巨人と阪神の強力投手陣にねじ伏せられたDeNA打線。交流戦後は一矢報いることもできずに敗れた。(C)産経新聞社

リーグ奪還が遠のく現状

“奪首”を目標に掲げた今季にセ・リーグ制覇を目指しているDeNA。しかし、目標達成に向けた現状は借金2。首位に立つ阪神まで8.5ゲーム差と苦しい戦いが続いている。

 痛恨だったのは、交流戦後のリーグ戦再開から迎えた巨人、阪神との上位チームとの連戦で1勝もできずに終わってしまった点。この結果をもって、今季は阪神に4勝8敗、巨人にも2勝7敗と大きく負け越してしまった。

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 敗因はもちろん一つではない。しかし、巨人戦では0、阪神戦で2と得点力不足に泣いた攻撃陣の不振が敗戦に直結してしまっている部分は、目を背けられない明らかな課題だ。

 DeNAの攻撃に関する作戦などを統括している靍岡賢二郎オフェンスチーフコーチも、打線の苦しい現状は百も承知だ。中日戦で大活躍した井上絢登が頭角を現しているが、「(井上に)頼るというのもちょっと寂しいこと」とポツり。そして、「その日の打線の中で誰かしらがカバーしないと。誰か出塁して誰かがつなぐという循環になれば、点も入ってくると思います。誰かにおんぶに抱っこというのは避けたいので、そこは注意していきたい」と理想を語った。

 理想はある。それでも目の前には思うように機能していない現実がある。無論、交流戦から各球団のエース級との対戦が続き、巨人戦では山﨑伊織、フォスター・グリフィン、赤星優志、阪神戦でも村上頌樹、ジョン・デュプランティエ、伊藤将司と投手個人成績上位に位置する好投手に当たる“不運”もあった。

 その“運”について、「ローテーションの兼ね合いや雨でのスライドなど、こちらではコントロールできないですからね」と漏らす靍岡コーチだが、「だた優勝するためには、エース級を攻略しないと先には進めないですからね」と打開策を語る。

「簡単に打つことができないのであれば、例えばですけれどもコンタクトのいい選手を並べる、フォアボールを取れる選手を並べるなどにもなってきます。それもゾーンで勝負してくるピッチャーフォアボールを与える率も低いので、どちらに天秤をかけるのかというところは難しいとは思いますが、毎回毎回同じようなやられ方をされてはいけない。いい投手相手にネガティブにならずに、また違った形の攻め方ができれば活路を見いだせると思います」

 オーダーの変更も辞さない考えを明らかにした靍岡コーチは、「一人ひとり、個々で考えるのではなく、今いるチームスタッフ、選手全員で攻略できるなにかを見つけていければいいと思います。そこを倒さないと優勝はないので、割り切って思い切っていくしかないです」と団結を強調。「もうそのフェーズに来ていると思う」と早急な改善が必要だと説いた。

「出来ないのならば外れてもらうしかない」

 個人だけではどうにもならない。その改善点は村田修一野手コーチも「チームとしてかかっていかないといけないです。打線として、どう攻略していくかが課題です」と靍岡コーチに同調する。

「実際に打てていないので、全体でこうやっていこうとしないと。球数を投げさせるのならば粘れる選手を出すなど、そういう打順を組まないといかないですし、走らせたいならばそういう選手を出す。それを考えていかないといけない」

 手を焼くエース級投手の対策は「相手が上ならそれで策を練らないと」。そう語る村田コーチは、「でも相手は打たれていないので配球も変えずに、結局、同じようにやられている。僕は割り切りだと言っているんですけれども、ただ思い切ってバットを振るのは違う」という。

「ゾーンに投げミスをしてきたボールはポンって当たるかも知れないですけど、1軍ではその確率は低いんです。2軍では良くても1軍では打てないのはただ強く振れるだけ、練習で打球速度が出ている選手もそれだけやっているから」

 チームの不振を辛辣に論じる、かつての4番打者は、「厳しいですけれども、それが出来ないのならば外れてもらうしかないです」とキッパリと言う。

「外れたくないなら自分で成績を出すしかない。ベンチが『このピッチャーをこうやって攻略しようぜ』ってなったときに、それについてこれるのがいい選手でプロ。それもできて自分のバッティングもできるようにならないと。ずっと3割30本100打点をやってくれるならいいですけれども、それが出来ないならチームが勝つための野球もアタマに入れてくれないといけないですね」

“野球IQ”を磨く重要性を力説する名手は、長く苦戦を強いられている山﨑の“打倒”にも、それが関連してくるという。「シュートやカットが来たときにファールにする練習もしておかないといけない。そのためにはバットを長く持っていては操作しにくいよね、できないならば短く持っていこうとか」と状況に応じた“考える野球”に立ち返るべきという持論を展開した。

「短く持ってファールを打って球数を投げさせる、そういう姿勢があるのか。必死に短くバットを持ってファール。それは恥ずかしくもなんともないと思うんです。『ここまでして攻略する気持ちが本当にありますか?』というところですね」

 貧打に直面する現状を「打てたときはいい、打てないときは完敗っていう野球になってますからね」と憂う村田コーチは、「打てるというのがありきになってたので、打てなかったときにどうやって戦うかというような危機管理的な練習をしていないんです。オープン戦や春先にやっておかなければいけなかった」と自戒を込めて言う。そして、さらに鋭い眼光を向け、こう続けた。

「いまは白か黒かではなく、濁ったグレーみたいな感じで試合が進んでしまっている。決断のところで僕らもまだ強く言えていないので、結果を受け止めてやっていかないといけないですね。僕らでそこは変えていかなきゃいけないと思っています」

 7月に入り折り返し地点に差し掛かったペナントレース。開幕当初から目指してきた場所に辿り着くためには、一刻も早い攻撃面でのドラスティックな改善が必須となってくるが、果たして――。

[取材・文/萩原孝弘]

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