ロングの「L」に、犯罪傾向が低いことを示す「A」を合わせて「LA(エルエー)」。

これは各地の刑務所に割り当てられた符号の一種で、主に、初めて起こした事件で10年以上の懲役刑を言い渡された受刑者が収容されている。

全国に数カ所しかないLA刑務所の一つが、千葉市にある千葉刑務所だ。弁護士ドットコムニュースは今回、この塀の中で暮らす3人の無期懲役囚に対するインタビュー取材を特別に許可された。

"終わりの見えない刑"に、彼らは、何を感じ、何のために生きているのか──。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●服役から22年の72歳「仮釈放はちょっと厳しいのかな」

男性Cさん(72)

──どんな事件を起こして刑務所に入った?

強盗殺人と死体遺棄です。

──被害者は何人?

それぞれ2人です。

──裁判ではどんな求刑を?

死刑です。

──刑務所に収容されてから何年が経った?

22年です。

──死刑になっていた可能性もあるが、無期懲役になったことを今はどう考えている?

求刑された時点でダメかとは思っていました。ただ自分の場合、相手が暴力団関係者だったもんですから、それでおそらく助かったのかなと思います。

──判決を聞いたときの気持ちは?

ほとんど諦めていたんですが、判決をいただいたとき、ほんとになんといいますかね、助かったのかなという気持ちです。素直に。

──まだ生きられるという喜び?

複雑ですけど、やっぱり喜びのほうが大きいと思います。

──無期懲役刑はどういう刑罰だと思う?

もう72歳になりますが、(服役してから)まだ22年ですから、ちょっと厳しいのかなという気持ちはあります。

──社会に戻ることが約束されていない中でどう過ごしている?

自分は今、身元引受人がいないんですが、事件を起こした当時に妻とすぐに離婚し籍を抜いたんですが、元女房がずっと今でも連絡くれて、子どもたちの様子とかを連絡してくれますので、そういうものも生きがいにという感じでやっています。

──何を目標に生きている?

自分は求刑も死刑だったもんですから、その時点で半分諦めたような状態だったので、今は身元引受人を元妻にお願いすればおそらく引き受けてくれるとは思うんですけど、頼みたくはないですね。

まったく迷惑はかけたくない。むしろ自分のことは忘れてほしいぐらいの気持ちで生活をしています。

──塀の中で人生を終える覚悟がある?

6割方はそうですね。

──残りの4割は出所したい気持ちがある?

やっぱり子どもたちと一緒に過ごせる時間があったらいいのかなと思っています。

──拘禁刑が始まるが、無期受刑者にとってどんな処遇が必要だと思う?

拘禁刑の内容がまだ具体的にわからないので、どういった感じになるのかわかりませんけれども、今は別にございませんね。

●約30年の服役「積み重ねが大事だと自分に言い聞かせている」

男性Bさん(56)

──罪名は?

殺人です。

──被害者は何人?

2人です。

──服役して何年が経つ?

29年。

──どんなモチベーションで約30年を過ごしている?

入所当初は(仮釈放までの期間の)平均が17、18年と聞いていましたし、「なんとか10年頑張ればあとは下り坂になる」ということを先輩方から聞いていましたので、一つの区切りというか、目標として10年という気持ちがまずありました。

そのあたりは雲行きが怪しいというか、いつの間にか(平均が)30年を超えている状態になってまして。

ただ、それでもやっぱり、ここで「もうどうでもいいや」なんて思っちゃうと、自分自身はもうダメになると思っていますので、1日1日の積み重ねが自分にとっても大事ですし、僕のあとから来た人たちはもしかしたらもっと長くなるかもしれないということもありますので、「積み重ねが大事なんだ」ということを自分にも言い聞かせるように過ごしてきました。

──無期懲役の受刑者同士で励まし合うなどしている?

そうですね。僕は今、計算係という立場で、新しく入ってきた人にまず一番最初に接する立場ですので、その人が有期(刑)なのか無期(刑)なのかという確認とかを一応して、仮に有期だからといって自分勝手に過ごしていたら迷惑をかけますし、無期の人にとっては足を引っ張るということにもなりますので、そういうことのないようにということは話していますね。

──事件を起こした理由を現在はどう考えている?

一言で言ったら、本当に自分勝手だったというのがまず一番です。

──30年近く服役したことで変化したことはある?

ちょっと一旦落ち着いて考えるようにはなってきたかなと思います。「もしこういうことを言ったらどうなるのか」「こういうことをしたら相手はどう思うのか」とかは、以前よりは考えるようになりました。

僕の考えだけでいうと、周りの人たちに迷惑をかけてしまったので何か違う形で貢献というか、ちょっとお手伝いできるようなことをまずここで考えて、それを実行できるように、何をどうすればいいのかなということをその都度考えたりしていていますね。

●強盗殺人の無期受刑者「まだ希望はある」

男性60代Aさん

──罪名と被害者の数は?

強盗殺人で、被害者は1人です。

──仮釈放の手続きに乗ったことはある?

ありません。あまり出ることは考えていなかった。出れる気はしなかった。

──これまでの服役生活をどう過ごしてきた?

刑務所には)社会生活にはない規則があるので、入った当初の7〜8年はそれに慣れようとしていました。

集団生活していると、みんな罪名は違いますが、特別な感じはしません。

(服役してから最初の)15年から20年ぐらいは「辛い思いをしているは自分だけじゃない」と思っていましたが、20年を過ぎると同じような境遇の収容者でも出ていく人がいるので、「自分もどうなるのかな」と心配な気持ちになります。

──無期受刑者にとって「仮釈放」とは?

当初は獄死の覚悟をしていました。(服役から)40年ぐらいで出られたら、まだ健康だと思うので、少しは希望があります。

仮釈放を夢見て、獄死を覚悟して…無期懲役囚3人が語った"終わりなき刑"、塀の中の現実