
KDDIは2025年7月1日、「au 5G Fast Lane」を開始した。
au 5G Fast Laneはその名の通り、通信に「優先レーン」を設けるというものだ。
混雑した場所において、au 5G Fast Laneが使えるスマホであれば、安定して快適に通信ができるというものだ。もちろん、契約していないスマホもそれなりに通信ができる状態が維持されるという。
au 5G Fast Laneを契約しているスマホに対しては相対的に多くの無線リソースを割り当てることで、実現している。
では、実際のところ、効果はいかほどのものなのか。
ダウンロード速度は通常の2倍以上に
KDDIから借りた2台のGalaxy S22を持って、7月1日夜に東京ドームで開催された福岡ソフトバンクホークスvs.北海道日本ハムファイターズの観客席で試してみた。
その日はソフトバンクホークスが東京ドームで主催するゲームということで、ソフトバンク関係者が多く詰めかけていた。観客数は4万2283人とかなり大入りであった。
三塁側のシートで何度か測定してみたが、たとえばau 5G Fast Lane対応のGalaxy S22だと下り87.4Mbpsであったが、非対応だと下り32Mbpsといった具合だ。上りも対応機種が21.9Mbps、非対応が9.01Mbpsと倍近い速度差が出ていた。
非対応でも実使用には全く問題ないが、対応機種だとさらに快適に使えるというわけだ。
ちなみに同時刻のソフトバンク回線は下り67.5Mbps、上り12.2Mbpsと、関係者だらけの試合にもかかわらずかなり優秀であった。
体感的には「なんとなく快適かも」レベル
au 5G Fast Laneは、5G SA契約をしており、料金プランとしては6月3日より受付が始まっている「auバリューリンクプラン」や既存の料金プランである「使い放題MAX+」「auマネ活プラン+」を契約していると利用できる。
ただ、スマホに「Fast Laneにつながっている」という表記は出ないので、「なんとなく快適かも」という実感にしかならない。au 5G Fast Laneが使えない、au契約の友人を横に置いて、速度チェック比較をして、自己満足に浸るという使い方になりそうだ。
au 5G Fast Laneは、5G SAで導入が期待されている、ネットワークを輪切りにして、例えば特定のユーザーに高速な通信サービスを提供できる「スライシング」という技術ではないという。
契約上は5G SAとなっているが、5G SAではない5G NSAのエリアでも利用可能だ。ただ、4Gにつながってしまうと、au 5G Fast Laneにはならないので注意が必要だ。
NTT「5G ワイド」と技術的には同じ
ちなみに、このau 5G Fast Lane、KDDIによれば技術的にはNTTドコモビジネス(旧:NTTコミュニケーションズ)が、法人向けに提供している「5Gワイド」というサービスと同じなのだという。
5Gワイドも一般のユーザーに比べて無線リソースを多く割り当てることで通信速度の向上と安定化を図っている。NTTドコモビジネスは法人に特化しているが、KDDIでは一般ユーザー向けのサービスとして広く提供しているというわけだ。
今回の優先レーン、将来的に対応の料金プランを契約する人が増えまくり、au 5G Fast Laneが使えるユーザーばかりになってしまったら、もはや「優先」の意味がなくなってしまうのだろうか。
KDDIによれば「その際は、さらなる設備投資をして、快適に使える環境を増やしていく」とのことだった。
「ネットワーク品質で選ぶならau」アピール
KDDIはここ最近、ネットワーク品質の調査会社であるOpenSignalのデータにおいて高評価が続いている。その品質は世界で1位に輝いており、OpenSignalから表彰を受けている。
今年4月から社長に就任した松田浩路氏は、ネットワークの品質や新サービスでいかに他社と差別化するかに注力している。
今回のau 5G Fast Laneだけでなく、地上340キロに飛ぶ低軌道衛星であるStarlinkとの直接通信サービス「au Starlink Direct」も他社に先駆けて、すでに提供している。
また、海外ローミングも、月15日間、追加料金ナシで使える「au海外放題」も提供している。
6月26日の昼間に通信障害を発生させるなど、不安要素も拭えないが、NTTドコモがネットワーク品質の改善に苦しむ中、「ネットワーク品質で選ぶならau」を今後も積極的にアピールして、顧客獲得につなげたいようだ。

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