洋画やアメコミのグッズを多数取り扱うことで、映画ファンにお馴染みのキャラクターショップ「豆魚雷」のスタッフであるサムゲタン市川が、ホラーキャラクター&グッズへのアツい愛を叫ぶ連載「遊星からの物欲X」。第12回はスティーブン・スピルバーグ監督の名作『ジョーズ』(75)をフィーチャー。1975年6月20日の北米公開から50周年を迎えたいま、映画史上のアイコンとなったホホジロザメ“ブルース”の魅力を再検証する!

【写真を見る】あなたのお宅も血の海に!50周年の『ジョーズ』アイテムが続々と襲来

■夏だ、海だ、“ブルース”のお出ましだ!

どうも皆さんこんばんは、サムゲタン市川です。梅雨が終わり、いよいよ猛暑酷暑の夏が到来。暑い日のレジャーといえば、もちろん海!なのですが、私なんぞが思い浮かべる“海”の姿は、キャッキャウフフと泳いでいたら突然サメが脚をガブッ…な~んて楽し気な風景です。実際、海水浴場にはそんなイメージを持っている人も結構多いんじゃないでしょうか。そう、このイメージを世界共通認識にしてしまったのが、ほかならぬサメ映画の金字塔『ジョーズ』なのです!

ということで今回は、『ジョーズ』の公開50周年を記念して、アメリカ東海岸のアミティ島を地獄に変えた巨大サメ、通称“ブルース”について語っていきましょう。

■逃げ場のない海洋で、サメの猛攻が恐怖を産む!

ジョーズ』に登場するのは、約25フィート(7.6m)の超巨大なホホジロザメ。諸説あるものの、これまでに観測された世界最大のホホジロザメは約20フィート(6.1m)と言われているので、まさに怪物級の大きさ!主人公マーティン・ブロディを演じたロイ・シャイダーの有名なアドリブ台詞「この船じゃ小さすぎる」の通り、小型船舶と並んでも引けを取らない巨躯の持ち主です。

もちろんパワーも尋常ではなく、ブロディたちがブルースの浮上を狙って高い浮力を持つ樽を括り付けた銛を3本撃ち込むも、樽ごと水中に引きずり込んで姿を消すことが出来るほど。繰り出される体当たりは一行を乗せた「オルカ号」をたちまち浸水させる破壊力を誇り、さらにオルカ号の甲板に半身乗り出して襲い掛かり沈めてしまうなど、血に飢えた凶暴性も兼ね備えているのが恐ろしい!銃で撃たれようが銛で突かれようが怯むことなく向かってくる…。逃げ場のない海の上で、これほど怖いことがありますでしょうか。

■サメの登場時間は、たったの4分間!?

ジョーズ』が公開された1975年はCGがまだ開発段階で、映画作品に本格的に使用され始めるのは10年以上あとのことです。『ロスト・バケーション』(16)や『MEG ザ・モンスター』(18)など近年のサメ映画ではCGを用いてサメを生き生きと動かしていますが、ではそれがない時代にどうやってあんなに迫力のあるブルースを表現出来たのかと言うと、生物を模した機械仕掛けの模型、いまで言う“アニマトロニクス”が用いられたんですね。

しかしこれがまぁ~大変。水中で機械模型を操るなんて、当時の技術ではかなりの至難の業。頻繁に故障を起こすため撮影は難航を極め、スケジュールも予算も大幅に超過し、一時はスピルバーグ監督も自身のキャリアは途絶えたと嘆いたといいます。機械も問題以外にも、海の機嫌が悪かったり、関係のない帆船が映り込んだり、撮影済みのフィルムが海水に浸かってしまったり…。さまざまなトラブルに巻き込まれながらもなんとか撮影は完了したものの、機械模型のブルースが登場するカットは約4分間と非常に短いものになったのです。

■サメの姿は見えない。だが、それがいい

ジョーズ』の上映時間は124分ですので、本編の1/31しか出番がないわけですが、劇中のブルースはそうとは信じられないほどの存在感を放っています。

相次ぐ機械の故障に頭を抱えたスピルバーグ監督は当初の撮影予定を変更し、恐怖の対象であるブルースをあえて見せない演出にしたのですが、これが功を奏しました。船や波、樽の動きを巧みに使い、“見えないけれどそこにいる”を実現させることで、ブロディたちと観客の目線を重ねて想像の余地を与え、より緊張感を高めるサスペンス的な効果を発揮したのです。

クライマックスになってようやく姿を現すブルースのなんと大きいことか。予想をはるかに超える巨体と血に飢えた獰猛な姿は、生物学的には本来大人しいホホジロザメに対するイメージをどうしようもなく書き換えてしまいました。浮き樽がスーッと近付くだけで恐怖心を煽られるなんて…。いまなお巨大なホホジロザメが映画界のアイコン的な存在として君臨しているのも、こういった引き算の恐怖演出の賜物でしょう。

ちなみに本作に登場するサメの名前は、そのまま“ジョーズ”なんだと思われがちですが、機械模型はスピルバーグ監督の顧問弁護士に因んでブルースという愛称でスタッフに呼ばれており、いまでは半ば公式名称として、劇中のサメ自体もこの名で親しまれています。

7月11日(金)からは本作の50周年を記念したドキュメンタリー「独占!『ジョーズ』50 周年:スピルバーグが語る伝説の裏側」(25)がDisney+で配信されます。スピルバーグ監督や音楽を担当したジョン・ウィリアムズ、盟友ジョージ・ルーカスジェームズ・キャメロンらをはじめ、スティーヴン・ソダバーグ、キャメロンクロウジョーダン・ピール、ギレルモ・デル・トロら本作を敬愛するクリエイターらも登場するそうで、ファンとしては期待が高まります!

■フィギュア紹介

さて、ここからはフィギュア紹介のお時間。機械模型のブルースはフィギュア化とも相性が抜群で、50周年にあわせて各メーカーからさまざまなアイテムが集まっています!

■SDトイ

SDトイからは、あの超有名なポスターをそのまま立体化したスタチューが登場!約28cmとなかなかの大きさで存在感はばっちり。クリアブルーで表現した海中に、ブルースの口から吹き出す気泡やファーストヴィクティムであるクリッシーの姿もしっかり再現。台座にはタイトルロゴも入っており、自室に置いておきたいインテリアに間違いなしです。

SDトイはなかなかおもしろいメーカーでして、フィギュアやスタチューのみならず、こんなものまでリリースしています。『ジョーズ』のポスタービジュアルを全面にプリントしたエプロンとかわいいブルース型ミトンのセットに…。

閉鎖となったアミティ海岸やサメ狩りの達人であるクイントの家をイメージしたフロアマットなど、映画好きなら心くすぐられる日用雑貨も展開!こういうのって、もし使わなくっても勢い余ってついついお迎えしてしまうことありますよね。

■ネカ

ネカからはこんな懐かしおもちゃが!その昔、映画の公開と大成功に乗じて発売された、アイデアル・トイ社の「The Game of JAWS」。ブルースの口に詰め込まれた操舵輪やカメラ、錨に人間の骨など13個のジャンクパーツを、複数人のプレイヤーがフックを使って順番に取り出していき、口が閉じてしまったらゲームオーバー!という、いわゆるバランスゲームの一つ。リリースが半世紀も前なので画像は用意出来ませんでしたが、調べるとなかなかにシュールなアイテムであることがお分かりになると思います。

そんなレトロなおもちゃに現代的なアップデートを施したのが今回のアイテム!表記は12インチであるものの、何故か全長約15インチ(約38cm)とビッグに仕上がったブルースはめちゃくちゃな高クオリティで復活を遂げ、各ジャンクパーツもより精巧に。パッケージもリスペクトの詰まったそのままにデザインされ、当時のゲーム性を残してくれる珠玉の逸品がここに誕生しました!

■ファクトリーエンターテインメント

さらに「こんなアプローチもあったのか!」と思わず唸ったアイテムがこちら。様々なプロップレプリカを手のひらサイズでリリースするファクトリーエンターテインメントから、まさかのメカニカル ブルースが登場ッ!

撮影チームを大いに困らせたブルースのアニマトロニクスをなんと合金製で再現し、小さいながらも緻密に造形された内部を眺めることが出来ちゃうコレクターズ・アイテム。専用の台座も付属するので、開けてすぐにディスプレイ出来ちゃうのはうれしいポイント。これと併せてメイキングを観れば、気分はブルース博士に!?

■今年の夏は、サメまみれで過ごしたい!

さて、いかがでしたでしょうか。暑いから海に行きたい、けど外には出たくない、なんて方は空調を効かせた涼しい空間で『ジョーズ』を観て、身体も肝も冷やしてみてはどうでしょうか。意外と知られていないことですが、本作には『ジョーズ2』(78)、『ジョーズ3』(83)、『ジョーズ'87 復讐篇』(87)と3本の続編も存在するので、各作品のサメの描かれ方に注目して一気見しちゃうのも一興です。

それでは今回はここまで。また次のフィギュアと共にお会いしましょう!

文/サムゲタン市川(豆魚雷)

『ジョーズ』公開50周年!映画史を変えたサメの魅力を再検証/[c]Everett Collection/AFLO