
2025年10月14日、マイクロソフトのWindows 10のサポートが終了する。サポートが終了すると、機能やセキュリティの更新が行なわれず、インターネットに対する危険性が増大する。解決策としてはWindows 11にアップデートすることが有効だが、古いパソコンなどでWindows 11が動作しないという人も多いことだろう。
そういった人に向けて、パソコンショップSEVENを手掛けるセブンアールジャパンからWindows 11搭載パソコンの「ZEFT Z56AB」が発売された。このZEFT Z56ABは、長年Windows 10を使っていた人にとって、新たにWindows 11搭載パソコンへの買い替えしやすいマシンになっているという。
では、ZEFT Z56ABはどのようなパソコンなのか、同社の中嶋 孝昌氏と真重 翔氏、そして中條 拓海氏に詳細を伺ってみた。
Windows 11への買い替えを想定した1台
奇をてらわないシンプルなデスクトップパソコン
──今日はよろしくお願いします。まずは、ZEFT Z56ABがどのようなPCなのか、そのコンセプトを教えていただけますか?
中嶋 孝昌氏(以下、中嶋氏):2025年の10月にWindows 10のサポートが終了しますが、中にはパーツ構成が古いなどの理由でWindows 11にアップグレードしたくてもできない人もいらっしゃると思います。そういった方にオススメしたいパソコンがZEFT Z56ABになります。そのため、あまり奇をてらった外観や仕様ではなく、“デスクトップパソコン”のイメージを具現化したような仕様となっています。
中條 拓海氏(以下、中條氏):Xで使用OSについてアンケートしたのですが、約36%がWindows10を使い、その中の約13%がスペック要件を満たさないことが理由で、アップデートできないという結果でした。そのような方に向けたパソコンが、このZEFTZ56ABになります。
──そのコンセプトに合うように一番配慮した点はどこでしょうか?
中嶋氏:Windows 11にアップグレードできないパソコンがどの頃のものかを調べますと、おおよそ10年前ぐらいに購入されたマシンが多いようです。同じパソコンを10年間使い続けたお客様に、最新の仕様とかトレンドが絶対必要かというと、そうではないのかなと考えました。今回はそういったお客様が新しいパソコンを使用した際に、あまり違和感を覚えないような部品構成を心掛けました。
光学式ドライブを搭載可能
CPUクーラーは空冷と、安心して買い替えられるよう工夫
その部品構成について具体的な話はありますでしょうか?
中嶋氏:一例を挙げると、光学式ドライブです。当時は内蔵型モデルの人気がありました。現在も内蔵できるケースの取り扱いがありますが、人気があるのはUSB接続の外付タイプの光学式ドライブです。理由としては、ユーザー側がインターネットを介して動画や音楽の楽しむようになり、DVDやBlu-rayの使用頻度が少なくなったのがあると思います。また、ケースメーカー側も冷却性の追求で前面パネルを大きくメッシュにしたり、外観にこだわった前面ガラスのピラーレスケースの展開などで、新商品に光学式ドライブを内蔵しない製品が多くなっているのもあります。今回はハード面での使い勝手が変わらないよう、ZEFT Z56ABでは搭載できることを前提にし、ケースはCoolerMasterさんの「SILENCIO S600」を選択することにしました。
──確かに10年前のパソコンだと光学式ドライブが標準搭載されているものがほとんどですね。
中嶋氏:はい。CD-RやDVD-Rに動画や写真などを保存している方や、アプリケーションなどのインストールをCD-ROMやDVD-ROMから行なっている方もいらっしゃると思います。不満なく長く使用されていたと思いますので、新しいパソコンンに変えた際に、今まで通りに使用できる方が良いと考えました。
──CPUクーラーを空冷にしたのも同じ理由からでしょうか?
中嶋氏:そうですね。10年ぐらい前のパソコンでも簡易水冷クーラーはあったのですが、主流は空冷クーラーだったと記憶しています。そういった方にいきなり簡易水冷クーラーを勧めるのはハードルが高いのかなと考えました。弊社が伺えた限りの話になりますが、この年数まで使用される方は、使い方自体が負荷が少ない場合と、部品性能の余裕から負荷が少ない場合があります。空冷と水冷は仕組みが違うのでどちらも強みがありますが、負荷が少ないのであれば空冷クーラーでいいと思います。もちろん、BTOに簡易水冷クーラーをご用意していますので、より高い冷却性能と静音性が必要であれば変更していただければと思います。
実は今結構高コスパなCore Ultra 7 265KF
マルチに活躍するRTX 5060を搭載
──CPUをCore Ulta 7 265KFにした理由は何かありますか?
中嶋氏:当時の販売はインテルCPUの方が多く、同じブランドがいいかと思い、Core Ultra 7 265KFを採用しました。Core Ultra 7はCore i7の後継にあたる製品で高性能です。今現在の話になりますが、末尾にKやKFが付かない1つ下のCore Ultra 7 265より安く、コストパフォーマンスが高いです。
真重 翔氏(以下、真重氏):Core Ultra 7 265KFは、最新世代の20コアタイプのCPUで、Turbo Boost適用時の最大動作クロックは5.5GHzを誇ります。弊社でも人気の高いモデルで、このCPUであれば動画の編集や再生、それにフォトレタッチ、オフィスアプリケーションなど多くの場面で活躍できることは間違いないです。いま、価格と性能のバランスがもっとも優れるモデルではないでしょうか。
──このZEFT Z56ABは、お話を伺う限りゲーミング用途をあまり意識していないようですが、それでもGPUにGeForce RTX 5060(以下、RTX 5060)を搭載しているのはなぜでしょうか?
中嶋氏:おっしゃるとおり、あまりゲーミング用途を意図したモデルではありません。ですが、ゲーム“も”できるPCを意識して用意したGPUです。というのも、ゲーミングPCをお買い求めるお客様の中には、LEDが光らない比較的落ち着いたモデルが欲しいとおっしゃる方がいます。そういった需要にもZEFT Z56ABは合致できるモデルではないかと思っています。もちろん、事務用途やクリエイティブ用途に加えて、ちょっと息抜きにゲームをプレーしたいと考えた際に、相応のパフォーマンスを持ったGPUが必要になるのかなと思い、RTX 5060を用意しました。
真重氏:RTX 5060は、NVIDIAの最新のBlackwell世代ではエントリー向けモデルとなります。とはいえ、前世代のGeForce RTX 4060に比べてメモリー帯域幅が448GB/sにまで向上していますし、フルHDであればかなり快適なゲーム環境が実現します。
中條氏:実際にZEFT Z56ABで、いくつかのゲームをプレーしてみました。まずは、「モンスターハンターワイルズ」ですが、フルHDで80fps前後、WQHDで60fps前後のパフォーマンスが得られました。また、「Cyberpunk 2077」でも同程度のパフォーマンスが得られ、かなり快適なプレーが実現しました。さらに、「ARMORED CORE VI」や「エルデンリング」、それに「Call of Duty: Black Ops 6」でもWQHD以下の解像度であればかなり高いパフォーマンスを発揮しています。この性能であれば、ちょっと息抜きにプレーをというような使い方であれば満足いただけるのではないでしょうか。──ZEFT Z56ABを使用してみて何か気が付いた点はありますか?
中條氏:重いゲームを長時間プレーしたり、動画エンコードなどの重い負荷を長時間掛ける場合に、もう少し冷却性能があってもいいのかなと思いました。フロントパネルの扉を開けることで多少は冷却性能が向上するのですが、それでも足りないと思われる方は、BTOでファンを3基まで追加できますので、そちらを選んでいただければと。
中嶋氏:あと、これはこのZEFT Z56ABの話ではないのですが、お客様からより多くの映像出力がほしいという問い合わせをいただいたことがあります。その方は株のトレードをされてるらしく、いくつもの画面を表示したいというものでした。マザーボードに用意された映像出力は、DisplayPortとHDMIの2系統のみというものがほとんどですので、そういった要望でもうビデオカードを装着する必要が生じてきます。そこで、コストパフォーマンスに優れるモデルとしてRTX 5060を採用したという事情もあります。
なんでWindows 11にする必要があるの? と思う人は特設サイトをチェック
──マイクロソフトのサポートが切れてもどういった不都合があるのか分からない人も多いと思うのですが、そのあたりはどのように訴求していきますか?
中嶋氏:会社でWindowsを使われている方ならサポートが切れるデメリットを理解していると思います。ですが、自宅で趣味に活用している方も多く、そういった人には別途Windows 10のサポートが終了することで起こり得る不具合について説明したページを用意しました。このページはかなり丁寧にわかりやすく作りましたので、現在、Windows 10を使っている方にぜひ見ていただきたいです。
真重氏:最近ではフィッシング詐欺も増えてきていますので、そういった詐欺などの対策として、主に安全面の観点からページをまとめています。弊社ではとくにゲーミングPCの人気が高いのですが、ZEFT Z56ABのようにゲーミング向け以外の用途も考慮したモデルも取り揃えています。Windows 11を搭載したPCを新調しようと考えているのであれば、このページを一読していただければ幸いです。このページでは、OSがWindows 11になることで使用できる新機能などもまとめていますので、PCがより便利なものになると思います。個人的には、Windows 11のスクリーンショットを切り取る「Snipping Tool」に実装されているOCRと呼ばれる文字認識機能が気に入ってます。
10年振りの買い替えなら驚くであろう進化も
──ほかにZEFT Z56ABならではの特徴はありますでしょうか?
中嶋氏:このZEFT Z56ABは、静音性にもかなり配慮したパソコンとなっています。ケースのSILENCIO S600は、フロントパネルとサイドパネルに遮音材が張り付けられており、内部の動作音を外に漏らさない仕様です。また、サイドパネルは強化ガラス製のモデルもあるのですが、ZEFT Z56ABにおいてはより静音性に優れるスチール製のものを採用しました。さらにケースに搭載された標準ファンも、「Silencio FP 120mm PWMファン」という静音性の高いものとなっています。
真重氏:最近のパソコンとしてはめずらしくはないのですが、ZEFT Z56ABもWi-Fi 6E対応の無線LANとBluetooth 5.3を標準で装備しています。10年ぶりにマシンを新調した人にとって、ワイヤレス周りが充実している点は、かなり使い勝手に優れています。あと、システムメモリーも16GBが2枚で32GBとなっています。10年前のパソコンを使われていた人にとって、32GBはかなり多いように思うかもしれませんが、Google Chromeでタブを複数開いたり、複数のアプリを同時に使用したりすると、意外に多くのメモリーを使用します。弊社ではもうDDR5では16GB以上のモジュールしか取り扱っていないのもあるのですが、わりと32GB以上が標準的になってきたように思います。もし、これまでメモリー容量が8GBのパソコンをお使いでしたら、32GBの世界に驚いてほしいですね。あと、ビデオカードはアイドル時にファンが停止し、静音性を高める工夫がなされています。
──10年前のパソコンと今ではかなり仕様に違いがありますね。
中嶋氏:そうですね。10年前ですと、2.5インチSSDだったと思います。それがいまでは、M.2 SSDが主流となり、容量もアクセス速度もかなり向上しています。あとは、映像出力が10年前はDVI-DやDVI-Iが普通にありましたが、今は姿を見かけるほうが稀です。たまに、ディスプレーが接続できないというお問い合わせもいただくのですが、古いパソコンやディスプレーをお使いの方はそういった問題も出てくるようです。マウスやキーボードの接続も、昔はPS/2端子を使用していましたが、今はUSBが一般的です。たかが10年ですが、されど10年といったところで、パソコンの仕様に関する進化は目まぐるしものがあります。
──ありがとうございました。
ZEFT Z56ABの価格は、標準構成で24万6180円(7月2日現在)とのこと。比較的、価格も抑えられており、初めてWindows 11搭載パソコンで、ゲームやクリエイティブ用途などもこなしたいマシンを購入するのであれば、リーズナブルなモデルといっていいのではないだろうか。静音性にも配慮されている点は評価できるだろう。今あるパソコンの使い勝手をそのままに、新しい環境へと踏み出すのに、このZEFT Z56ABは最適な1歩足りえるのではないだろうか。

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