
1995年から1999年にかけて4作品が製作され、誕生から30年経ったいまも根強い人気を誇る「学校の怪談」シリーズのBlu-ray化を記念して7月6日、池袋HUMAXシネマズにて上映会&舞台挨拶が開催。記念すべき第1作『学校の怪談』(95)の上映後に、主演の野村宏伸と平山秀幸監督、そして脚本を務めた奥寺佐渡子が登壇した。
【写真を見る】記念上映イベントはチケット即完売の大盛況!舞台挨拶では30年前の思い出話がいっぱい
当時小学生のあいだで大ブームとなっていた学校にまつわる“怖い話”をまとめた民俗学者の常光徹の同名児童小説シリーズや、日本民話の会によるコミックシリーズを原作とした「学校の怪談」シリーズ。第1作の舞台となるのは夏休み目前の小学校の旧校舎。忘れ物を取りに行ったまま戻ってこない妹のミカ(米沢史織)を探すアキ(遠山真澄)と、その同級生でいたずらっ子のケンスケ(熱田一)とショウタ(塚田純一郎)ら子どもたちは、旧校舎に閉じ込められ、そこでさまざまな怪奇現象に襲われていく。
7月16日(水)の発売に先駆け、今回行われたBlu-ray発売記念上映会のチケットは、発売開始と同時に即完売。公開当時と同じく35ミリのプリントでの上映という貴重な機会であり、野村と平山監督は大勢の観客と一緒に作品を鑑賞。登壇するや野村は「30年前と聞いて、もうそんなになるんだと懐かしみながら見ていました」と、平山監督は「封切り初日の挨拶のような不思議な感じがしています」と、それぞれ感慨深げに挨拶。ここからは、当時の思い出話や事前にX(旧Twitter)で集められた質問に答えるトークの模様をたっぷりとお伝えしていこう。
■「共通しているテーマは、“幽霊は友だち”」
ーースクリーンで観る『学校の怪談』はいかがでしたか?
野村「この大きなスクリーンで、あんなにアップになった自分の大きな顔を観るのはとても不思議な感じで、あらためて映画っていいなと感じました。いまはほとんどデジタルになっていますが、当時はまだフィルムで、時間にもお金にも余裕があって、セットの豪華さを感じながら贅沢な撮影で。やっぱり、(そういうものは)ずっと残っていく。そこがいいなとあらためて感じました」
平山「特撮ものという感じがあると思いますが、CGを使っているのはチョウチョが飛ぶカットだけなんです。あとは肉体労働を集めた合成カット。なのでいま観てみると、全編運動会のような感じがして。我ながら若かったというか、体力があったなと…(笑)」
奥寺「私はこの前、国立映画アーカイブで(自分の)子どもと一緒に観ました。自分が昔作った映画を劇場で、子どもと一緒に観られるという、こんなことが起こるのかとびっくりしました。あらためて観てみると本当に丁寧に作られている映画だとびっくりしました」
ーーチケットが即完売。ここまで『学校の怪談』が愛される魅力はどこにあると思いますか?
野村「これはジャンルで言うとホラーなんですかね?最近『学校の怪談』ファンだという30代40代の方にお会いする機会がよくあるのですが、演じたほうとしてはどこに彼らを惹きつける魅力があるのか正直わからないんです。私の演じた小向先生は、あまり先生っぽくなくて、どこにでもいそうなお兄さん。それがたまたま先生をやっていて、生徒と一緒に巻き込まれてしまう。頼りない先生ですけど、旧校舎のなかで子どもたちに慕われていくうちに自然と先生として作り上げられていく。こういう学校ものっていいなと、今日観てあらためて感じました」
平山「最初に企画をもらった時は、僕が子どもの頃に聞いていた怪談とはまったく違っていたんです。僕たちの子どもの頃は、怪談といえばお岩さんとかのお化けでしたが、これはかなりキャラクターが先行している話だった。そこで思ったのは、いろんなキャラクターが出てきてお化け屋敷で騒ぐ楽しさのあるテイストにしようと。僕と奥寺さんでシリーズ3本を作りましたが、共通しているテーマは“幽霊は友だち”。恨みつらみではなく、友達感覚に。怨念とかドロドロしたものは個人的に苦手ですし、それは大人でも子どもでも変わらない感情だろうと。そこだけは崩さずに、お化け屋敷のドタバタを作っていきました」
奥寺「私も、なぜここまで愛されるのかわからない部分もあったのですが、いま平山さんの話を聞いて、そういうとこなのかと腑に落ちました。テーマパーク的なところがあるから、いま観てもおもしろがってもらえるのかなという気がします」
■「子どもたちにとって、いい夏休みになってくれれば」
ーー「学校の怪談」シリーズといえば、生き生きとした子どもたちの演技が魅力ですね。
野村「私は現場ではあまり子どもたちと接していなかったと思います。嫌ってるとかじゃないですよ(笑)。あえてです。子どもたちは慣れ合っちゃうと、そこで緊張が緩んだりするので、ある程度の距離を保つようにしていました。でも皆さん『おはようございます』とか『おつかれさまでした』とか、とても礼儀正しくて」
平山「子どもたちはあっち行ったりこっち行ったりしていましたから、僕らがやることは枠をきちっと作ってあげて、そのなかでなら走っても転んでも泣いてもいいようにすること。あとはずるいやり方ですが、テストの時からカメラを回して、彼女ら彼らの普通の状態を見れればいいなと。でもとにかく言うことを聞かないんです(笑)。どこかスタッフが学校の先生みたいになってしまって、子どもたちも、この人は言うことを聞いてくれる、この人は怖いと見透かしている。だから子どもたちとの争いのようでもありました」
ーーオーディションは700人規模。決められたポイントは演技力よりも自然さだったのでしょうか?
平山「いろいろな選び方があるんですけれど、『学校の怪談』でいえば『おはようございます』と入ってくる子はみんな面接で落ちていた気がします。個人的には子どもたちにとっていい夏休みになってくれればと思っていたので、将来すごい俳優になるかどうかとかは気にしていませんでした。参加してくれた子どもたちの思い出になればそれで充分だという気持ちでやっていました」
ーー奥寺さんの書かれた子どもたちのセリフも自然体で、時にシュールで感動的で。1作目の「貯金好き?」などの名ゼリフはどのように生まれたのでしょうか?
奥寺「あんまり考えてなかったと思います(笑)。1作目の脚本を書いたのが26歳か27歳の頃で、まだ自分も子どもというか、中身が小学生だったので。それにデビューしてすぐということもあって、くだらないセリフを書いちゃダメという意識もなく、あまり考えずに自由に書いていましたね」
ーーもしいま、リメイクや続編をやるとしたらどういう作品にしますか?
平山「難しいですね…。最初に話をもらった時に、ホラーがまったくわからなかったので参考試写として『トリュフォーの思春期』を観たんです。もしそういうことがあるのならば、ベースはジュブナイル映画のかたちにして、その上にアクションやホラーめいたものを重ねていく点は変わらないんじゃないかと思います」
奥寺「私はやっぱり木造校舎が見たいなというのがあるんですけど、いま残っているのかなあ…」
野村「私は現代ではなく、昭和とか昔の時代。携帯のない時代のほうが話が膨らませられるのではないかと思います。でも今年で還暦なので、先生役はもう無理でしょう(笑)。なにになっているのか、近所のおじさんかもしれないし」
平山「お化けがいいんじゃないですかね?(笑)」
野村「いいですね(笑)」
■「“花子さん”はシリーズを象徴するお化け」
ーーXに寄せられた質問からです。皆さんの好きなシーン、思い入れのあるシーンは?
野村「私はもう、お化けと対面して叫ぶシーンですね。1作目も2作目もあそこに懸けていましたので。リハーサルやカメラアングルを決めて、1回目か2回目でOKになったぐらい気合い入れて叫んでいました」
平山「ああいう悲鳴は、演技指導もなにもなく、おまかせというか『思いっきりやってください』とお願いするんです。なので最初にやった時に、撮ってるスタッフの人が『なんだこれは…』と呆然としていましたね(笑)。でもそれがポスターにもなるし、『学校の怪談』の顔になった。野村さんなりにかなり計算されていたのだと思います。2作目になった時に、それをどういうふうに上手に使うか考えたら、ろくろ首の岸田今日子さんがいたんですね。もうこのカットバックしかないと」
奥寺「私はたくさんありますが、特に印象深いのがインフェルノを最初に初号で観た時に、『こんなに怖くて大丈夫かな?』と」
平山「佐藤(正弘)さんじゃなくて作りもののほう?(笑)」
ーー続いて、皆さんの好きなお化けは?という質問も寄せられています。
野村「演じている時には、なにもない状態で撮影していたので、出来上がった時に『こういうお化けだったのか』となりましたね。やっぱり印象に残るのは、一番最初に私の後ろに出てきたテケテケですかね」
平山「僕は花子さんですね。1作目にも2作目にも出てきますが、絶対に顔を見せていない。それがいいと思っています。子役としても花子さんを演じるのはあまり気持ちのいいものではないと思いますし、正体がわからないのが一番お化けっぽいし怪談っぽい気がします」
奥寺「私も花子さんです。このシリーズを象徴する妖怪というかお化けですし。あと2作目の人面犬も好きです(笑)」
ーー口裂け女の保健室は、どのようなイメージで作られたのでしょう?
平山「口裂け女はヨーロッパのホラーっぽい造形にしています。とにかく日活の撮影所のなかで使えるセットが廊下一本と怪談と教室一個しかなかったんです。なので1階の廊下を歩いて階段を上って2階に来るシーンでは、その廊下は1階のものの作り直しなんです。3つしかないものを飾りを変えて作っていました。美術は本当にすばらしいと思いますし、僕自身も台本を現場に忘れて取りに帰ったことがあったのですが、ものすごく怖かったです(笑)」
ーークマヒゲさんがインフェルノになった理由についての設定を教えてください。
奥寺「やっぱり道徳に厳しいので、あるレベルを超えると…。ルールを守らせたい一心なんです(笑)」
ーー最後に、Blu-rayでの楽しみ方などメッセージをお願いします。
野村「Blu-rayになっていなかったこと自体知らなかったのですが、きっと映像も綺麗になることでしょう。子どもの頃にご覧になった方が、今度は親になってお子さんと一緒に観ることができる。代々続いていく映画で、いずれ私がいなくなっても引き継がれていくことを楽しみにしています」
奥寺「Blu-ray化、すごくうれしいことです。家で友だちとかたくさんの人とツッコミを入れながら楽しんで観てください!」
平山「自分が作った映画が30年経ってもう一度上映されること自体がうれしいことですし、Blu-rayとして残っていくこともとてもありがたいことです。それにこうやってイベントをやっていただけて…。『学校の怪談』シリーズは4作目までありますが、同窓会みたいなものをやってみたいという気がしました」
取材・文/久保田 和馬

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