
この記事をまとめると
■フェラーリのV8モデルは登場してから数年でハイパフォーマンス仕様をラインアップする
■360チャレンジストラダーレ以後は430スクーデリアなど多様なモデルがリリースされた
ファン待望のハイパフォーマンスモデルはデビュー数年後に登場する
フェラーリのV型8気筒ミッドシップの進化には、もはや伝統的ともいえる手法がある。1975年、フェラーリはピニンファリーナによるスタイリッシュなボディをもつ308を市場へと投入。その人気は圧倒的なものだったが、このころから年々厳しさを増していった、アメリカなど主要なマーケットでの排出ガス規制を直接の理由に、そのパフォーマンスは徐々に低下。
最終的にフェラーリは、1985年のフランクフルトショーで、308シリーズの後継車たる328を発表。フェラーリのV8ミッドシップには、これまで以上に世界から熱い視線が注がれるようになった。
そしてこのときの経験は、のちのフェラーリのニューモデル戦略に大きな影響を及ぼすことになる。それは、ニューモデルの誕生から4年ほどの時間が経過すると、最新のエンジニアリングを導入したさらなる進化型、つまりパフォーマンスを極めたハイパフォーマンス仕様のスペシャルモデルをラインアップに追加。シリーズ全体としてのライフスパンは、この戦略が採られるようになってから、ほぼ10年というのが平均的な長さとなった。
328の後継車である348、そしてそのビッグマイナーチェンジ版のF355では、ロードバージョンのスペシャルモデルが、いわゆる特別仕様として製作された程度だったが、その次の世代に相当する360とF430からは、スペシャルモデルが積極的に登場してくるようになる。
1999年デビューの360モデナをベースとしたスペシャルモデルは、当時の360チャレンジのパフォーマンスをオンロードでも、そして望めばサーキットでも十分に味わうことができる「チャレンジストラダーレ」。
ミッドの3.6リッターV型8気筒エンジンは、ベースの360モデナ用からさらに25馬力のエクストラを得て425馬力の最高出力を発揮。それは走りを追求したいユーザーから高い人気を博した。
2005年に誕生した360モデナの後継車、F430においては、やはりそのライフスパン途中の2007年に発表されたのは「430スクーデリア」。
ミッドの4.3リッターV型8気筒エンジンは510馬力と、こちらはスタンダードなF430から30馬力の強化。さらには6速セミAT、スーパーファスト2の搭載や、最新のスタビリティコントロールやトラクションコントロールも、430スパイダーに採用している。
この430スクーデリアをベースに、オープンモデルの「スクーデリアスパイダー16M」をリリースしてきたのも、フェラーリの企画力が成せる技だ。
ちなみにこのモデルは499台が限定生産され、16Mとは当時フェラーリがF1GPにおいて16回のワールド・チャンピオンシップを獲得したことを意味するもの。430スクーデリアが限定生産ではなかったのとは対照的に、このスクーデリア・スパイダー16Mは499台の限定車だったことも興味深い。
V8からV6に変わってもスペシャルモデルのコンセプトは継承
2009年に発表された458イタリアのラインアップにスペシャルモデルの、その名も「458スペチアーレ」が加わったのは2013年のこと。
最高出力は458イタリアより35馬力増の605馬力。0-100km/h加速はついにこのモデルによって3秒の壁を突破することに成功している。
2019年には、この458スペチアーレのオープン仕様、「458スペチアーレ・アペルタ」(アペルタとはイタリア語でオープンの意)も、499台の限定数を掲げて誕生した。
458イタリアのビッグマイナーチェンジ版、2015年発表の488GTBには「488ピスタ」、そして488ピスタ・スパイダーの両車が、さらにスパルタンでハイパフォーマンスなモデルとして用意された。
その作りはじつにストイックなもので、ミッドのV型8気筒ターボエンジンは、新たなプロフィールをもつカムシャフトなどが採用され、結果として720馬力の最高出力を発揮。カーボンファイバーやアルカンターラなどの軽量素材が惜しみなく使用されるインテリアにも走りへのこだわりが強く表れている。
そしてフェラーリは先日、ここまで紹介してきたV8ミッドシップのスペシャルモデルのコンセプト、すなわちより強力なパワーユニットと徹底した軽量化によって、究極のパフォーマンスを追求するという哲学を継承したモデルを、V型6気筒ターボエンジンにエレクトリックモーターを組み合わせた、まさに現代の最先端スーパースポーツともいえる296GTBをベースにデビューさせた。
「296スペチアーレ」がそれだ。最高出力は880馬力というから、そのパフォーマンスは大いに期待できるところ。そのステアリングを握ることができるカスタマーには、やはり幸せというひと言以外に、思いつく言葉はない。

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