映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

【動画】「ババンババンバンバンパイア」予告編

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

今週末7月4日(金)から吉沢亮主演作「ババンババンバンバンパイア」が公開されました。

タイトルが読みにくい作品ですが、本作は「銭湯を営んでいる家に住み込みで働いているバンパイアの話」。原作者によれば、ドリフターズの楽曲「ドリフのビバノン音頭」「いい湯だな」のフレーズを引用して生み出したそうです。

本作で注目したいのは、当初は「2月14日(金)公開予定」だったものが公開延期になっていたこと。この公開時期のズレがどのように作用するのかです。

そもそも本プロジェクトは、2024年の2月29日(にんにくの日)に「実写映画化:2025年公開&テレビアニメ化:2025年放送」が同時に発表されていました。

ところが映画版が公開延期となり、その一方でテレビアニメ版の方は予定通り25年1月11日からの放送となってしまったのです。

通常は公開延期に見舞われた作品の興行収入は振るわないことが多いのですが、本作では公開延期がプラスに働く面が出てきています。

それは、同じく吉沢亮主演作である「国宝」の影響がプラスに働くであろうからです。

6月6日に公開された「国宝」は力作であるため製作費が高く、上映時間の長さも含めて、私は「劇場公開だけでリクープが見込める興行収入30億円までは厳しいのでは」と想定していました。

ところがかなり早い段階で「確変」が起こって、興行収入30億円を余裕で飛び越えたのです!

私が「その要因」として考えたのが、次の2つのポイント。

1つ目は日本の伝統芸能である「歌舞伎」というコンテンツが持つ潜在能力の開花。

私は未だに「歌舞伎」というコンテンツにハマりきれていないのですが、「歌舞伎」には一定のファン層がいて、この層がどのくらいまで広がるのかという点で、私の想定以上の効果が出ているようです。

伸び悩んでいた「シネマ歌舞伎」や、実際の「歌舞伎」へと流れる観客の動きが、「国宝」によって顕著になってきたりと、「歌舞伎」というコンテンツの潜在能力が上昇しているのです。

2つ目は、「国宝」では上映時間の長さに反して、個人的には「脚本」が弱い印象がありましたが、想像力に長けている「BL&ブロマンスファン」のF1層(20才〜34才)を中心とした女性に届いたようなのです。

このファン層に広くウケることは容易ではないですが、味方につけることができると、興行収入において大きなポジティブ要因になることが多いのです。直近の事例で言うと、7月12日にフジテレビで地上波放送される「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」。想定外の確変が起こって興行収入32.2億円を記録しました。

いずれにしても、想定を遥かに超えた現象を「国宝」が生み出したことで、「ババンババンバンバンパイア」に追い風が吹いてきたのです。

ババンババンバンバンパイア」は、KDDI「au三太郎」シリーズなどを手がけるCMクリエイターの浜崎慎治監督の長編映画第二弾となっています。

第一弾は、2020年3月20日公開の「一度死んでみた」で、私は好きな作品でした。

ただ、公開日からもわかるように、まさに新型コロナウイルスが直撃したタイミングで、興行収入は4.67億円で終わっています。

ちなみに「一度死んでみた」「ババンババンバンバンパイア」では、吉沢亮堤真一の共演が共通しています。

ババンババンバンバンパイア」を見て思ったのは、「意外としっかりと作られていて、これは制作費が高めでは?」ということでした。

それこそCMのように、しっかりと作り込まれている印象です。

演技も良いですし、物語も面白いです。

笑いを誘うシーンが多く、本作は典型的なコメディ映画です。

そのため本作の興行のカギとなるのは、どこまで笑いがウケるのか、ということでしょう。

少しだけ気になるのは、意外と私は笑っていなかったかも?ということ。ただ、決して作品の作りがユルくて「こんなヘタな演出では笑えない」というような感じではなく、演出はしっかり精緻に出来ていると思います。

なので、通常ならずっとニヤニヤして見ているイメージなのですが、意外とそうならなかったのが唯一の不安要素としてあります(単にその日の体調的な問題だったような気もしますが…)。

「国宝」のメガヒットによって吉沢亮に対する世の中の印象が極めて良い環境で「ババンババンバンバンパイア」はどこまで高く飛べるのか?

原作マンガがあるため、おそらく本作がヒットすれば続編も作られる予感がします。

まずは「国宝」の良い流れを受け、興行収入10億円を突破できるのか注目したいと思います。

「ババンババンバンバンパイア」(公開中) (C)2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 (C)奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022