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先代5ドアハッチバックの6速MTは名車

最近のホンダ話、その続きです。前回はフリードアコードについて書かせて頂いたが、今回はその次にお借りしたシビックから稿を進めたい。3台とも約1週間ずつ取材を行った。

【画像】どちらもスポーティ!今回取材したホンダ・シビックとアコード 全51枚

今回お借りしたシビックは、『e:HEV EX』と呼ばれる2L直列4気筒+2モーターのハイブリッドモデル。同じパワーユニットで『e:HEV LX』というグレードがあり、1.5L直列4気筒ターボを搭載する『LX』、『EX』、『RS』の3グレードを合わせた計5モデルが発売されている。RSは6速MTでタイプR風のルックスを持つ、BMWにおけるMスポーツのようなモデルだ。ボディは5ドアハッチバックのみとなる。

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今回取材したホンダシビックe;HEV EX。試乗会で乗れなかったハイブリッドを選択。    平井大

2017年に発売された先代10代目シビックは、5ドアハッチバックが英国生産、4ドアセダン日本国内生産だったが、ご存知のように2021年で英国工場は閉鎖されてしまった。そこで2021年に登場した現行11代目シビックの国内販売は5ドアハッチバックのみとなり、埼玉県寄居町にある工場で生産されている。なお、北米市場でメインとなる4ドアセダンカナダ工場生産だ。

個人的に先代5ドアハッチバックに用意された6速MTは名車だと思っていて、当時のカー・マガジンで私は『欧州車の香りが漂う良車』と書いている。その系譜は現在もRSがしっかりと受け継ぎ、試乗会で「これはよい……」と感心してしまった。なのでもう1回乗ってみたい気持ちもあったが、試乗会では触れることのできなかったハイブリッドを優先した次第だ。

同系統のパワーユニットをひとまわり小さいボディに搭載

前回アコードの印象を『自分が思っているよりも1~2割は速く走っている』と書いたが、シビックは同系統のパワーユニットをひとまわり小さいボディに搭載しているため、速さはそれ以上だった。ここで簡単にスペックを比較しておこう。

アコードe:HEV
全長×全幅×全高:4975×1860×1450mm
ホイールベース:2830mm
車両重量:1580kg
最高出力(エンジン/モーター):147ps/184ps
最大トルク(エンジン/モーター):18.6kg-m/34.2kg-m

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本国内は5ドアハッチバックのみを販売。生産は埼玉の工場で行われる。    平井大

シビックe:HEV EX
全長×全幅×全高:4560×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車両重量:1490kg
最高出力(エンジン/モーター):141ps/184ps
最大トルク(エンジン/モーター):18.6kg-m/34.1kg-m

ちなみにボア、ストローク値も含めて排気量1993cc、圧縮比13.9は全く同じということで、ほぼ同じパワーユニットで90kg軽いシビックの走りがいいのは、当然と言える。

ボディサイズも静岡県東部の自宅周辺ではちょうどよく、伊豆縦貫道を走っていて、箱根から帰ってきた? あるいは今から向かう? と思しき現行シビックをよく見かけるのは、偶然ではないかもしれない。

また、美点も気になる点もアコードと似ていたのが興味深い。簡単に書けば、前者はハイブリッドがもたらす走行フィーリングなど、後者はスポーティがゆえに街中で少しドタバタする乗り心地、そしてシート座面が薄いのかすぐに疲れてしまうところなどだ。

しかし偶然にも、先にお借りしたフリードと同じボディカラー、シーベットブルーパールが好みだったこと、リアシートやラゲッジスペースが広くいいパッケージだと思ったこと、そしてやはり『シビック』であることが何だか嬉しくて、自宅の駐車場を見ながらニヤニヤしてしまった。

車両価格430万7600円、広報車の仕様で445万6100円というスペックシートを見て意気消沈してしまったことは正直に書いておくが、その『価値』については後述することにしよう。

レッツ、ハンズオフ!

この3台を取材することが決まったあとに、偶然にもアコード試乗会の案内が届いた。その内容は、ホンダ量販モデル初のハンズオフ機能を搭載した追加グレード『e:HEVホンダセンシング360+』を体験するというもの。

ハンズオフ、つまり一定条件で運転中に手を放すことができるわけだが、今回は開発担当エンジニア氏同乗の元、高速道路で体験することができた。

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ンダの量産モデル初となるハンズオフ機能を搭載。走行条件が整うと、ステアリングのイルミネーションが青になる(写真はイメージです。安全のため撮影時はステアリングを握っています)。    AUTOCAR JAPAN

走行中に条件が整うとステアリングホイールのイルミネーションが青になり、そこで速度を設定すれば、そのままハンズオフが可能になる。表示がわかりやすいのと、使用するかどうかがドライバーに委ねられているのがポイントだ。

ハンズオフ走行中は、いくつか感心した制御があった。

まず、前に遅いクルマがいるとモニターと音で知らせてくれるので、ステアリングのスイッチでOKをすると、後方の安全を確認したうえで自動的に車線変更できたことだ。変更後に元の車線へ戻りはしないので、そこはドライバーの意志で戻るかを決める。

また、ナビ(グーグルマップ)で目的地を設定した場合、降りるインターチェンジ近くで車線変更を促し、OKをすると同様に車線変更。インターチェンジ手前でも表示がでるので、OKをすると自動的に車線を変更して降りてくれる。

他にも走行中、横に大型車が走行する場合は車線内での走行位置を調整する機能、ドライバーの異常を感知し安全な場所に駐車できる機能など、書くべき話はたくさんあるが、とにかく一連の動きが実にスムーズで、この手の自動運転にありがちな不自然さを感じなかったことを強調したい。聞けば、日本中の高速道路でテストを重ねたそうで、その労力が並大抵ではないことは容易に想像ができるのだ。

ホンダらしさとは?

ここで、前回書いたホンダの『2050年までに全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルと、交通事故死者ゼロを実現するという目標達成』、そして前段で書いたシビックの価格価値に繋がってくる。

今回の『アコードe:HEVホンダセンシング360+』は599万9400円で、ハンズオフ機能のない『アコードe:HEV』は559万9000円と、約40万円の価格差がある。今回の試乗を体験するとこの40万円は高く感じないが、とはいえ、乗り出し価格600万円以上となれば輸入車でも選択肢は増えてくる。

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試乗車の『アコードe:HEVホンダセンシング360+』。約600万円の価格をどう捉えるか。    平井大

しかし、2050年を見据えた前提を考えると、これは必要なプロセスと考えるのが自然だろう。販売台数が圧倒的に多いとはいえ、北米だけでは不十分ということだ。そういった複合的な背景を見ていくと、現行アコードの立ち位置も合点がいく。そして『ミニ・アコード』といえるシビックも、同じ方向を向いているように感じるのだ。

しかし、それで終わらないのがホンダが面白いところで、どのクルマもどこかスポーティなのである。足まわりは若干硬めで乗り心地が……という場面もあるが、ハンドリングはクイック気味で、アコードシビックも走らせるのが楽しいのだ。

試乗会で別のエンジニア氏も、ホンダとして求められる走りやハンドリングはしっかりと実現したうえで、乗り心地を出していると話してくれた。また、そんな話を広報担当者としていたところ、ホンダのエンジニアにはスポーティであることが前提だと思っている節があり、資料で謳っていなくても、自然とスポーティになっていることがあるとのことだった。

これにはなるほど! と思わず膝を叩く気持ちになった。2050年の目標がありそこに向かってはいるが、M・M思想やスポーティさというDNAも持ち続けているのが、『ホンダらしさ』ということなのだろう。そう気がついた瞬間、俄然、現在のホンダに興味が沸いてきたのであった。


最近のホンダってどうですか?(シビック&アコード・ハンズオフ編)【新米編集長コラム#37】