2020年2月、日本で初めて新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」。その最前線で闘った人々を描いた『フロントライン』(公開中)の大ヒットを記念した舞台挨拶が、6月28日に大阪、6月29日に横浜でそれぞれ開催された。

【写真を見る】「GTO」以来の共演となった小栗&窪塚。2人の絆に観客は拍手喝采!

6月13日に公開された本作は、初日から3日間で観客動員25万人、興行収入3億4699万円と、2025年に公開された実写邦画作品としては第3位のオープニング成績を記録。SNSの口コミで反響が広がり、週末動員ランキングのトップテンに3週連続でランクインを果たし、公開から17日間で累計動員80万人、累計興収11億円を突破。最終興収20億円も視野に入るヒットを続けている。

小栗旬&窪塚洋介が、SNSで募集した質問に回答!

そうしたなか、6月28日大阪ステーションシティシネマで行われた上映後の舞台挨拶に、主演を務めたDMATの結城英晴役の小栗旬と、医師の仙道行義役の窪塚洋介、そして本作の脚本とプロデュースを担当した増本淳の3名が登壇。

大きな拍手に包まれて登壇した小栗は、「『この作品に勇気をもらった』という声をいろんなところでいただいています。“結城”だからかな?(笑)」と自身の役名にかけたコメントで会場を和ませる。また窪塚は「この映画のすごいところは、観ている間に自分も登場人物の一人だと気づける、新しい映画体験ができるところ。自分自身もこんなふうに映画を観たことはなかった」と語り、改めて共演者やスタッフ、観客に感謝の言葉を述べた。

舞台挨拶は事前にSNSで募集した質問に登壇者たちが答えていくQ&Aを中心に進行。「キャストの演技で思わず心が震えたところは?」との質問に対して小栗は、「池松壮亮演じるDMAT隊員の真田がコーヒーを一気飲みするシーン」と回答し、そのシーンの直前に真田と対峙する医師の宮田を演じた滝藤賢一の演技も絶賛。窪塚もそれに呼応するように「キャストだけじゃなく、エキストラの方々を含めてみんなが本当によかった」と感嘆の言葉をあげた。

また、本作で「GTO」以来の共演を果たした小栗と窪塚に「次に共演するなら、お互いどんな役を演じてみたいか?」との質問が。小栗は「これはありきたりな話ではなく、DMATの話ってほかでもできると思ったんです。また結城をやりたいです!」と答え、増本プロデューサーも「本当ですか!?」と驚きと喜びが入り混じった表情を浮かべる。

それを受けて窪塚が「結城のモデルになった阿南先生と、仙道のモデルになった近藤先生は、いまも能登地震の現場で活動されている。いまこの瞬間にも劇中で描かれたことと同じ想いで医療に従事しているDMATの方々がいることを日々感じています」と、現実の医療現場に思いを馳せるひと幕も見受けられた。

さらに将来、医療従事者になるために勉強をしているという方からの「相手や自分を大切にするうえで、大事にしていることや心掛けていることは?」という質問には、「この作品は“人道的であるか”ということが大きなテーマになっている」と語る小栗。「人としてどうあるべきかを自分も考えながら生きられる人になりたいと思っています。相手へのリスペクトがあれば、関係性も自然とよくなってくると思います」と真摯な言葉を送った。

そしてイベント終盤「また(本作を)観たくなっちゃいました」と呟いた窪塚は、「コロナ禍で失った時間や大切な人、出来事があると思いますが、この映画を観ることで『前に進もう』『頑張ろう』という気持ちに変えてくれると思います」と観客に呼びかける。小栗が「この『フロントライン』で窪塚洋介と仕事ができて、本当にうれしかった」と言葉をかけると、窪塚も「俺もだよ!」と笑顔。2人の絆に会場からは温かな拍手が巻き起こっていた。

小栗旬が明かす、本作の前後で変わったこととは?

6月29日には、小栗と増本プロデューサーの2人が、映画の舞台となった豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号が寄港した地でもある横浜の横浜ブルク13での舞台挨拶に登壇。小栗はそこで、前日の大阪での舞台挨拶の後に沖縄を訪れたことを明かし会場を驚かせた。

沖縄で小栗は、劇中で森七菜が演じた羽鳥寛子のモデルとなった元ダイヤモンド・プリンセス号フロントデスク・クルーの和田祥子さんと合流し、沖縄に停泊中のダイヤモンド・プリンセス号を実際に見に行ったという。「本当に大きかった!」と感動した様子で語ると、「和田さんは現在はクルーとして働いてはいませんが、船内でDMATの方とご一緒するなかでDMATメンバーから『医療が向いていると思う』と言われたことをきっかけに、いまは鍼灸師の勉強をしているそうです」というエピソードを明かした。

また小栗は、「医療従事者の方から『あの時の自分たちを肯定してもらった』とお手紙をいただいたんです。自分たちもそう言ってもらえたことで、改めてこの映画を作ってよかったと思えました」と感慨深げに語り、増本プロデューサーは「『こんなに苦労していた人がいたことを知って反省した』という声をいただいた」と、意外な反響があったことを明かす。そして「僕は反省の気持ちよりも、『みんながみんなを温かい目で見られるようになったら、もう少しいい世の中になるんじゃないか』という想いを込めて作りました。そういうふうに届いてほしいです」と観客にメッセージを送った。

そうしたなか、前日の大阪での舞台挨拶に引き続き横浜でもQ&Aが実施。「今後、コロナを知らない世代がこの映画を観ることも増えてくると思いますが、そのような人たちにどんなことを感じてほしいですか?」という質問に、「どう思うんでしょうね…」と言葉を詰まらせる小栗。増本プロデューサーは「もしまた災害が起こった時の人と人との関わり方や、優しさやリスペクトはいつの時代になっても同じだと思うので、そういうところはこれからの観る方の材料になるかもしれないです」と語る。

続いて「この作品と出会う前と後で、感じ方が変わったことは?」と訊かれると、小栗は「過酷でしんどい時こそ、余裕を持てる人になりたいと思ったことです」と即答。一方で増本プロデューサーは、「僕はいままで『これをわかって!』という、ちょっと強引なモノづくりをしていたかもしれないのですが、今回は関根(光才)監督の力もあってだいぶ引いて作ったんです。その結果、いつも以上に伝わっていると感じ、お客さんを信じてもっと委ねたほうがかえって伝わるんだなということが学べました」と、作品との向き合い方に大きな変化がもたらされたことを明かした。

最後に増本プロデューサーは「オリジナルの映画はなかなか企画が通りづらい。実現しないんじゃないかなと思った時に小栗さんに電話したら『やるべきだよ』と言ってもらえて始まったプロジェクトでした」と感慨深げに振り返り「それからまる2年、満員のお客さんの前に2人で立てていることが、いま風に言うと“エモくて”(笑)。皆さんの映画になっていると思いますので、ご家族や大切な人とこの作品の話をしてほしいなと思います」と語る。

そして小栗は「『フロントライン』のような作品を皆さんに届けられたことは、本当に役者をやっていてよかったなと思います。よく皆さんに『この作品を育てていってほしい』と言うことがあるのですが、この作品も皆さんそれぞれが育てていってくれたらいいなと思います。皆さんの応援で、僕らがまた違う“フロントライン”に立てるかもしれないので、どうぞよろしくお願いいたします」と力強く呼びかけていた。

文/久保田 和馬

小栗旬、週末の総移動距離はなんと3000km超え!/[c]2025「フロントライン」製作委員会