
投資にはさまざまな手法があります。たとえば、社会構造の変化や産業の再編、テクノロジーの進歩などが生み出すメタ(高次)のトレンド(流れ)をいち早くとらえて、流れに乗るであろう企業株を選び、長期的な成長を狙う投資法があります。日々の株価に一喜一憂する必要がないというメリットがある一方、初心者にはハードルが高いかもしれません。個人で個別の株をもつことに消極的な人には、プロに任せる投資信託という選択肢があります。無論、投資信託にも落とし穴(デメリット)は存在します。注意すべき点とは?本記事では、プロ投資家の島聡氏による著書『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)から一部抜粋・再編集し詳しく解説します。
ローリスク・ローリターンのインデックスファンドやETF
「銀行預金のリスクはわかったが、メタトレンド投資や推し投資のように自分で積極的に銘柄を選ぶのはハードルが高い」「個別株投資はめんどくさそうだし、やはりそのリスクも心配だ」そんなふうに感じる方も決して少なくないでしょう。たしかに個別の企業選びの難しさやひとつひとつの企業を分析する手間、そして個別株投資に伴うリスクを考えると、二の足を踏んでしまうのも無理はありません。
そんな人にもおすすめなのが「投資信託」です。投資信託は、多くの投資家からお金を集めて、ファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロが、そのお金をまとめて株式や債券など複数の資産に投資、運用する金融商品です。投資信託のなかでもおすすめなのはインデックスファンドやETF(上場投資信託)への投資です。
インデックスファンドとは、S&P500や日経平均株価など特定の指数(インデックス)と同じ値動きを目指す運用方法(インデックス運用)を採用している投資信託のことです。一方のETFは、投資信託の一種ですが、証券取引所に上場されており、株式のようにリアルタイムで取引することができます。
インデックスファンドやETFへの投資は、個別株投資のように短期間で株価が数倍、数十倍に化けるような、爆発的なリターンは期待できません。
しかし、それは裏を返せば、大きな損失を被こうむるリスクもそれだけ小さいということです。世界経済の中長期的な成長の恩恵を着実に享受できる可能性が高い、堅実な投資手法とも言えます。
さらに何と言っても、投資の手間がほとんど不要であるという点は、忙しい現代人にとって非常に大きなメリットです。インデックスファンドやETFは、市場全体や特定の指数に連動するように、自動的に幅広い銘柄に分散投資されます。そのため、個別銘柄をひとつひとつ分析して選ぶといった膨大な時間と労力を費やす必要はありません。
また、メタトレンド投資と同様に、10年、20年、あるいはそれ以上の長いスパンでじっくりと時間をかけて資産を育てていく、長期投資を前提とした投資手法です。そのため、投資をスタートしたあとは基本的に放置していて問題ありません。短期的な景気の変動や、個別企業の業績、株価の乱高下に一喜一憂し、精神的に疲弊することもないでしょう。
「投資先の企業が経営破綻して、自分の投資したお金がゼロになってしまったらどうしよう」といった、個別株投資につきまとう不安や心配とも無縁です。
インデックスファンドやETFは、多数の企業に分散投資されています。仮にひとつの企業が倒産したとしても、その影響は限定的であり、資産全体がゼロになるリスクは極めて低いのです。私はメタトレンド投資や推し投資といった、個別銘柄への積極的な投資を行っています。しかしETFにも一部資金を振り向けています。
Microsoft時代に、アメリカの企業型確定拠出年金制度「401K」(日本の企業型DCやiDeCoに相当)を通じて投資してきました。具体的には「バンガードS&P500ETF」「バンガードラッセル1000グロース株ETF」などに長期にわたって投資しています。
インデックスファンドやETFに投資する際にも個別株投資同様、ドルコスト平均法による積立投資を行いましょう。高値つかみを防ぐ目的です。そしてiDeCoやNISAなど税制優遇が受けられる枠を活用すれば、効率良く長期投資ができます。
はっきり言って、推し投資やメタトレンド投資に比べると「夢」や「おもしろさ」はありません。しかし、株式投資へのハードルを大きく下げ、長期的な資産形成を手堅く行う手段として、インデックスファンドやETFは非常に優秀です。「投資はやりたいけど個別銘柄選びに時間をかけたくない」という方にとって、インデックスファンドやETFはちょうどいい落としどころだと思います。
プロにまかせて安定的な利益を狙える「投資信託」の落とし穴とは
個別株投資に消極的な人にとってインデックスファンドやETFは優秀な金融商品です。ただし、注意すべきなのが「信託報酬(手数料)」です。
もし銀行や郵便局、証券会社の窓口で投資信託について相談しようものなら、容赦なく販売手数料や信託報酬の高い商品を売りつけられます。当たり前ですが、手数料が高ければ高いほど、最終的に手元に残る利益は確実に減ってしまいます。どんなにインデックスファンドやETFのパフォーマンスが好調であっても、高い手数料を支払い続けていれば大きな損失につながりかねません。
特にインデックスファンドやETFは、一度購入したら基本的に長期間保有し続けることが前提の金融商品です。そのため、わずかな手数料の差でも長期間積み重なり、「塵も積もれば山となる」のです。
インデックス投資やETF投資は、基本的に投資をはじめたら放置しておいて問題ありません。だからこそ、投資をはじめる最初の「商品選び」でできるだけ手数料が低く、コストパフォーマンスに優れる商品を選ぶことに徹底的にこだわるべきです。
ちなみに、私も運用している「バンガードS&P500ETF」は信託報酬が年率0.03%と驚異的な低コストです。インデックス投資やETF投資のメリットは「資金を預けて寝かせておくだけで、コストを最小限に抑えつつ、それなりに市場の成長の恩恵を受け取れること」です。そのメリットを最大限受けるには「バンガードS&P500ETF」くらい少ない信託報酬の商品を選ぶべきでしょう。
販売手数料や信託報酬といった手数料を抑えるには、基本的には「人」を介さない取引が有効です。つまり、ネット証券を利用することです。
銀行や郵便局、証券会社の窓口は、人件費や店舗維持費などのコストがかかるため、どうしても手数料が高くなりがちです。一方、ネット証券であれば、それらのコストを大幅に削減できるため、結果としてコスパに優れた魅力的な商品を提供できるのです。
銀行や証券会社がすすめる「アクティブファンド」は買ってはいけない
銀行や郵便局、証券会社の窓口で投資信託について相談すると「アクティブファンド」を勧められることがあります。しかし手を出してはいけません。アクティブファンドは往々にして高い手数料が設定されており、あなたの資産を静かに、しかし確実に蝕んでいくからです。
アクティブファンドとは、S&P500や日経平均株価などの特定の指数を上回る投資成果を目指して運用される投資信託のことです。ファンドマネージャーと呼ばれる運用の専門家が、独自の判断で銘柄選定や売買を行います。しかし、過去の運用実績を見てみると、インデックスファンドのほうが圧勝しているのです。
アクティブファンドがインデックスファンドを上回るリターンを、毎年安定して継続的に叩き出し続けるケースは稀です。特に、5年、10年、20年といった長期で見れば見るほど、平均的にはアクティブファンドがインデックスファンドに負けてしまう傾向が数多くの調査研究によって報告されています。
アクティブファンドがインデックスファンドに負けてしまう理由は、その高い手数料にあります。アクティブファンドの運用会社は、高度な専門知識と経験を持つ高給取りのファンドマネージャーを雇い、さらに顧客を獲得するためのマーケティング活動も展開する必要があります。
それらの莫大なコストを、アクティブファンドに投資する投資家たちが高い手数料という形で負担しているわけです。手数料を除いたパフォーマンスは、平均すればインデックスファンドと同じくらいですが、手数料のぶんだけパフォーマンスが悪くなる。そのようなアクティブファンドを積極的に選ぶメリットは、残念ながら何ひとつ見当たりません。
中島 聡
エンジニア・起業家・投資家

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