
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は6月29日、同日実施したH-IIAロケット50号機の打ち上げに関する記者会見を開催し、結果を報告した。同機に搭載した「いぶきGW」(GOSAT-GW)は所定の軌道に投入され、打ち上げは成功。これでH-IIAの連続成功記録は44機に伸び、成功率は98%ちょうどとなって、すべてのミッションを終えた。
H-IIAは日本の基幹ロケットとして開発され、2001年に初号機のフライトに成功。2003年の6号機では唯一となる失敗があったものの、それを乗り越え、現在まで成功を続けてきた。2007年の13号機からは民間移管されており、それまでのJAXAに代わり、MHIが主体となって打ち上げ事業を行っている。
これまで、日本のさまざまな地球観測衛星、測位衛星、情報収集衛星、科学衛星などを打ち上げたほか、月周回衛星「かぐや」(2007年)、金星探査機「あかつき」(2010年)、小惑星探査機「はやぶさ2」(2014年)、小型月着陸実証機「SLIM」(2023年)など、月惑星探査にも貢献。その高い信頼性によって、日本の宇宙開発の自立性を支えてきた。
その一方で、海外からの受注は狙ったようには伸びなかったが、「Telstar 12 VANTAGE」や「Inmarsat-6」といった商業静止衛星、韓国の地球観測衛星「KOMPSAT-3」、UAEの火星探査機「HOPE」などを打ち上げている。
四半世紀の長きにわたって飛び続けたロングセラー機の引退とあって、今回の会見では、H-IIAロケットを総括するコメントや質問が相次いだ。
MHIの五十嵐巖・宇宙事業部長は、「外から見ると安定していたかもしれないが、1機1機いろんなことがあって、さまざまな困難を乗り越えながら、50号機まで来ることができた」と振り返り、「部品・機器・材料など尽力してくれたパートナー各社、指導してくれたJAXA、応援してくれた地元の人のおかげ」と感謝の言葉を口にした。
JAXAを所管する文部科学省の堀内義規・研究開発局長は、「日本の宇宙開発の歴史の中で、記憶に残るロケットになった」と評価。「打ち上げ計画を政府内で調整するとき、オンタイムで打ち上げられるという信頼性に助けられた。宇宙政策の面からも、非常に頼りになるロケットだった」と、感想を述べた。
今回、最終号機の打ち上げということで現場には相当のプレッシャーもあったはずだが、打上執行責任者をつとめたMHIの鈴木啓司氏は、打ち上げの数日前、全員が参加する朝礼において、「50番目の初号機のつもりで取り組もう」と声をかけたという。
H-IIAの開発に構造設計で関わったという鈴木氏は、これまでの運用について、「不適合が起きるたびにていねいに解析し、再発しないように取り組んできた。かけ声だけでなく、きちっと仕組みに落とし、文書や制度を整え、組織として推進することを地道に続けてきて、高い成功率を達成できた」と分析。
“50番目の初号機”というのは、最終号機だからといって何か特別なことはせず、今までの49機でやってきたことを確実にていねいにやろうということを表現したのだという。今回の結果により、成功率は98%ちょうどになったが、「最後まで成功させ、97.9いくつではなく、98.0までたどり着けたのは大きな喜び」と、笑顔を見せた。
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(大塚実)

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