小林誠司がここにきて、存在感を示し始めた(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲキ的球論」。今回は苦しい立場に追い込まれた巨人の捕手起用をクローズアップ。今後、巻き返しを図る意味でもベテラン捕手を起用すべきという。

 昨年リーグ覇者の巨人が苦しい戦いを続けている。

【動画】先発マスクをかぶった小林は気迫のヘッドスライディングを見せた

 7月6日の広島戦(東京ドーム)に2-3の逆転負け。1点リードの9回に出た大勢が広島打線につかまった。菊池涼介に中前への2点適時打を許し、逃げ切りに失敗。首位阪神とのゲーム差は8まで広がった。

 完全に勝ちゲームペースだった。先発赤星優志小林誠司とのバッテリーで8回途中2安打1失点と好投。バッテリーを組んだ小林は5回先頭の打席で左前打を記録、二死二塁からオコエ瑠偉が中前安打を放つと二塁から懸命に走り、ヘッドスライディングで生還と攻撃面でも存在感を示した。
 
 あと一歩のところで敗れたが、5回までわずか1安打ピッチング、3戦連続となる赤星ー小林のバッテリーの安定感も目立った試合となった。

 佐野氏は赤星をリードする小林に関して「特に注目に値する」と高く評価。

 現在チームでは小林、甲斐拓也岸田行倫の3捕手併用となっているが「僕の中では巨人捕手陣の中ですごく小林の評価が高かったんですね」とキッパリ。

 「リード面に関しては、ほかの捕手たちと比較しても小林が1番、投手の状態を見ながら、うまくリードできる捕手と思っています。ようやく日の目を見たなという気がします」と最近の活躍ぶりを喜ぶ。

 さらに配球の特徴に関しても言及。

 「配球が巧みというよりは、結構シンプルなんですよ。なので、投手は深く考えなくていい」としながら、効用もあると指摘。「そうすると投球テンポも良くなってくる。バッテリーの呼吸が合えば、投手も不安がない。投手は『自分の1番いい球を投げる』ということに集中できる利点もある」とした。

 投手にとってはリズム良く投げられることで「そうすればベースの上で強いボールを投げ込むことができますからね」と勢いがつくとした。

 実際に赤星は小林とバッテリーを組んだ3試合でわずか2失点と抜群の安定感を誇る。勝利した試合のお立ち台では「誠司さんと組んでみたかった」と発言。昨年は菅野智之とのバッテリー最多勝をマークした、ベテラン捕手への信頼度は日増しに高まっているようだ。

 首位の阪神とは8ゲーム差、先を見据えてもこれ以上は離されたくないところ。勝利を呼ぶ捕手起用も引き続き、注目ポイントとなりそうだ。

【さの・しげき】

1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。

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