昔はドライバーの正面になかった? クルマのハザードスイッチがインパネ中央に移動したワケ

この記事をまとめると

■ハザードランプ=非常点滅表示灯は手動で操作するものでなければならないと規定される

■現在はインパネ中央の一等地にハザードランプは置かれることが多い

■タッチパネルの利用が増えてもハザードスイッチは物理的に残り続けるだろう

赤字に白い二重三角マークもほぼ世界共通

 故障や事故といったアクシデントでクルマを止めるとき、はたまた路肩などに駐停車するとき、多くのドライバーはハザードランプを点滅させる。灯火の状態でいえば、ウインカー(ターンランプ)の全点滅のように見えるが、これには「非常点滅表示灯」という正式名称がある。

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

 道路運送車両法によれば、非常点滅表示灯の役割は『非常時等に他の交通に警告する』ためであり、装備や機能については保安基準にて厳しく定められている。

 すなわち、現在において『自動車には、非常点滅表示灯を備えなければならない。』となっている。原付など除外されている車両もあるが、四輪乗用車については非常点滅表示灯を備えることは必須なのだ。さらに、道路運送車両法の細目では『非常点滅表示灯は、手動で操作するものでなければならない。』とも記されている。これは物理的にハザードスイッチが必要ということだ。

 なお、急ブレーキに応じて作動する緊急制動表示灯や、衝突事故にあった場合に機能する運転者異常時対応システムによる自動点滅も認められている。その場合も“差し迫った危険を他の交通に対して示す場合”という条件付きだ。

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

 余談めくが、いわゆる「サンキューハザード」についてはマナー的に社会に広まったものであって、法的には認められた行為ではないと理解すべきだろう。自動的にハザードランプがオン/オフするような機能も保安基準を満たさない(車検非対応)という風に理解できる。

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

 というわけで、道路運送車両法によって、非常点滅表示灯(ハザードランプ)をオン/オフするための物理スイッチは、四輪自動車に絶対必要なアイテムとなっている。そのスイッチには三角が二重となったハザードマークをつけることも求められ、現在の国産車に乗り込めばわかるように、ほとんどが赤字に白い二重三角のマークが入ったスイッチとなっている。

今後もハザードスイッチは物理スイッチとして残る

 そんなハザードスイッチは、2000年以前の国産車をみるとステアリングコラムの上に設置されていることが多かった。しかし、いまではインパネ中央のナビ画面やエアコンパネルに近い一等地に置かれていることが多い。ドライバーからの操作性でいえば、ステアリングコラム上でも問題ないと思えるが、なぜインパネ中央に移動することになったのだろうか。

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

 確認しておきたいのは、ハザードスイッチの場所はインパネ中央でなければならない……と決まってはいないことだ。たとえば、テスラはルームミラーの根元あたりにハザードスイッチを置いているが、この場所でも保安基準は満たしている。

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

 物理スイッチを極力廃したインテリアをデザインするテスラでさえ、ハザードスイッチが物理的に残っているというのは、それだけ重要なスイッチであることの証左といえるだろう。

 実際、ハザードスイッチはエンジンが始動していないとき、電動システムが起動していない状態でも機能するようになっている。補機バッテリーさえ生きていれば、どんなときでも点滅するようになっている。同じランプを使うウインカーはシステムオフでは点滅しないことを考えると、ハザードランプが重要な機能として位置付けられていることが理解できるだろう。

 さて、国産車の多くでインパネ中央に赤地に白い二重三角のハザードスイッチが置かれるようになった理由については諸説あるが、重要なのは暗い状況でスイッチを認識できるようするためだろう。夜間やトンネル内など暗い状態でもすぐにハザードスイッチの場所を認識するためには照明付きのスイッチにすることが理想的だ。

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

 仮に、ステアリングコラム上に照明付きスイッチを配置するとドライバーの視界に入りすぎるし、メーター情報やワーニングランプの視認性に悪影響が考えられる。そうであれば、ナビ・オーディオやエアコン操作パネルの近くに照明付きハザードスイッチを置くというのは、運転を邪魔せず、スイッチの視認性を上げるという意味でベストポジションといえる。

 もうひとつの指摘として、助手席からの操作性を確保するため、という意見もある。ドライバーが意識喪失したときに、助手席からハザードスイッチを操作できるようにすることは、非常事態を周囲に伝えるという本来の機能を満たすものであり、合理的だ。

 今後、自動車のユーザーインターフェースは音声やジェスチャーによるものが増えてくると考えられている。また、これからの主流となるSDV(ソフトウェア定義車両)が機能追加するためには、タッチパネルを利用することが前提となっている。

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

 しかし、それでもハザードスイッチは物理的に残り続けるだろう。万が一、システムが落ちたとしても、乗員が周囲に危険を知らせるために必要な機能といえるからだ。自動運転時代には後席にしか乗員がいない可能性を考えると、天井中央などハザードスイッチのベストポジションを再考する必要があるかもしれない。

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

ハザードスイッチが一等地に鎮座するようになったワケ

昔はドライバーの正面になかった? クルマのハザードスイッチがインパネ中央に移動したワケ