
ソフトバンクは7月4日、アジアと米国を結ぶ国際海底ケーブル「E2A」の陸揚げ拠点を、北海道苫小牧市と福岡県糸島市に新設すると発表。総務省が推進する「国際海底ケーブルの多ルート化によるデジタルインフラ強靭化事業」に採択されたもので、陸揚げ拠点の地方分散により、国際通信網の強靭性とレジリエンスの強化を図る。
AIの普及に伴い国際データ通信量が急増し、安定した通信ネットワークの確保や災害時の通信途絶対策が重要課題となっている。政府は「デジタル田園都市国家構想」に基づき、デジタルインフラの強靭化と地方分散を推進。ソフトバンクも全国分散型インフラ構想のもと、千葉県の既存拠点に加え、苫小牧市と糸島市に新たな陸揚げ拠点を設け、国際通信網の強靭性とレジリエンスの向上を図る。
北海道と九州は、東京・大阪に集中するデジタルインフラを代替・補完する中核拠点として期待されており、特に苫小牧市と糸島市は、アジアと北米を結ぶ最適ルート上に位置し、既存拠点と距離があることから、リスク分散に適した地域とされる。
苫小牧市は北米との通信に地理的優位性があり、低遅延・高品質な通信が可能。AIや半導体、金融などの産業誘致や、建設中のAIデータセンターとの連携による経済効果も期待されている。
糸島市は東アジア地域との接続に適した立地で、国際通信ハブとしての機能強化が期待されている。多様な顧客へのサービス提供や半導体産業の集積による地域経済の活性化も期待されている。
E2Aの陸揚げ拠点新設は、ソフトバンクが進める次世代インフラ構想や災害時の事業継続計画(BCP)における重要な要素であり、持続可能な社会基盤の構築と地域振興への貢献をめざす。今後は、ケーブル敷設ルートや陸揚げ地点、設備仕様、建設スケジュールなどについて関係各所と調整を進め、地域社会との対話や環境・漁業への配慮を重視しながら、透明性のある情報公開と信頼関係の構築に取り組むとしている。
なお、E2Aは総延長約1万2,500kmの太平洋横断光海底ケーブルで、丸山(日本・千葉)、頭城(台湾)、釜山(韓国)、モロベイ(米国カリフォルニア州)への陸揚げが決まっており、アジアと北米の主要なデジタルハブ間を接続。高速かつ堅牢なバックボーンネットワークにより、太平洋地域におけるAIアプリケーションやデータセンター、クラウドサービスでの活用が可能となる。
(早川厚志)

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