生成AIの活用が世界的に広がるなか、日本の大企業経営者の多くは、いまだその導入に慎重な姿勢を崩していません。実際、業務や私用で生成AIを使っている経営者は3割強にとどまり、6割超が利用していない現状があります。背景には大きな3つの壁があるようです。以下、その最新の動向を詳しく見ていきましょう。

活用トップは「文書の要約」、多様な業務で利用進む

生成AIサービスなどを手掛けるFIXERが2月に実施した大企業経営者らを対象としたアンケート調査によると、「生成AIを業務または私用で活用している」とした人は3割超だった。活用方法について回答が最も多かったのが「文書の要約」で4割に達した(複数回答)。「情報収集」「アイデア出し」と答えた人は3割超と、利用者が生成AIを単純な文章作成のツールととらえず、多様な活用をしていることがわかる。

FIXERは企業向けクラウドシステムのほか、生成AI「Chat(チャット)GPT」などの安全性を高め、使いやすくしたプラットフォーム「GaiXer(ガイザー)」を提供している。調査はFIXERが全国の従業員300人以上の企業の経営者を対象に1月30日2月1日に実施し、800件の回答を得た。情報・通信のほか、金融・保険、エネルギー、不動産、流通・小売りなどの企業が対象となった。

3人に1人は生成AIを利用と回答も…

アンケートで、「自社で生成AIを活用しているか」と質問したところ、「業務で利用している」との回答が24%だった。「私用では利用しているが、業務では利用していない」が10.1%で、合わせると34.1%だった。生成AIブームのきっかけとなった対話型AI「Chat(チャット)GPT」を米オープンAIが2022年11月に公表されて2年半が過ぎ、日本でも3人に1人の経営者が何らかの形で利用している。

一方で「私用でも業務でも利用していない」は65.9%に達した。生成AIについて「どのように、どの業務に取り入れていいのかわからない」「安全性に不安がある」「知識のある人材がいない」という経営者も少なくない。米国と比べて遅れているとされる日本では生成AIの普及は道半ばといえそうだ。

活用方法「情報収集」「アイデア出し」との回答も多く

「どんな業務で利用しているか」との質問に対して最も多かった回答は「文書の要約」で39.1%に達した(複数回答)。次に多かったのが「情報収集・調査」で34.4%だった。最近は情報収集の際に検索サイトではなく、生成AIで情報を検索する人も少なくない。

「アイデア出し」(31.8%)、「文書のチェック/校正」(27.6%)、企画書の作成(18.8%)の回答も多かった。生成AIの利用者からは「生成AIからは多くの案が出てくるだけでなく、自分では考えつかなかった斬新な案が出てくることも少なくない」との声がある。企業や自治体などの担当者がイベントや企画のアイデアを生成AIに聞き、複数の案を出させて企画を立てるケースも増えている。

このほか、「稟議書の作成」(11.5%)、「企画書の作成」(18.8%)など生成AIの得意分野である文章作成関連の回答も多かった。「メールなど、ビジネスコミュニケーション関連文書の作成」と答えた人も16.1%に達し、身近な実務に生成AIをいかしている事例も目立った。

画像:PIXTA