労働時間短縮や有給休暇の取得促進といった、労働環境の改善を目指す企業に支給される「働き方改革推進支援助成金」。福利厚生が向上し、事業改善にも有効なため、特に中小企業におすすめの制度です。『漫画と図解でわかる 会社をグンと成長させる方法 その悩み、助成金が解決してくれます!』(KADOKAWA)より、著者の藤井貴子社労士が解説します。

働き方改革に取り組むための助成金

労働環境の改善を目指す企業を支援する制度に「働き方改革推進支援助成金」があります。この助成金は、労働時間短縮や有給休暇の取得促進、職場環境の向上など、従業員の働きやすさを追求するさまざまな取り組みに対して助成金を提供します

この助成金の特徴として、以下の点が挙げられます。

●高い助成額

中小企業の場合、最大5分の4までの補助率

●多様なコース

企業の課題に応じた複数のコースが設定されている

●幅広い対象

パートやアルバイトなど、さまざまな雇用形態が対象になる場合がある

申請の対象となるのが、就業規則に特定の休暇制度が導入されていない場合や、36協定の時間外労働の上限が60時間を超えている場合などです。学生や親族でも労働者として働いていれば対象になりますが、業務委託契約の従業員は対象外です。

有給の計画付与制度導入で上限25万円アップも可能

コースには主に次のようなものがあります。

●労働時間短縮・年休促進支援コース

従業員の労働時間短縮や有給休暇取得を促進するための取り組みを支援

●勤務間インターバル導入コース

労働者の健康維持のために勤務間インターバル制度を導入する企業を支援

●団体推進コース

業界や地域単位での働き方改革を推進する取り組みを支援

企業が直面する多様な課題に対応するよう設計されており、企業ごとに最適なものを選ぶことができるため、人気が高い制度です。

●労働時間短縮・年休促進支援コース

特に人気があるのは、「労働時間短縮・年休促進支援コース」です。このコースは、全業種の中小企業が対象で、従業員の労働時間を短縮し、年次有給休暇の取得を促進する取り組みを支援することを目的としています。200万円の設備投資に対して最大5分の4、つまり160万円が助成されるので、特に中小企業にとっては、事業改善や従業員の福利厚生の向上に役立つ制度です。

申請の際には、以下のいずれかの取り組みを新たに導入する必要があります。

・年次有給休暇の計画付与制度の導入

・年次有給休暇の時間単位制度の導入

・特別休暇制度(ボランティア休暇、病気休暇、教育訓練休暇、不妊治療休暇など)の導入

・36協定の時間外労働上限時間の短縮

年次有給休暇の計画付与制度を新たに導入することで、助成金の上限が25万円増加します。年次有給休暇を時間単位で取得できる制度を導入し、さらに特別休暇制度を追加することで、25万円加算されます。

また、36協定の時間外労働上限を80時間超から60時間以下に引き下げることで、最大150万円受給できます。

助成金を活用した3社の事例

たとえば、A社では、従業員が有給休暇を取得しやすくするために、毎年3日間の有給休暇を会社が指定して取得させる計画付与制度を就業規則に追加しました。この取り組みにより、従業員の休暇取得率が上昇し、助成金も活用できました。

B社では、従業員が1時間単位で有給休暇を取得できる制度を導入。また、特別休暇としてボランティア休暇を新設し、地域社会への貢献活動を推進しました。この結果、従業員の満足度が向上し、助成金の活用で初期費用を大幅に削減できました。

C社では、従業員の負担を軽減するために、業務フローを見直し、時間外労働を月45時間以内に抑える取り組みを行いました。その結果、助成金を活用して業務改善システムを導入することができました。

設備投資費用の助成率、賃金引き上げで加算も

助成金は、設備投資費用の一定割合が助成されます。通常の助成率は4分の3ですが、以下の場合は5分の4に引き上げられます。

労働者が30人以下の中小企業である

・設備投資額が30万円を超える

・支給対象の取り組みがある

さらに、従業員の賃金を引き上げることで、助成金が加算されます。

毎年一つずつの取り組みがおすすめ

取り組みは毎年一つずつ行うことがお勧めです。すべての取り組みを同じ年に実施すると、翌年以降は同じ助成金を受けられなくなります。就業規則にすでに制度が導入されている場合、助成金の対象外になる可能性があるため、制度の有無を確認することが重要です。

藤井 貴子

ノエル社会保険労務士事務所

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)