
2025年6月、中国・重慶で開催されたドローンショーが、11,787機のドローンを使った「世界最大の空中イメージ」として、ギネス世界記録に認定された。
これはただの光のショーではない。まさにドローン・テクノロジーの結晶であり、夜空をキャンバスに変えてしまう、未来のアートとも言うべき驚異のプロジェクトだったのだ。
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ギネス世界記録を塗り替えたドローン・ショー
2025年6月17日、中国の重慶市南岸区では11,787機ものマルチローダーとドローンを使った大規模なライトショーを開催し、「マルチローター/ドローンによる最大の空中イメージ」のギネス世界記録を樹立した。
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このドローンショーは、重慶市の市制28周年を記念して行われたもの。会場となった弾子石埠頭には約10万人もの見物客が訪れ、夜空で繰り広げられる魔法のような光景を目の当たりにした。
まずは壮大なショーの様子を見てもらおう。
地元重慶の放送メディアグループと、深センにあるDAMODA([https://www.damoda.com/]深セン大漠大智控技術有限公司[https://en.dmduav.com/])の2社によって開催されたこのイベント。
夜空に描かれたのは、色とりどりの花や高層ビル、地元のマスコットやイルカなど、地元の歴史や文化にインスピレーションを得た意匠の数々だ。
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重慶市は近年、映像産業の招致に力を入れており、現在は150社ほどが進出を果たしているという。
今回の快挙も、ドローン・テクノロジーの拠点として、「ハイテク映像都市」を標榜する重慶市の意気込みを全世界に印象付ける結果となったようだ。
桁違いのドローン数を操る中国企業の技術力
今回のショーを担当したDAMODA社は、広東省の深センに本拠を置く、ドローンショーの草分けとも言える企業である。
自社開発の高性能ドローンを大量に使ったスペクタクルな演出を得意としており、2016年の設立以来、何度もギネス世界記録を破っているほか、2020年にはドバイ万博で中国館のドローンショーを担当。
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世界で初めて独自の「ドローンライトショーに関する安全運用ガイドライン」を制定し、ドローンショーの安全面でのパイオニア的役割も果たすこととなった。
Drones perform Sichuan Opera Face‑Changing 变脸 in Chongqing, this stunning drone light show on June 17, featuring 11,787 drones in dual formation broke the record for most drones simultaneously from a single computer. pic.twitter.com/zZe93YSTkA[https://t.co/zZe93YSTkA]
— China in Pictures (@tongbingxue) June 18, 2025[https://twitter.com/tongbingxue/status/1935188346483171422?ref_src=twsrc%5Etfw]
同社の強みは、大量のドローンを制御する独自のシステムだ。一部のドローンに不具合が起こった場合でも、即座に検知して予備機を投入。
同時に不具合の出た機体を安全に排除する方法も確立し、パフォーマンスに支障が出ないよう配慮している。
ドローンショーというと、2020年の東京オリンピック開会式で行われたものが印象に残っているという人もいるかもしれない。
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東京オリンピックの際に使われたドローンは1,824機と、今回とは一桁違う。また、この時使われたのはIntel社のPremium Droneだった。
そして今回の重慶では、DAMODA社が自社開発したV4という機種が登場した。下は1万機を超えるドローンが、ショーに向けて一斉に飛び立つ様子である。
これだけの数のドローンを飛ばすには、綿密な準備が不可欠だ。DAMODA社ではまずスケッチでイメージを起こし、その後3Dモデリングを経て、空に描きたい絵やアニメーションのシミュレーションを行う。
ここで作ったデータをもとに、ドローン一機ずつの飛行ルートを作成。各ドローンの位置や色、動きなどをミリ秒単位でプログラミングしていく。
そして空間をディスプレイのように使い、一つひとつのドローンを光の点、つまりピクセルとして機能させるのだ。

大量のドローンが衝突もせずに自分の位置を守っているのは、RTK(リアルタイムキネマティック)という測位技術が使われているためだ。
RTKとはGPSよりもさらに正確な自己位置測定方法で、誤差2cm以内という驚きの精度である。
日本でも人口衛星「みちびき」からの信号を受信して、RTKを使った高精度の測位サービスを行う「ichimill(イチミル)[https://ichimill.aeroentry.jp/]」が既に実用化されている。
DAMODA社ではこのRTKを活用することで、大量のドローンの位置を正確に特定し、それぞれの動きを完璧にコントロールしているのだ。
世界各国でドローン・ショーが楽しめるように
さて、今回はドローンによる「最大の航空写真」という記録だったが、実はこういったドローン・ショーに関するギネス世界記録は多岐にわたっている。
例えばドローンによる「ランドマークの最大展示」「乗り物の最大展示」の世界記録は、インドでBotlab Dynamics[https://botlabdynamics.com/]という現地企業などが樹立している。
下がその「ランドマーク」の世界記録で、ドローンが描くお釈迦様。お国柄もあり、宗教行事や結婚式などでドローン・ショーが披露されることが多いみたいだ。
実は2026年5月、ベトナムでも10,500機のドローンによるショーが行われたのだが、この時はトラブルが発生し、ギネス世界記録の認定には至らなかったという。
ちなみに日本では大阪万博の開幕初日の4月13日に行われた、レッドクリフ社による1,749機のドローンを使ったパフォーマンスが、「ドローンによる最大の木の空中ディスプレイ[https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000098.000087924.html]」のギネス世界記録に認定されたそうだ。
ドローン・ショーはまるでSFの世界から飛び出してきたような非現実的な光景で、我々の眼を楽しませてくれるエンターテインメントである。
これからはさまざまなイベントの場で、花火と並んでドローンが夜空を彩るのが当たり前になりそうだ。
技術もどんどん進化していくだろうし、ぜひ圧巻のスペクタクルなショーをこの目で楽しんでみたいものである。
References: Chinese Drone Show Sets Guinness World Record[https://www.instagram.com/p/DIc6uxfSxeW/?img_index=1] / https://curlytales.com/china-sets-guinness-world-record-with-the-largest-aerial-image-created-by-drones/[https://curlytales.com/china-sets-guinness-world-record-with-the-largest-aerial-image-created-by-drones/]
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。

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