
公正取引委員会によるフリーランス・事業者間取引適正化等法(以下、フリーランス法)違反での勧告が相次いでいる。6月17日には、小学館と光文社に対し、フリーランス・事業者間取引適正化等法(以下、フリーランス法)違反で勧告を出した。読売新聞などが報じた。2024年11月に施行された同法での勧告は初めて。
光文社では、法定の支払期日から約90日も遅れて報酬が支払われたケースがあったという。また、小学館では191人、光文社では31人のフリーランスとの取引で、報酬の支払期日を明示していなかった。
6月25日には、島村楽器にも同様の勧告が出された。同社は約97人の個人講師への支払いが2カ月以上遅れたり、11人に計19回の体験レッスンを無償で行わせたりしていた。
昨年11月に施行されたフリーランス法により、発注者はどんな注意が必要だったのか。改めて整理してみたい。
●口頭での仕事依頼は違法! 書面での明示が義務化フリーランス法第3条は、発注事業者がフリーランスに業務委託をする際、以下の事項を書面等で明示する義務があると定めている。
1. 委託する業務の内容
2. 報酬の額
3. 支払期日
4. その他公正取引委員会規則で定める事項
つまり、従来の「口頭での仕事依頼」という商慣習は、現在では違法となる。
●報酬は「60日以内」に支払わなければならない同法第4条では、報酬の支払期日について、成果物を受け取る日から「60日以内のできる限り短い期間内」に支払期日を設定することが義務付けられている。
期日を設定しない場合は、成果物を受け取った日が自動的に支払期日となる。
●フリーランスが「催促しても改善されなかった」実態報道によると、小学館と光文社の事例では、取引条件の明示や報酬の支払いを催促したフリーランスもいたが、改善されなかったという。
公取委の発表によると、小学館は2024年12月1日から31日までの間、フリーランス191人に業務委託をした際に、報酬の支払期日を明示せず、法定の期日までに報酬を支払わなかった。
光文社は2024年11月1日から2025年2月27日までの間に、31人のフリーランスとの取引で同様の違反があった。
島村楽器は、2024年11月1日から令和7年2月6日までの間に、97人のフリーランスとの取引で報酬の支払期日などの事項を書面などで明示しなかったほか、1人の個人講師への支払いを60日を超える期日に定めた。また、2024年11月1日から2025年2月6日までの間、フリーランス11人に計19回の体験レッスンを無償で行わせた。
●3社とも謝罪、再発防止策を発表小学館は6月17日、同社HPで「深くお詫び申し上げます」と謝罪し、社内に特別対策委員会を設置するなどの対策を講じるとした。
光文社も同日、同社HP上で「多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪し、法令順守を徹底するとした。
島村楽器は6月25日、同社HP上で「ご迷惑とご不快な思いをおかけしましたことを、心より深くお詫び申し上げます」と謝罪し、法令遵守の徹底に取り組むとした。
●フリーランスが身を守るために知っておくべきこと内閣官房の2020年調査によれば、日本国内には推計462万人のフリーランスが存在する。調査によっては1000万人以上という推計もある。
フリーランスとして働く人は、以下の点に注意が必要だ。
(1)仕事の依頼は必ず書面かメールで受ける
(2)報酬額と支払期日が明記されているか確認する
(3)1カ月以上の業務委託の場合は、買いたたきや不当なやり直しなど7つの禁止行為からも保護される
今回の勧告は、大手企業でさえ法令順守が徹底されていない実態を浮き彫りにした。出版業界や音楽業界に限らず、IT、デザイン、コンサルティングなど、あらゆる業界で同様の問題が起きる可能性がある。

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