
この記事をまとめると
東南アジア他国とは一味違うベトナムの人気車種事情
ベトナムの自動車業界というのは少々変わっている。地元ベトナムブランドで世界的にはBEV(バッテリー電気自動車)で有名な、ベトナム国内での2024暦年締めブランド別年間新車販売台数第1位のビンファスト(ベトナム国内ではICE車もラインアップしている)と、トヨタを抜いて2位となっているヒョンデはVAMA(ベトナム自動車工業会)に非加盟となっている。
そのため、ビンファストとヒョンデはそれぞれ個別発表された統計数字となり(しかもビンファストは販売台数ではなく納車台数となる)、VAMA加盟ブランドでVAMAが発表した統計に個別発表数値を加味した、あくまでも暫定的なランキングになってしまうのである。今回は、地元ベトナムメディアで紹介されていた車名別2024暦年締め年間販売トップ10をベースとし、首都ハノイでどんなクルマが走っていたかを紹介していくことにする。
車種別販売トップはビンファストのVF5となっているのだが、ハノイで見た限りは走っているVF5のほとんどがタクシーまたはライドシェア車両などの旅客運輸車両となっていたので、純粋な小売りベースで見れば2位となるビンファストのマイクロBEV、VF3が事実上の販売トップといってもいいかもしれない。
フランス統治下に整備された旧市街やその周辺となる中心市街地の道路は狭く、駐車スペースも限られている。新市街地も駐車環境がけっしてよいとはいえないので、駐車スペースに困らないVF3が人気となっているようである。ちなみに価格は2億9900万ドン(邦貨換算約167万円)となっている。
ベトナムでは日系ブランドが全般的に強く、そのなかでもほかの東南アジア諸国と同じくトヨタがずば抜けた強さを見せるのだが(2024暦年締めブランド別年間新車販売台数ではヒョンデに次いで3位)、そのほかでは日産やホンダよりもマツダと三菱の存在感が強いのが特徴的といえる。
三菱はコンパクトMPV(多目的車)となるエクスパンダー/エクスパンダークロス(車種別販売3位)が東南アジア各国では販売旗艦車種となり、街なかでも多く見かけるのだが、その傾向はハノイでも同じであった。さらに2023年8月にインドネシアでワールドプレミアされたエクスフォースが2024年1月にベトナムでも発売されるやいなやビッグヒット(車種別販売6位)。2024年のベトナムでの三菱は、ブランド別での2024暦年締め新車販売台数が過去最高を記録している。
国内外メーカーの意外な勢力図
マツダはCX-5(車種別販売5位)がもっともよく売れているが、ほかにマツダ3(セダンが多かった)や、CX-8、マツダ2なども街なかでよく見かけることができた。
東南アジアでトヨタ車といえば圧倒的な数のアルファードを街なかで見かけるのが常となっているが、ハノイでは先代メインにパラパラと見かける程度であった。車種別販売台数トップ10においてトヨタ車は7位にヴィオス、9位にヤリスクロスが入っている程度。ヴィオスはタクシーとして街なかでよく見かけるのでフリート販売も多いようだ。ヤリスクロスよりカローラクロスのほうが見かけることが多かったのだが、その多くは改良前モデルであった(2022暦年締めではカローラクロスは第4位と大ヒットしたことが大きい)。
ホンダはCR-Vが売れ筋となっているようなのだが、あくまで筆者が感じた限りでは旧市街のような中心市街地よりも郊外の新興開発住宅地域でホンダ車をよく見かけたので、感度のいい中産階級ぐらいのハノイ市民がホンダ車を愛用しているようにも見えた。
クルマに限らず韓国系資本が強みを見せるベトナムでは、ヒョンデと起亜をとにかく街なかで見かける。ヒョンデでもっとも売れているのは2024年5月にフルモデルチェンジを行ったコンパクトセダンのアクセントとなっている。決め打ちでよく見かけるモデルこそないものの、ラインアップ全体がバランスよく売れており、結果としてヒョンデ車だらけとなっている印象だ。
起亜ではコンパクトクロスオーバーSUVのソネットや、3列シートをもつMPV色の強いコンパクトクロスオーバーSUVのカレンをよく見かけた。
意外なところではフォードが健闘していた。ハノイ市ではなかなか見かけなかったので、地方での需要が高いようだが、ピックアップトラックのレンジャーは第4位となり、大型SUVのエベレストも10位に入っている。タイなどではこの2車種のみで勝負したりと少数精鋭で販売しているのだが、ベトナムではミドルサイズクロスオーバーSUVとなるテリトリーもハノイ市内でよく見かけたし、ウェブサイトをみるとエクスプローラーもラインアップされていた。
高級ブランドでは、ドイツ系はBMWが少なめ、メルセデス・ベンツよりアウディのほうが目立っていたが、全体ではESやRXなどレクサス車を多く見かけることができた。
2023暦年締め年間新車販売台数ランキングでは、ビンファストを含むBEVは1台もトップ10にはランクインしていなかった。現地報道でも2024暦年締めブランド別でビンファストが販売ナンバー1となったのはタクシーやライドシェアのニーズが目立ったからとしているものの、VF3はほぼ個人所有のように見えたことも事実。今回はハノイに限ってのリポートではあるが、ベトナムの消費者もBEVというものへの関心が高まっていることは間違いないようであった。

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