
子育て支援、災害対策、交通インフラなど、さまざまな手法で意見を集め、AIで解析するブロードリスニング。去年の都知事選の際に活用されたことで、その手法が知られることになった。
東京都ではXへの投稿やYouTubeへのコメント、メールや郵送などで都政への意見を集め、結果を分析し公表。都の長期戦略のビジョンなどに活用したとしている。
また、国会では3月7日、ブロードリスニングの結果をもとにした質問が行われたほか、6月の都議選では選挙期間中に実施し、公約の立案に活用したという候補者もいた。
都議選でブロードリスニングを活用した いでい良輔氏は、これまでは難しかった「自由記述」の回答をAIで分析可能になったことをメリットとして挙げた。
一方で、ブロードリスニングの結果は、「回答した人」の意見であり、「回答していない人」の意見は反映されていない。
ではその結果にはどのようなクセがあるのか。参院選でブロードリスニングの活用を公表している候補者や政党もあることから、選挙前のこの時期に、専門家にその読み解き方と注意点を聞いた。
参院選目前…「ブロードリスニング」を解説!

世の中の様々なデータの調査・解析などを手掛けている、立命館大学の谷原つかさ准教授は、“最大のメリット”として「オープンエンドで質問できること」を挙げた。
「従来の世論調査やパブリックコメントでは、実施者が問いや課題を設定するが、ブロードリスニングの場合は、『東京都の課題』などとざっくりとした形で有権者に聞くことができるため、実施者の想像の範囲を超えた新たな課題の発見につながる」(立命館大学・谷原つかさ准教授、以下同)
一方で、その結果には“クセ”もあるという。
「ブロードリスニングの場合は意見がある人だけが投稿する。意見のない人はわざわざ投稿するモチベーションがない。そのため、『かなり賛成』か『かなり反対』など、強い意見が多くなるというクセがある」
では、世論調査のようなランダム化された調査に問題はないのだろうか。
「世論調査では、調査する問題について興味がない人の意見も、半ば無理やりひねり出して聞いているところがある。また、利害関係者や、その政策の影響を受ける人の意見を重く受け止めることには合理性があるが、世論調査ではそうした意見も統計的に『1』にしてしまう」
数字には「謎の説得力」…結果を見るときの注意点
こうしたクセを理解しつつ、結果を見る私たちはどのようなポイントに注意すればよいのか。
「まずは、『量ではない』というところ。基本的に、オンライン上で意見を集める、意見を自由に投稿してもらうというスタイルを取る以上、結果として出されているパーセンテージや量に意味はない。例えば、ある意見を持った人がたくさんの知人に声をかけて投稿してもらったら、その意見は不自然に多くなってしまう」
しかしながら、多くの実施者は、結果をクラスタリングしてマップに落とし込んで“見える化”し、同時に意見の実数や割合も掲載している。
「(数字は)客観的“風”、サイエンス“風”を装うことができ、謎の説得力を持ってしまう。数字が示されているからと言って何もかも客観的であるわけではなくて、実施する側の意図や狙いもあるので、データを見るリテラシーは養った方がよいと思う」
また、ニュース番組『ABEMAヒルズ』コメンテーターでJX通信社 代表取締役・米重克洋氏は、メディア側がこうした調査結果を伝える際にも注意するべき点があると指摘する。
「数字でズバッと出されてしまうと、それが民意だと受け止めてしまう部分もあるので、(調査のクセを)しっかりと注釈付きで伝えるという判断もある。そして、定量的な裏付けを必要とする時には、ブロードリスニングだけではなく一般的な世論調査も併用して伝えていくということが、あるべき姿だと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)

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