俳優志望のエドワード(スタン)。自分の気持ちを閉じ込めて生きる彼は、ある日、外見を劇的に変える過激な治療を受け、念願の新しい顔を手に入れる。別人として順風満帆な人生を歩み出した矢先、目の前に現れたのは、かつての自分の「顔」にそっくりな男オズワルドだった。その出会いによって、彼の運命は想像もつかない方向へと逆転していく。
オズワルドを演じたピアソンは、「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」でスカーレット・ヨハンソンと共演し、華々しく映画デビューを飾ったイギリス出身の俳優。今後は"エレファント・マン"として知られた実在の人物、ジョゼフ・メリックを題材とした新たな映画にも主演予定となっている。
「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」を観たアーロン・シンバーグ監督は、ピアソンを前作「Chained for Life(原題)」(2018)で主演に抜擢した。
「Chained for Life(原題)」ではシャイな役を演じていたが、実際のピアソンは社交的で明るく、神経線維腫症の当事者として障がい者の権利向上に取り組み、BBC制作のドキュメンタリー番組にも多数出演。司会も務めるほか、TEDxを含む講演活動も行う、カリスマ的な魅力にあふれる人物だ。まさに「顔を捨てた男」のオズワルド役を地で行くようなピアソン。シンバーグ監督も「彼なしでこの映画は存在しなかった。アダムがOKをくれなかったら『顔を捨てた男』を作ることはなかった」とその存在に大きなインスピレーションを受けたようだ。
「この映画はアイデンティティについての物語だから、観客の視点によって得られるものは人それぞれ。他者に対する見方や接し方が本作の影響で変わってくれれば」と本作について語っているピアソン。本作の出演で第59回全米批評家協会賞、第34回ゴッサム・フィルム・アワードほか多数の映画賞で助演男優賞にノミネートされるなど高い評価を受けている。
新たな本編映像と場面写真も披露されている。映像は、とあるカラオケバーで、オズワルドが歌唱するシーンをとらえたもの。エドワードは、今まで他人の視線を気にして消極的に生きてきたが、かつての自分にそっくりなオズワルドは他人から注目を集めることをいとわず、堂々としている。
いつも自信にあふれ、自然と周りに愛されているオズワルドの歌唱に、その場に居合わせた観客も引き込まれているようだ。しかし、店内でひとり、エドワードだけはこの状況を、嫉妬心だけではない複雑な表情を浮かべて見ている(歌っている曲は、映画「カー・ウォッシュ」(76)のサントラからローズ・ロイスによる「I Wanna Get Next to You」)。
「顔を捨てた男」は、7月11日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。

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