
この記事をまとめると
■シビックタイプRは受注停止中に特別仕様車を追加設定した
■特別仕様車レーシングブラックパッケージは標準グレードよりも100万円ほど高価だった
■現在シビックタイプRは標準グレードも特別仕様車も受注を停止している
シビックタイプRの現状と100万円の値上げ
最近はハイブリッドの車種が増える一方で、高性能なスポーツモデルは減っている。その意味でシビックタイプRは貴重な車種だが、ほとんど買えない状態が続いている。
現行シビックタイプRは、2022年9月に499万7300円の価格設定で発売されたが、短期間で納期が遅延して受注を停止させた。1か月当たりの販売計画台数が400台と少なかったためだ。不可解だったのはその後の対応だ。タイプRの標準グレードは依然として受注を停止させているのに、特別仕様車のシビックタイプRレーシングブラックパッケージを加えた。標準グレードの受注を停止させながら、特別仕様車を新規投入することは珍しい。
しかも、シビックタイプRレーシングブラックパッケージの価格は599万8300円だから、ベースグレードのタイプRに比べて約100万円高い。タイプRからの変更内容は、内装の色彩、内装に使われる素材の上質化、ワイヤレス充電器や自動防眩ルームミラーなどの追加だから、シビックタイプRレーシングブラックパッケージは大幅に値上げされた印象が強い。
それでもほしかったユーザーは多く、シビックタイプRレーシングブラックパッケージは短期間で売り切れて、再び受注停止に陥った。
シビックタイプRレーシングブラックパッケージの値上げについては「ベースのグレードが安すぎたから構わない」という好意的な見方もあるが、社会的な影響力の強い基幹産業を手がける企業の工業製品としては常識ハズレだ。100万円の価格差が付いたのでは、シビックタイプRかシビックタイプRレーシングブラックパッケージか、どちらかの価格設定が間違っていたことになる。
シビックタイプRの今後の見通しを知りたい
最近は原材料費などの高騰で値上げが続くが、そこを踏まえても、価格アップは多く見積って50万円以内に抑えるべきだった。内訳は特別仕様車の価値が30万円、原材料費の高騰などに基づく値上げが20万円だ。
あくまでも邪推だが、100万円値上げした背景には、中古車価格の高騰もあっただろう。現在のシビックタイプRの中古車価格を見ると、580万〜600万円少々の車両が多く流通しているからだ。中古車のプレミアム価格に合わせて、グレードの販売は再開せずに、約600万円に値上げしたシビックタイプRレーシングブラックパッケージだけを投入した。
この売り方は本末転倒だ。そもそもシビックタイプRの生産と納車が順調に行われれば、転売や中古車価格の高騰も発生しなかった。したがって販売を再開するなら、100万円高い特別仕様車ではなく、肝心な標準グレードのシビックタイプRだった。それなのに100万円高い特別仕様車を投入したから、ホンダが転売と中古車価格の高騰を肯定したことになってしまう。
2025年6月下旬、今後のシビックタイプRの動向を販売店に尋ねると、以下のように返答された。「シビックタイプRの受注は、いまはすべて停止している。すでに受注している車両の納車が完了するのは、特別仕様車のシビックタイプRレーシングブラックパッケージが2025年の末で、標準グレードのシビックタイプRは2026年3月ごろだ。そうなると納車完了のメドが立った2026年1〜2月ごろに、受注を再開する可能性もある。しかし、そのままシビックタイプRが消滅することも考えられる。メーカーからは何の連絡もなく、お客さまの問い合わせに対応できない」。
ホンダは販売店に今後の見通しを明らかにすべきだ。そうしないと、ユーザーと販売現場を困らせてしまう。100万円高い特別仕様車の設定も含めて、ホンダはもう少し、ユーザーと販売現場を大切にすべきだ。

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