日本HPから発表された新製品で気になった『HP OmniBook X Flip 14-fm』について、本記事では実践レビューとともに紹介してゆく。

 なお、HPはENVYというシリーズのノートPCも展開していたが、今回のOmniBook XはENVYシリーズの後継となる。360度フリップやタッチパネルなど、売れ筋だったENVYの性格もしっかりと継承している。2024年5月以降に発売された個人向けノートPCのブランドは、これからはOmniに統一されることとなる。

 今回レビューするモデルはCPUにIntel Core Ultra 7 258Vを採用し、メモリを32GB搭載した高パフォーマンスモデル。すでに発売中で、公式オンラインストアでの定価は27万2800円となる。

満足度の高いアルミボディ

HP

 内容物はノートPC本体のほか、65Wの充電器およびケーブル、スタイラスペンとしてつかえる『HP MPPアクティブペン(シルバー)』となる。本体カラーはミッドナイトブルー。

HP

 14インチのOLEDディスプレイは、とっても色鮮やか。解像度は2.8K(2880×1800ドット)で、明暗のコントラストが心地良い。ディスプレイはタッチにも対応しており、高品質かつ操作性の良いディスプレイ体験が本機の持ち味だ。

HP

 外装は高強度リサイクルアルミニウムを使用しており、さらりとした質感。エッジ部分がわずかにラウンドしており、タイピングの際などは手首にめり込む感じもない。天板のロゴは鏡面加工で、重量は約1.39kg。

HP

 インターフェースは、左側面にUSB-CやUSB-A、HDMIなどがまとまっている(右側面にはUSB-Aとヘッドホン端子がある)。本機への充電はUSB-C端子から行えるため、専用の充電器を持ち歩かずとも市販のコンパクトな充電器でOK。

くるっと回せばタブレットに大変身

 本機はディスプレイが360度回転し、タブレットのように扱うこともできる。ENVYシリーズから受け継いできた特徴だ。

HP

 この大きなヒンジこそ、信頼の証。OmniBookのロゴがここに書かれているのも、なんだかロマンを感じてしまう。

HP

 360度完全にディスプレイを回転させず、ディスプレイをスタンドとして使うテントモードも特徴。キッチンやカフェテーブルなど、テーブルの奥行きが狭い場所でもPCの画面を見ることができる。なお、ディスプレイを回転させると自動でウィンドウも回転してくれる。

HP

 完全に回転させれば、このようにタブレットとして操作が可能。指でタッチしても良し、付属のペンを使っても良し。自動回転は縦向きにも対応しているため、様々なスタイルに素早くフォームチェンジできる。

HP

 付属のペンは本体側面にマグネットでバチっと固定できるのもありがたい。ペンの充電はUSB-Cによる有線となるが、PCとペンをセットで持ち歩くことも簡単だ。

HP

 ペンの描き心地も良好で、イラスト系ソフトをインストールすれば液晶タブレットのようにも使えるだろう。実際、ENVYシリーズはイラストも描ける2-in-1PCとしても隠れた需要があり、絵描きにとっては液タブとPCを兼用できる貴重な選択肢にもなりえる。2.8Kという解像度の高さも、デザイン業務と相性が良いだろう。

Core Ultra 7で処理性能もサクサク

HP

 動画編集ソフトDaVinci Resolve」で、1分程度の4K30p動画を編集してみた。プレビュー再生やエフェクト選択時はカクつく場面も見られたが、それでも4K画質での書き出しは50秒とかからず完了した。カット編集やチェックなど、そこまで重くない動画編集であれば圏内といえそうだ。

HP

 本機はキーボードのデザインが変更されたが、個人的にここはかなりお気に入りの点。DellのXPSシリーズを思わせるフラットなキー形状になっており、三田にも美しい。キーの面積も増大しており、打鍵感も良好だった。

NPUを活用したAI機能をチェック

 本機は高いNPU性能を持つAI PCでもあり、Microsoftが提唱しているCopilot+ PCにも準拠している。NPUはAI機能を動かすための重要なプロセッサーで、CPUやGPUに次ぐ、新たなPCの指標として注目されている。AI PCとはその名の通り、AI機能が快適に動作するPCのことだ。

 として、Windowsが提供する注目のAI機能「リコール」が、Windows Insiderプログラム向けについにリリースされた。「リコール」はシステムが数秒ごとに画面のスナップショットを撮影し、一度でも画面に表示された情報であれば検索対象にできる、というもの。

HP

 本機でも「リコール」が使えるため、早速試してみた。「リコール」を利用するには、設定から「スナップショットの設定」をONにする必要がある。

HP

 スナップショットが許可されると、タスクバー右下に「リコール」のアイコンが表示される。選択するとWIndows Helloの認証後に、今まで記録したスナップショットを振り返ることができる。たとえば上記の画像は「DaVinci Resolve」で動画編集をしていた際の画面だ。テキスト部分はハイライトされており、選択と検索が可能な状態になっている。

HP

 テキストによる検索も可能で、たとえば「動画」という言葉で検索すると、テキストの一致だけでなく視覚的な一致情報も表示してくれる。視覚的な一致とは、「動画」というテキストが含まれているわけではないが、YouTubeや動画ソフトといった動画に関連するであろうスナップショットを提案している、という感じだ。他にも「青い鳥」「契約書を含むメール」といった、自然言語的な検索も可能。

 「リコール」はWindowsが提供するAI機能の目玉でもあり、「リコール」の本実装を以てAI PCの本領発揮と言っても過言ではないだろう。とはいえ実際に使ってみたところ、もっと長時間利用しないと真価がわかりづらいと感じた。「名前を忘れたファイルを探したい」のような、従来では困難だった検索もできる点では大きな可能性を感じる。

 最後に、HPは独自のAIソフト「AI Companion」を提供しているので、こちらも試してみた。一部機能はローカルで動作するなどセキュアな点が強みであり、ChatGPTのような対話型BOTのほか、PDFやWordファイルなどの分析機能も備えている。

HP

 「AI Companion」の分析機能で、トヨタの財務報告書PDFを複数比較させてみた。人力でチェックするには時間がかかる作業や、機密保持の関係上サーバーアップロードしたくないファイルなどは、こうしたローカルで動作するAIソフトが活躍する場面だろう。

美麗ディスプレイを備えた、二刀流AI PC

 本機『HP OmniBook X Flip 14-fm』の持ち味である高品質なディスプレイは、普段使い、タッチでの操作、タブレットモードなどなど、場面を問わず効果を発揮できるのが強みだ。この価格帯と重量で、美麗ディスプレイを求めたいなら、ほぼほぼベストな選択だろう。

 また、AI PCとしての性格を見るために「リコール」や「AI Companion」などの機能も利用してみたが、常にサクサク快適な動作だった。AI PCというとビジネスシーンを連想しがちではあるが、せっかくの便利なAI機能をプライベートで使わないのはもったいない。

 個人向けのAI機能やAIソフトもまだまだ発展途上でもあることを思えば、好奇心の赴くままにAI PCを使い倒すのも一興だろう。「自分に使いこなせるかな?」「AIって難しそう」などと尻込みすることなく、快適なAI体験をHPのノートで味わってみてはどうだろうか。

日本HP『HP OmniBook X Flip 14-fm』