広島弁護士会は6月27日、東京拘置所で同日執行された死刑について「極めて遺憾」として抗議する声明を発表した。今回の執行は2022年7月以来約3年ぶりで、石破内閣発足後初めてとなる。

執行されたのは、神奈川県座間市で2017年に男女9人を殺害したとして、強盗・強制性交殺人などの罪で死刑が確定した白石隆浩死刑囚(34)。SNSで自殺願望のある男女を誘い出し、殺害した事件で、社会に大きな衝撃を与えた。同死刑囚は2021年1月に死刑が確定していた。

●「誤判・冤罪の可能性が常に存在する」と指摘

広島弁護士会は声明で、「生命権は最も重要な人権」であり、「死刑は、この生命を剥奪する刑罰であるから、重大かつ究極的な人権制限」と位置付けた。

その上で「人が作り、人が運用する制度であって、誤判・冤罪の可能性が常に存在する」と指摘。袴田事件など無罪判決が確定した過去の冤罪事件に触れて、「冤罪による死刑執行という死刑制度がはらむ重大な問題が現実のものとして浮き彫りになっている」と警鐘を鳴らした。

●「取り返しのつかない過ちをさらに重ねる危険」と警告

山梨県弁護士会は「現在の死刑及びこれに関わる刑事裁判制度には、看過ごすことのできない多数の問題が存在する」とし、「そのような中で死刑を執行することは、取り返しのつかない過ちをさらに重ねる危険が存在する」と警告した。

同会は2025年2月に死刑制度の速やかな廃止を求める総会決議を採択している。

また同会は、複数の有識者による「日本の死刑制度について考える懇話会」が2024年11月に公表した報告書に言及。報告書では「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のまま存続させてはならない」との認識が示されているとした。

両弁護士会とも今回の死刑執行に強く抗議し、日本政府に対して死刑制度の廃止と執行停止を求めている。

「極めて遺憾」広島・山梨県弁護士会、座間9人殺害事件の死刑執行に強く抗議