
東京23区の新築マンション市場が、ついに全区で平均平米単価100万円を突破し、かつてない高騰を記録しています。都心部だけでなく周辺区にも波及する価格上昇は、住宅購入者の選別を一層鮮明にし、「買える人」と「買えない人」の格差を拡大させています。再開発や建設コスト増など複合的な要因が絡み合い、今後も住宅市場の階層化と固定化が進む見通しです。
東京23区全域で平均平米単価100万円超に
株式会社LIFULLが東京23区の新築マンションに関して独自調査を行ったところ、全区で平均平米単価が100万円を超え、2025年に入り、東京都内の新築マンション市場で価格上昇が一段と加速していることが明らかになりました。
都心部を中心に続いていた局地的な価格高騰は、ついに周辺区にも波及。23区全体に広がった格好です。平均平米単価は全体で207.4万円となり、前期(2024年)比で20%以上の上昇率を記録。背景には再開発による供給の高価格化、人手不足・資材高騰といった建設コストの上昇、さらには住宅ローン金利の上昇といった複合的要因があると考えられます。
価格上昇の筆頭は葛飾区で、前年比55.3%増という急伸を見せました。元々23区で唯一、平米単価が100万円を下回っていた同区でも139.5万円に。港区は平米単価が400万円を超え、圧倒的な高価格帯に位置づけられていますが、注目すべきはその差が開く一方である点です。2023年には最高額と最低額の差は180万円程度でしたが、2025年は300万円を突破。都心と周縁の価格差はむしろ拡大しています。
また、平均専有面積は66.67m2とやや広がり、中央区(82.87m2)や港区(81.83m2)など高価格帯の区では面積も広い傾向にあります。反対に、墨田区や葛飾区では平均面積が50m2前後とコンパクト化が進んでおり、価格の高さが狭小化を通じて一部で吸収されている実態もうかがえます。
【東京23区「新築マンション 平均平米価格」上位3/下位3】
1位「港区」424.3万円/3億5,080万円
2位「渋谷区」350.8万円/2億4,507万円
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22位「墨田区」112.4万円/5,060万円
23位「江戸川区」109.4万円/8,034万円
※数値左より、平均平米単価/平均価格
再開発が引き起こす価格帯の分裂と固定化
2023年から2025年にかけての変化を価格帯の分布から見ると、階層構造の変化が明確です。2023年時点では、「上位(1平米あたり200万~250万円)」・「中堅(1平米あたり150万~200万円)」・「標準価格帯(1平米あたり100万~150万円)」で大半の区が収まっていましたが、2025年には1平米あたり400万円超えの「最上位」や、1平米あたり300万円~400万円といった「高価格帯」という新たな層が加わり、5階層へと細分化されました。
これは価格上昇によって単なる一律のインフレではなく、エリアごとの階層固定が進んでいることを示しています。特に港区は他の区と一線を画す存在となり、文字通り「別格」の価格帯に属しています。一方で、かつて標準価格帯にいた中野区や目黒区といったエリアは、複数の億ション供給により高価格帯へと押し上げられました。こうしたエリアは、山手線内や都心へのアクセスの良さを背景に評価が高まっています。
興味深いのは、この2年間で都内の価格帯において上下移動が起きたのは主に中堅〜上位層である点です。標準層以下の価格帯はほぼ消滅し、価格の下限が切り上がっているともいえる動きをしています。これは、年収層による住宅購入可能性に大きな影響を与え、もはや「都内に家を買う」こと自体が一部の富裕層に限られる状況になりつつあるといえるのです。
この背景には複数の要因があります。都心部では国家戦略特区を含む再開発が相次ぎ、再整備エリアでは建物の性能や環境基準も引き上げられました。結果として、旧来型の中価格帯物件の供給余地が減り、平均価格そのものが引き上げられる傾向にあるのです。これが中堅区の価格をも押し上げ、結果として価格帯の固定化・格差の拡大を生んでいます。
一方、買い手側の動きも二極化しています。金利上昇を前に「今が最後のチャンス」と購入を急ぐ層と、「この価格では手が出ない」と賃貸に留まる層の分断が進行中。特に初回購入層にとって、100万円を超える平米単価は重く、頭金やローン審査の面でもハードルが高まっています。これにより、都内での居住希望を持ちながらも、近郊県への移住や、中古市場への流入が加速する可能性もあるでしょう。
今後も東京23区では再開発プロジェクトが複数控えており、供給のハイエンド化がさらに進むと予想されます。価格帯の階層化と固定化の行方は、住宅市場だけでなく、都市における人口構造や居住環境のあり方にも大きな影響を与えるでしょう。住宅を「買える人」と「買えない人」の線引きが、かつてないほど明瞭になっています。
[参考資料]
株式会社LIFULL『LIFULL HOME'S が東京23区の2025年新築マンションの平均価格を調査』

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