
(松原孝臣:ライター)
成長した自分らしいプログラムを見せたい
シーズンへ向けて、それぞれに順調なスタートを見せた。
6月27日から29日にかけて、KOSE新横浜スケートセンターでアイスショー「ドリーム・オン・アイス)」が行われた。
シニア・ジュニアの選手たちが集い、試合のようにグループごとに6分間練習を入れて実戦形式で実施されるショーであり、来シーズンに使用するプログラムを披露する場でもある。
今年3月の世界選手権で銅メダルを獲得したのをはじめ、いまや男子の中心たる活躍をみせる鍵山優真は、新しいショートプログラム『I Wish』を演じる。
4回転からの連続ジャンプを跳んだのをはじめ、表現面でも、ときに観客席に目線を向けるなどして、曲に合わせた、弾けるような滑りを披露した。
この曲を選んだきっかけは鍵山自身の要望にあった。
「こういうジャズっぽい明るい曲調をやりたいって僕が(振り付けの)ローリー(・ニコル)さんに言いました。というのも、やっぱり4年前の北京オリンピックのときのショートがすごく自分に合っていると感じたので」
来シーズンもまた、オリンピックシーズンだ。だから好感触であった4年前を重ねたいところはあるだろう。
選んだ理由はそれだけではない。
「4年経って、またちょっと成長した自分らしいプログラムを見せたいと思ったので、同じ系統ではあるんだけど、若々しさというよりも、ちょっと成長したようなプログラムをしたかったなと思っています」
シーズンの初戦は7月20~22日の「みなとアクルス杯」(名古屋・邦和みなとスポーツ&カルチャー スケートリンク)だと言う。
「夏のローカル試合で自分の課題だとか自分の悪いところをすべて出し切って、グランプリシリーズからはしっかりと自分のベストの状態で戦えるようにしたいです。(オリンピックの)選考は全日本選手権だけじゃなくてその前の1試合1試合から見られていると思うので、試合で自分の全力を出し切って少しずつつないでいけたらいいかな、と思います」
佐藤駿は『火の鳥』を披露
初めて出場した世界選手権で6位の結果を残した佐藤駿は、新フリー『火の鳥』を演じた。
「まずクラシックの曲を滑りたいなと思っていて、今シーズンは誰も使ってこないような曲で、直近であまり滑っている人がいない曲がいいなと思って選びました」
過去には数々のスケーターが滑ってきたプログラムだ。中でも、2013-2014シーズンのフリーで使用した町田樹の『火の鳥』は、バレエ表現を取り込みつつ演じ切り、名声高い。佐藤が意識するのも町田の版だった。
「町田樹さんの演技を参考にさせていただいて、その演技を何回もYouTubeで見ました。町田樹さんのようにまだ自分はなりきれてないので、参考にしながらよりよい演技ができるように頑張っていきたいと考えています」
後半には力強いステップをみせた。
「曲的に一番盛り上がる部分ですし、体力的に大変な部分ではあるんですけど、そこで出し切らないと意味がないと思うので、そこを意識して頑張っていきたいです」
鍵山、佐藤とともに3月の世界選手権に出場した壷井達也がみせたのはショートプログラム『Anniversary』。
持ち味とするスケーティングの伸び、柔らかさを感じさせる動作とともに、代表作になる可能性も抱かせる滑りで人々をひきつけた。
友野一希選手はショートプログラム『That's It(I'm Crazy)』を披露。細やかなしぐさや目線、友野ならではの演技とともに、喝采を浴びた。
この4人をはじめ、出演した選手たちは、それぞれ違いはあっても、まだプログラムを十分滑り込んでいるわけではない。ジャンプも決めきれるわけではなく、転倒や回転が抜けるケースもみられた。
それでも場内には、スタンディングオベーションで選手を称える光景が何度も広がった。
まもなく始まるのは、4年に一度のオリンピックシーズンだ。選手たちにとって格別のシーズンだ。4人の選手は、そして4人に限らず、選手はそのシーズンへ向けて、何を表現したいか、伝えたいかも含め熟慮し、曲を選びプログラムをつくりあげた。そして何を目指しているのか、何に挑んでいくのか、それは氷上の演技にもうかがえた。
何度も繰り広げられるスタンディングオベーションは、選手たちを後押しするかのようだった。
今回、出演を予定していた三浦佳生は開幕前日に欠場を発表し、佐藤は最終日をコンディション不良で欠場となった。
まずは怪我なく、無事のシーズンを。
まもなく勝負のシーズンは始まる。
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