
今年5月の静岡県伊東市長選で現職を破って初当選した田久保真紀市長に、「学歴詐称」疑惑が浮上している問題で、田久保市長は7月2日、弁護士同席のもと釈明会見を開いた。
テレビ静岡などによると、市の広報誌には最終学歴として「東洋大学法学部卒業」と記載されていたという。その後、差出人不明の文書が発端となって、市議会で「詐称ではないか」と指摘された。
田久保市長は会見で、「卒業は確認できなかった。除籍であることが判明した」と説明した。そのうえで「選挙中も自ら公表しておらず、弁護士と確認したところ、公職選挙法上問題ないという結論に至った」と述べた。
いずれにせよ、政治家としての資質は問われ、批判は避けられない状況だ。それにしても、そもそも「学歴詐称」はどこが問題なのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●学歴詐称に「法的問題」は?学歴詐称と聞くと、「そんな無理せんでも」と思ってしまいます。もっと自分の学歴に誇りを持つべきです。ちなみに私も大学院を中退していますが、オープンにしています。
一般に、履歴書や就職の面接で、実際には取得していない学歴を申告し、それが後に発覚した場合、民事上の問題が生じます。特に、学歴が業務遂行能力に直結する重要事項である場合、懲戒処分が有効とされる可能性があります。
刑事上は、学位を偽った場合、軽犯罪法違反(1条15号)にあたるとして、30日未満の拘留または1万円未満の科料となる可能性があります。また、偽の卒業証明書などを用いた場合には、有印私文書偽造・同行使罪(刑法159条1項1号、161条。3カ月以上5年以下の拘禁刑)が成立する可能性があります。
●選挙で「学歴」を詐称した場合は?公職選挙法上は、虚偽事項の公表罪(公職選挙法235条)が問題となります。これは「当選を得、または得しめる目的」で、候補者が経歴などについて虚偽の事項を公表した場合に適用されます。2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
政治家の学歴詐称は許されるものではありません。もうすぐ参議院議員選挙ですが、国民の多くは、学歴ではなく、その人自身を見て投票すべきだと思います。
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/

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