
この記事をまとめると
■ベトナムのブランド別新車販売台数のトップは地元メーカーのビンファストだ
■ビンファスト車はタクシーやライドシェアなどの旅客輸送車両としての販売が目立つ
ベトナムでは国産車となるビンファスト強し
報道によると、VAMA(ベトナム自動車工業会)加盟メーカー内における、2024暦年締め(2024年1~12月)でのブランド別年間新車販売台数では、レクサスブランドを含んだトヨタが6万8128台でトップとなった。しかし、ベトナム国内では、地元メーカーのビンファストや韓国ヒョンデはVAMA非加盟となっており、この非加盟ブランドも合算すると、ビンファストが8万7000台を納車(販売ではない)し、ベトナム国内においてブランド別新車販売台数トップという扱いになっている。
しかし、これはあくまで販売統計上トップになったという話といっていいだろう。筆者は2025年6月中旬にベトナムの首都ハノイを訪れた。ホーチミンは過去訪れたことがあるのだが、7年ぶりのベトナムということで、ワクワクしながらノイバイ空港からタクシーにてハノイ市中心部をめざすと、道を走るクルマのなかにかなり多くビンファスト車を見ることができ驚いた。
しかし、よく見るとまずタクシーが目立つことに気がつき、行灯や派手なボディカラーやラッピングが施されていない、一般乗用車のように見えるビンファスト車も、ナンバープレートが黄色地に黒文字、つまりベトナムでの旅客輸送車両のナンバープレートをつけてるものが大半であった。つまり、ライドシェアなど旅客輸送登録車両だったのである。地元の報道を見ても、自国ブランドの販売トップを祝福しながらも、その成果の背景には、「過度なフリート販売があったことは否定できない」とするものが多かった。
ハノイ市中心部に近づくと、ビンファスト製BEV(バッテリー電気自動車)路線バスを見かけるようになった。やや明るいクリームソーダのような緑系のボディカラーのバスは、ビンファストを傘下にもつベトナムの地元コングロマリット(複合企業)となる「ビングループ」傘下の旅客運送事業者となる「ビンバス・エコロジー輸送サービス」が運行する車両となる。ハノイだけではなくベトナム国内、そしてインドネシアといった海外にもビングループは旅客輸送事業を展開し、そこで使用するビンファストのBEVとセットで進出を図っているのである。
ハノイ市内の路線バスはハノイ市交通局がバスの運行に関する事業計画や運営などを行うのだが、その運行実務は複数の民間事業者に委託されている。まだまだICE(内燃機関)バスが多く、筆者が利用したハノイ市中心部では、運賃は乗車時払いとなり、ICEタイプで1万ドン(約56円)、BEVタイプで1.2万ドン(約67円/路線によっては1万ドンだった)であった。
なかなかユニークともいえたのが、BEVとなるビンファストのバス車両であっても、とにかく路線バス全路線で運転士のみのワンマン運行ではなく、いわゆる車掌も同乗しているツーマン運行であったこと。バス停で乗りたい系統のバスが来るとドアが開くので、乗り込んで席に座ると車掌さんが料金の徴収にくるシステムとなっている。QRコードやクレジットカードなどはおろか、交通系ICカードといったキャッシュレス決済はなく、現金のみでの支払いとなっている(定期券は存在している)。
地下鉄はふたつの路線で高架部分のみ完成し部分開業している状況で、その高架部分の地下鉄に乗ること自体がハノイ観光の一部となっている状況で、交通系ICカードというものは存在していないようである。
バイクからバスや鉄道まで幅広く手がけるビングループ
ビンバスもいくつかの路線に限定して運行している状況であり、タイの首都バンコクのようにほぼほぼ走る路線バスがBEVということにもなっていない。ただ、2035年を目標に市内を走るバスすべての電動化をめざしているとのことであった。
ハノイはフランス統治下に都市設計された中心市街地のほか、新興市街地、さらに郊外の開発地域と都市化が拡大しているが、とくにフランス統治下の面影を感じる中心市街地における地下鉄工事は端で見ているだけでもかなり時間がかかりそうに見える。そのため、観光の足はライドシェアやタクシーというものもあるが、路線バスが観光だけではなく、市民の日常生活の移動手段でも重要となっており、路線網もかなり緻密なものとなっているので、全車両電動化による大気汚染や気候変動対策への効果はかなり期待できるといえるだろう。
「ビンバス」と呼ばれるビンファスト製BEVバスは、大型タイプと中型タイプが運行している。今後もBEVバスはビンファスト製一択となっていくのかは定かではないが、ベトナム国内では韓国ヒョンデの存在感も強いので、本格的な車両電動化が進んで行けば、ベトナム、韓国、そして中国あたりのBEVバスをハノイ市内で見かけることにもなるかもしれない。
海外ではビンファストといえば、乗用BEVに限定して展開しているのだが、ベトナム国内では乗用BEVのほかにバス、そしてICE(内燃機関)乗用車もラインアップしている。乗用BEVではタクシーなど業務用に使われているケースの目立つモデルも多いが、マイクロコンパクトSUV風BEVとなるVF3はほぼ個人ユースとしてかなり多く売れているし、ICEでは「Fadil」というSUV風コンパクトハッチバックがよく売れている。中心市街地を中心に道路が狭かったりするので、コンパクトなモデルが好まれるようである。
とはいうものの、VF8やVF9(ともにBEV)や、LUX系(ICE)といった大型モデルも見かけるので、意外なほどバランスよく売れているようにも見える。
また、電動バイクでもビンファスト車は多く走っており、ベトナム国内ではBEVだけではなくICEもあり、さらに電動バイクから大型バスまでラインアップする総合自動車メーカーとなっているのである。

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