
なぜか足だけが鮮やかな青色なのである。その動きもゆっくりでユーモラス。だもんだから絶滅の危機に瀕しちゃっている ガラパゴス諸島などに分布するアオアシカツオドリだ。
英語名が「ブルーフッテド・ブービー(Blue-footed booby)」である。ブービーは英語の俗称で乳房のことを意味するので、そういった意味でも注目の鳥なんだ。
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アオアシカツオドリとは?
アオアシカツオドリ(学名:Sula nebouxii)は、全長約80cm(76〜84cm)、翼を広げると約152cmに達するカツオドリ目カツオドリ科に属する鳥だ。寿命はおよそ17年程度。
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メスのほうがわずかに大きいのが特徴で、チャールズ・ダーウィンが進化論の研究を行ったガラパゴス諸島の象徴的な鳥としても知られ、その姿は絵はがきや写真でおなじみである。
Sula nebouxii nebouxii (基亜種)
メキシコからペルーにかけての太平洋沿岸に分布。Sula nebouxii excisa (ガラパゴスアオアシカツオドリ)
ガラパゴス諸島の固有亜種。ガラパゴス諸島に生息する3種のカツオドリ科の中の1種でガラパゴス諸島に広く分布する。わずかに大きく羽に艶がある

なぜ青い足をしているのか?
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なんでこんなキュートなブルーの色をしているのかというと餌となる魚に含まれるカロテノイド色素と皮膚の仕組みによって生まれる。
カロテノイドはもともと赤や黄色の色素だが、アオアシカツオドリの足では皮膚の奥にあるコラーゲンの構造(皮膚の組織の並び方や層の形)が光の反射を変えることで、青く見えるようになるのだ。

この青い足の色は、健康のしるしでもある。
体の調子が良く、十分に栄養が取れている個体ほど足の色が鮮やかで、逆に体調が悪いと色がくすんでしまう。
そのため、きれいな青色のオスほどよくモテる。
オスは青い足を誇らしげに見せてメスにアピールし、メスは足の青さでオスの健康状態を見分けてパートナーを選ぶのだ。
また、メスの足の青さも卵の質や子育ての良し悪しに関わっていると考えられている。

アオアシカツオドリの求愛行動
アオアシカツオドリのオスは、鮮やかな青い足を強調する独特の求愛ダンスでメスにアピールする。
このダンスは「フットウェービング」と呼ばれ、オスが交互に足を高く持ち上げて見せつけるように歩くのが特徴だ。
青い足の色はオスの健康状態や栄養状態を示すサインであり、メスはこの足の鮮やかさを見て相手を選ぶといわれている。
求愛の際、オスは足を見せるだけでなく、首を空に向けて伸ばし、くちばしを高く掲げる「スカイポイント」という姿勢もとる。
このときオスは翼を広げたり、口を開けて声を出したりしながら、さらに自分を大きく見せようとする。
こうした求愛行動は、パートナーを引きつけるだけでなく、すでにペアになった相手との絆を深める役割も果たしている。
繁殖期の間、オスは繰り返しこのダンスを行い、メスとの関係を維持しようとするのだ。
繁殖と子育て
アオアシカツオドリは、一度に2〜3個(まれに1個)の卵を産み、約41〜45日かけてヒナが孵化する。
特徴的なのは、卵が同時ではなく順番に孵化することで、先に生まれたヒナが後に生まれたヒナに比べて体が大きくなりやすく、有利な立場になる点だ。

環境に恵まれ、餌が豊富なときは、親鳥は複数のヒナを育てることができる。しかし、餌が不足すると、先に孵ったヒナが後のヒナを押しのけ、結果として一部のヒナが生き残れなくなることがある。
親鳥はヒナ同士の争いに直接手を出さず、間接的にヒナの生き残りに影響を与えている。
また、オスとメスでは体の大きさに違いがあり、オスは小柄で動きが素早いため浅瀬で効率よく餌を集め、メスは体が大きく、より多くの餌を運ぶことができる。
特に育児の後期では、メスが重要な役割を担う。ヒナ同士の競争を通じた自然な選択は、限られた資源の中で生き抜くための工夫であり、過酷な自然環境に適応した子育てのかたちといえるだろう。

餌の不足で個体数が減少
アオアシカツオドリの個体数は、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは「低懸念」と評価されており、現時点では絶滅の危機にあるとはされていない。
しかし、地域によっては個体数の減少が確認されているのも事実である。

とくにガラパゴス諸島では、過去に比べて繁殖ペアの数が減少しており、その主な原因として餌となる小魚の減少が指摘されている。

アオアシカツオドリは主にイワシなどの小魚を捕食するが、近年の気候変動による海水温の上昇やエルニーニョ現象の影響で、これらの魚の数が減少し、十分な栄養を得られない個体が増えているのだ。
さらに、漁業による間接的な影響も要因の1つだ。
今後の個体数への影響が懸念されている。このため、ガラパゴス諸島をはじめとする関係当局ではモニタリングを強化し、保護対策に取り組んでいる。

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