
6月26日、東京都・渋谷PARCOにて「DEATH STRANDING WORLD STRAND TOUR 2 in Tokyo」が開かれた。
同イベントは、PlayStation 5(PS5)用ソフト『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』(デススト2)の発売に際して行われた記念トークショーだ。当日は開発を手掛けたコジマプロダクションの小島監督こと小島秀夫氏をはじめ、主人公「サム・ポーター・ブリッジズ」(サム)の日本語音声を担当した津田健次郎氏や、映画監督の押井守氏らが登壇。ゲスト陣を交えたトークコーナーにはじまり、イベント参加者の疑問に小島氏が自ら意見を述べるQ&Aセッションも開かれた。
本稿では、イベント開始前に実施された小島氏のメディア向け合同インタビューの模様を抜粋してお届けする。なお、本文は形式上ゲーム情報のネタバレが含まれている。未プレイの読者はあらかじめ留意いただけると幸いだ。
■“人生最大のピンチ”を乗り越えて完成させた『デススト2』
合同インタビュー前半では、前作『DEATH STRANDING』から約4年半を経て『デススト2』を発売した現在の心境が語られた。小島氏はまず「大病を患ったこともあり、人生で一番のピンチだった」とコメント。イベント当日の時点でアーリーアクセス版が世界中でリリースされていたこともあり、「今までの発売日を迎える感じとは違う。もう遊んでくれている人が大勢いるので、そこは素直にうれしい」と語った。
また、小島氏は前作と『デススト2』で発売前の反響に違いがあった点にも言及。「『デススト』は『メタルギア』とは違う、これまでに類を見なかったゲームだった。だからこそ、あえて尖らせることにこだわった」と話した。小島氏によると、「『デススト』はこの5年間で2000万人以上のプレイヤーに遊ばれた」とのこと。ゆえに『デススト2』では前作の良さを踏襲しつつ、テンポ感やシステムをブラッシュアップさせることに注力したようだ。
加えて、『デススト』と『デススト2』では”サムを取り巻く人間模様”が大きく変わっていると言う。前作の主要人物はおおむね3~4人ほどだったのに対し、『デススト2』は登場人物がボリュームアップ。「トゥモロウ」(演:エル・ファニング/声:若山詩音)や「レイニー」(演・声:忽那汐里)といった新キャラクターとの交流だけでなく、“集団の中で味わう孤独感”のような複雑な心情にもフォーカスしているようだ。
演出面について聞かれた小島氏は、「マゼラン号(拠点)に帰るたび、いろいろな人間ドラマを見ることができる。制作時は相応の苦労もあったが、なんとか完成したので楽しんでもらえれば」とコメント。さらに、「今回は、サムが涙を流すシーンがいくつか入っている。そのたびにサム役のノーマン・リーダスに泣いてもらったが、朝イチで泣いてもらったときは少しムッとされた」という微笑ましい開発エピソードも飛び出した。
■自らの手で選ぶことの大切さを感じ取ってほしい(小島氏)
インタビュー後半では、『デススト2』の作品コンセプトにも通じる“他者との繋がり”について、小島氏の意見が語られた。
本作の開発中に新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックを経験したことで、「繋がり過ぎることも良くないのでは?」と感じた小島氏。いわく、「デジタル技術に誘導されてばかりいると、いつの間にか生活が定型化してしまう。テクノロジーを否定する気はないが、自ら選択することが大事」とのこと。そうした自身の考えを、『デススト2』内であるキャラクターに代弁させていると述べた。
また、「繋がり過ぎている世界において、デジタルではない身体性はどのように考えている?」と聞かれた小島氏は、「人生には偶然がもたらす選択が必要」だと言及。やや抽象的な話題であると前置きを入れつつ、「人間は肉体と心を生まれながらに持っている。生きていく上で肉体の移動が大事だが、コロナ禍ではそこが失われていた」と答えた。続けて、「対面で誰かに会う。実際に移動して何かをすることが、偶然性を帯びて人生を彩ってくれる」とし、『デススト2』を遊びながらいろいろ考えてほしいと語った。
壮大なスケールで描かれるサムの旅路をはじめ、プレイヤーの感情を揺さぶるカットシーンや随所に散らばった小ネタまで、総監督として『デススト2』のクリエイティブに携わってきた小島氏。合同インタビューの最後では、「まずは難しく考えず、エンタメとして遊んでいただきたい。繋がるとはどういうことなのか。いろいろな遊び方を試してもらいつつ、日常に落とし込んで考えてもらえれば」と回答。「身体が動く限り頑張りたい。いまのところは死ぬまでゲームを作り続けるつもり」と今後に向けた意気込みを表明した。
PS5用ソフト『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』は、6月26日より全世界向けに発売中だ。
(文=龍田優貴)

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