
たとえ仲の良い友人でも、意外と知らないのが本当の懐事情。「お金がなくて大変」……こんなことをいつも言っていても、その裏に意外な事実が隠れていることも。見ていきましょう。
大学時代からの友人、「お金がない」が口癖だったが……
田中みかこさん(仮名・35歳)は、会社員の夫と小学生の息子2人と、関東近郊で4人暮らし。夫の年収は約600万円、田中さん自身は時短勤務で年収300万円ほど。世帯収入はそれほど低くはないものの、子どもの習い事やレジャーなど日々の出費がかさみ、思うように貯金ができないことが悩みです。
田中さんの大学時代からの友人の1人が、佐野かなさん(仮名)。偶然にも結婚や出産の時期が重なり、定期的に会ってきた間柄です。
佐野さんは学生時代から「お金がない」が口癖でした。ひとり親家庭だと話し、アルバイトを掛け持ちし、奨学金を借りて大学へ通う佐野さんの姿を見てきた田中さんは、「少し多く負担する」ことが当たり前のようになっていたといいます。
たとえば、お酒は1杯だけしか飲めない田中さんに対して、お酒の強い佐野さん。それでも飲み代はいつも同じ額を出し、給料日には「今日は私が出すよ」と奢ることも。さらに、誕生日にはプレゼントを奮発するなど、恩着せがましい気持ちはなく、自然とそうしていたのだといいます。
結婚後も佐野さんは「お金がない」「母の面倒も見なくちゃいけないし」と口にしていました。だからこそ、少し多めに出す関係性も、そのまま続いていました。
ところが、しばらく会えない期間が続いた後に、再会したときのこと。佐野さんの口から告げられたひと言が、田中さんを驚かせます。
「実は、とうとう家を買ったんだよね」
友人の告白に衝撃
田中さんは耳を疑いました。あれほどお金がないと言っていたのに?
佐野さんによれば、購入したのはそれまで住んでいた街にある4,500万円ほどの築浅マンション。頭金を1,000万円用意し、無理のないローン返済計画をたてたとのこと。しかし、口にこそ出しませんでしたが、心の中で田中さんはこう思ったと言います。
『お金がないっていう言葉、ずっと真に受けてたんだけど……違ったんだ』
自分自身も家を買いたいと思いながら、子ども2人を育てながらの生活で、なかなか実現できない田中さん。まさか佐野さんにそんな余裕があるとは思いもしていなかったのです。
「お金はないんだよ、本当にずっと節約してきたんだから。でも、ごめんね。先に買っちゃって」
少し焦ったようにフォローする佐野さん。住宅ローンを抱えている以上、買っただけで「勝ち」にはなりませんが、その言葉に、田中さんは内心ぬぐい切れない苛立ちを感じたといいます。
都合よく使われていた……?友人関係も変化
お金がないという言葉を真に受け、自分はこれまでどれだけ多く負担することを当たり前としてきたのだろうか――。
「細かい収入も知りませんし、いつ彼女の家計に余裕ができたのかわかりません。学生時代の『お金がない』は嘘だったとは思えません。でも状況が変わったなら、『もう多めに出さなくていい』と言う機会はいくらでもありましたよね。習慣化していた私も悪いんですが、都合よく使われていた気持ちがぬぐえなくて。あれ以来会うのをためらっています」
しかし、得たものもあったとも言います。
「人の言う『お金がない』を額面通りに受け取ってはいけないということ。片方に金銭的負担が偏るような付き合いをしてはいけないことが身に沁みました。次に会うとしたら、自分の分だけキッチリ払おうと思います(笑)。それと、私の「家が欲しい」には行動が伴っていなかったことも自覚して、今は全力で節約に励んでいます。本気でお金に向き合うことができるようになったことには感謝ですね」
「お金がない」という言葉に惑わされない
「お金がない」という人は、大きく2種類に分けられます。ひとつは、実際にお金がなくて本当に生活が苦しい人。もうひとつは、貯蓄を優先していて日常的に自由に使えるお金が少ないだけの人です。
後者のタイプは、節約のためにお金を使わないことを「お金がない」と表現する傾向があり、周囲もつい「この人は経済的に厳しいんだ」と受け止めがちです。しかし実際には、堅実に貯蓄を続けていたり、将来に向けた準備を着々と進めていたりすることも珍しくありません。
そのようなタイプの人の実態は、普段の会話では見えてこなくても、「家の購入」や「子どもの私立進学」など、人生の大きな節目で表面化します。
田中さんのように、「お金がない」という言葉を真に受けて金銭的に多く負担してきた立場からすれば、その事実を知ったときの驚きや戸惑いは大きいもの。お金がないという言葉を盾に相手に甘えるような姿勢は、考えものと言えるでしょう。
ただ、本当にしっかりした人ほど、他人に見せびらかすことなく、静かに、こっそりとお金を貯めているものです。「お金がない」という言葉に惑わされず、自分自身のお金の価値観を大切にしていくことが大切だといえるでしょう。

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