
6月5日に発売したNintendo Switch 2だが、早いものでもう1か月が過ぎた。
参考:【画像】Nintendo Switch 2で遊べる『スプリット・フィクション』や『Cyberpunk 2077』などの名作たち
Nintendo Switch 2 紹介映像
この1か月、いろいろなソフトをプレイしてみた筆者が、本ハードの良し悪しを語りつつ、今後の任天堂及びサードパーティーのサービス展開についてさまざまな角度から考える。なお「Nintendo Switch 2 カメラ」などの周辺機器については未購入のため、本記事では除外させていただくことをご了承いただきたい。
まず、Nintendo Switch 2の使用していて良かった点や気になった点について語っていこう。
何よりも素晴らしいと思ったのは、動作が軽くなったことだ。本体のページ遷移はもちろんのこと、ニンテンドーeショップなどもすべてサクサク動いてくれる。Nintendo Switchの頃はページ遷移に何秒もかかったこともあり、こうして軽くなってくれたことで、ついついニンテンドーeショップを開いてセールを確認してしまうようになった。
本体の機構についても、発売前から宣伝されていた通り、Nintendo Switchよりも進化していた。
グラフィックやサウンドについては申し分なしというか、宣伝の通りなので割愛するが、筆者がもっとも良いと感じたのは取り回しだ。まず、Joy-Con 2になったことでグリップ感が向上した。磁石による取り外しはスムーズで、全体のサイズが大きくなった割にそこまで重さは感じない。電車内で子どもが遊んでも問題ないくらいのギリギリの重量に収まっている。
「Nintendo Switch 有機ELモデル」と同様に、有線LANポートが標準搭載になったのもありがたい。配線についてもNintendo Switchと同じですっきりしており、無駄にこんがらがったりしないのも素晴らしい。
他にも、ライブラリの検索システムが貧弱なのはさておき、バーチャルゲームカードは視覚的でわかりやすく、異なるハード間でゲームのやり取りをするときに便利だし、「AボタンとBボタンを入れ替える」など、痒いところに手が届くオプション設定にも注目したい。どこにでも持ち運べる手軽さと、長年のプレイに耐え得る設計が両立されており、価格を考えると世界にふたつとないアイテムだと言えるだろう。
一方で、気になる点も多々ある。
ひとつは排熱だ。こちらはSteam DeckなどのハンドヘルドPCを普段から扱っているユーザーからすると当たり前かもしれないが、遊ぶタイトルによっては本体が相応の熱を持つ。ドックに接続中も時折通信し、その都度ほんのりと熱を帯びるため、Nintendo Switch以上に涼しい環境でプレイしたほうがいいだろう。
また、これは任天堂の方針かもしくはコンセプトに対する意見なのだが、Nintendo Switch 2は、今までに任天堂がスマッシュヒットさせたハードの後継機として発売したWii Uやニンテンドー3DSのようなものと比べても、よりいっそう新機能に欠けているように思う。
むしろ、すでにSteamやPlayStation Storeで遊ばれているサードパーティーの名作を、網羅的に遊べるようにしたベタなプラットフォーム機という印象が強い(そもそも後期Nintendo Switchからしてその向きはあった)。
インディーゲームを出先で遊ぶという意味では、Steam Deckなどと完全に競合した形になる。今回のハードには任天堂らしいおもちゃらしさや、仰天するような新機能はまったくなく、画質やサウンド(そして価格)以外は、だいたい予想の範疇だったのは否めない。この戦略が悪いとは思わないが、あえて任天堂が一般的なゲームファンに向けてプラットフォームビジネスをやり続けるというのはなかなか不思議な感じがする。
なので「任天堂の久々の最新ハード」というよりも「良くできたハンドヘルドPC」という印象が強いのだが、そうであることを意識すればするほど、ソフト不足を感じてしまう。
現状、任天堂の完全新作大型タイトルは『マリオカート ワールド』『ドンキーコング バナンザ』の2本だ(発売日が決まっていないものを含めれば『メトロイドプライム 4 ビヨンド』や『カービィのエアライダー』などもある)。Nintendo Switch 2 Editionと銘打たれた既存のタイトルは大量に出ており『Cyberpunk 2077』や『ホグワーツ・レガシー』が携帯機で満足に遊べることには感動するが、肝心の任天堂がフルパワーで送り出す最新作は(『マリオカート ワールド』以外)まだお預け状態である。
そもそもゲーミングPCで普段からゲームを遊んでいる人間からすると、今回発表されたサードパーティーの名作はプレイ済みのものが多かったのも、飢餓感を煽ることに繋がっているように感じた。
Nintendo Switchのローンチ当時は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』など、Nintendo Switchの底力を見せるシングルプレイタイトルでユーザーの興味を持続させ続けることには成功していたように感じるし、そもそもあのころに比べて任天堂の新ハードに熱視線を抱いているユーザーの数は激増しているわけで、本数自体は多いのだが、やはり控え目なローンチに見えてしまう。
例年ではそろそろ『Nintendo Direct』が来てもいいころだが、ソフト単独のダイレクトのみに絞り、しばらく沈黙を保っている。どうせなら月に一本くらい目玉タイトルが出てくれれば……なんて欲張りな気持ちも湧いてきてしまうが、それ以前に流通の問題がいまだに解決していない。
転売対策とも取れる不思議な抽選方法のおかげか、中古価格はそこまで高騰しておらず、一部では店舗での購入もできたという声も聞くが、とはいえまだ完全にユーザーの手元に行き届いているとは言えない状況だ。こんななかでキラータイトルを山ほど投下しても「そもそも買えないんだが」と思われてしまう可能性はあるが、そのあたりのユーザー間における不公平感を、任天堂がどの程度意識しているかは邪推するほかない。
流石にホリデーシーズンまでにはビッグタイトルが揃うとは思うが、ここ1か月はとにかくNintendo Switch 2の性能や魅力を存分に引き出す作品をいち早く遊びたいという気持ちだけが高まり続けている。せめてダイレクトで興味を持続させるだけの情報を小出しにしてほしい。
(文=各務都心)

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