
本記事では、「日本人の生活のリアル」について、国税庁『民間給与実態統計調査』(令和5年分)などをもとに解説していきます。
1世帯平均収入「約52万円」…豊かに生きることは可能か
超少子高齢社会となった日本。昭和22~24年の「第1次ベビーブーム期」、46~49年の「第2次ベビーブーム期」以降の出生数は減少傾向にあり、平成28年以降は100万人を下回って推移しています。
2024年の厚労省の発表によると、直近の出生数は過去最少の72.7万人。8年連続で減少していますが、2024年の出生数はさらに減少し、70万人を割り込むと予想されています。
もちろん、生き方は人それぞれ。「子どもを持つ予定はない」ことは当然選択肢の一つであるものの、そうではなく、「お金がないから産めない」事態に陥っている世帯が少なくありません。
総務省『家計調査(二人以上の世帯)2025年(令和7年)5月分』によると、勤労者世帯の実収入は1世帯あたり平均「52万2,318円」。前年同月比で実質0.4%増加しています。一方の消費支出の平均は「35万1,466円」。こちらは前年同月比で実質6.1%増加しています。
さらに勤労者世帯の消費支出の内訳を見てみると、食費が9万7,575円ともっとも大きなウエイトを占めており、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の非消費支出(税金や社会保険料など)は12万1,005円となっています。
約52万円の収入に、約35万円の支出。この数字だけで言えば豊かに暮らせそうに見えますが、現実はそう簡単な話ではありません。
31歳男性の悲鳴「余っているお金なんてないんです」
田中さん(31歳・男性/仮名)。月の収入は35万円、手取りは28万円です。奥様の月収は25万円、手取りは20万円ほど。自由に使えるお金は合わせて月48万円。資産は現金のみ、計200万円程度を銀行に預けています。
2人が暮らすのは、都内1LDK、月10万円の3階建てマンションの一室です。月の食費は8万円と、こちらも平均的な数値。一定額は貯蓄にまわせそうな収支ですが、「家計は厳しい」と語ります。なぜでしょうか。
「毎月、ざっと30万円以上は支出として消えています。残るのは10〜20万円ですが、教育資金を貯めたいんです。ネットで調べてみたら『1,000万円は貯めるべき』と書かれていました」
「子どもが生まれ、妻の収入は実質的になくなりますが…」
田中家には、実は来年子どもが生まれる予定です。奥様は現在妊娠3ヵ月で、今のところは在宅で勤務していますが、数ヵ月もすれば産休・育休に入ります。幼稚園に入るまでは仕事をせず、子育てに専念したい、というのは夫婦の総意でした。
「実質的に妻の収入はなくなるので、僕の『28万円』のなかでやり繰りしなければならない。今のうちに貯められるだけ貯めなきゃ、と焦っています。我が子には、大学までは通わせてあげたい。習い事だって塾だって行かせてあげたい。余っているお金なんてないんです」
給料がこの先今のまま変わらない……とは考えたくないものですが、たとえば学習塾だけを見ても、恐ろしい負担額であることがわかります。
“学習塾費用は年々増加傾向にあります。中学校の学習塾費用はバブル崩壊後の1994年、14万5540円でしたが、2000年には16万2357円と、2万円ほどアップ。そして2018年には20万2965円と、四半世紀あまりで3割増しといった状況です。
高校での学習塾費用は中学校のときほどではありませんが、1994年では7万4202円だったのが、2018年には10万6884円と、3万円ほど増加しています。”(関連記事『会社員、年収減も「学習塾費用3割増」天井知らずの教育費にため息』)
「平均収入・平均支出の暮らしぶり」の悲痛
『民間給与実態統計調査』(国税庁・令和5年)を見ると、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均額は460万円(男性569万円、女性316万円)です。内訳としては、平均給料・手当が388万円(男性476万円、女性272万円)で、平均賞与は71万円(男性92万円、女性44万円)となっています。
1人当たりの平均給与を年齢階層別にみると、男性では60歳未満までは年齢が高くなるにしたがい平均給与も高くなり、55~59歳の階層が最も高い給与を受け取る傾向にあります。
収入格差が深刻化する日本社会。「平均収入・平均支出」はそれぞれ約52万円、35万円ですが、実はボリュームゾーンにあたるのは年収「300万円超400万円以下」(825万人)の方々。さらに厳しい収入で日々を過ごす方が少なくないのです。
「お給料が上がれば…」という仮定のもとの人生設計・資産形成はキケンそのもの。自身の収支を冷静に直視し、「よりよく生きる」ことが求められていますが、日本人の給与額には、あまりにも厳しい現状が表れています。

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