国土交通省の航空局安全部安全政策課航空安全推進室からモバイルバッテリーの航空機内での取扱いが変わる旨の協力要請が出た(国土交通省による発表、およびPDF)。

機内における発煙、発火などの対応を強化し、客室安全の向上を図るために、航空関係団体と連携して、統一的な取り組みとして協力要請事項を講じたものだ。

この要請によって、7月8日以降に発着する日本の航空会社の便では、下記の2点が徹底されることになる。

1. モバイルバッテリーを座席上の収納棚に収納しないこと。
2. 機内でのモバイルバッテリーから携帯用電子機器への充電又は機内電源から モバイルバッテリーへの充電については、常に状態が確認できる場所で行うこと。

国土交通省モバイルバッテリーの機内持ち込みに注意喚起

先日、韓国から羽田へのANA便で、モバイルバッテリーの持ち込みについて注意要請メールが届いたものの、機内での徹底がなかったことについて書いた。搭乗前日にANAから送られてきたメールの諸注意は、韓国国土交通部から韓国の航空会社に向けたものであり、日本の航空会社への強制力はないことに言及したが、今回は、日本の当局による日本の航空会社への要請だ。ただ、韓国国土交通部の指示より、少し、ゆるめの要請となっているのは少し気になる。

機内預け入れ荷物に入れてはいけないことや、短絡を防ぐ措置、160Whを超えるものは持ち込み不可といった点は以前と同じだ。短絡防止として、購入時の容器に収納したり、端子部分をテープで覆うことや、個別に袋に収納するような事故防止策が紹介されている。これらは航空法による義務事項となっている。

これらに加えて、座席上の収納棚に収納せずに手元で保管することが求められるようになった。ただ、機内におけるモバイルデバイスへの充電や、機内電源からのモバイルバッテリーの充電については禁止されていない。常に状態が確認できる場所で行うように呼びかけられている。
○収納棚での保管はNG。JALやANA、LCC各社も対応を表明

今回新たに追加された項目の、収納棚に入れずに手元保管することや、使用時の注意などはあくまでも協力要請事項だ。韓国国土交通部のように禁止を要請しているわけではない。

ちなみに、外国の航空会社便を利用する際には、それぞれの航空会社の決めたルールにしたがう必要があるという。つまり、韓国の場合なら、ANA便やJAL便では日本のルールを守ればいいが、大韓航空アシアナ航空などを利用する場合は、韓国のルールにしたがう必要がある。

国土交通省からのお知らせを受けて、ANAやJALスカイマーク、またLCC各社からも取扱についてのアナウンスが出た。
○中国国内線ではCCC認証モバイルバッテリーのみ持ち込み可能に

なお、他国の動きとしては、中国民用航空局は6月26日に緊急通知として3C認証マークのないモバイルバッテリー、3C認証マークが不明瞭なモバイルバッテリーリコール対象となっている型番またはロットのモバイルバッテリーを乗客が中国国内線に機内持ち込みすることを禁止したそうだ(該当の発表文)。3C認証の正式名称は「中国強制製品認証」で、中国ではモバイルバッテリーの生産・販売に認証取得が義務付けられている。持ち込み禁止は今のところ、中国内便だけが対象のようだ。

日本のブランドのモバイルバッテリ製品の多くは、中国で生産されたものだが、PSEマークはついていてもCCCマークがついているものは見かけない。必然的に中国内便には持ち込めないことになったわけだ。乗客は自主廃棄か、有料での一時預かりか、宅配便送付を選ぶしかない。

国土交通省の今回の要請も、各国の動きに倣い、今回の要請に至ったものと思われるが、なんとなく、諸国に比べて厳しさが足りないようにも感じられる。とにかく悲惨な事故が起こらないように、航空機を利用する旅行の際には気をつけてほしい。事故の起こる可能性を少しでも減らすことは重要だ。自分一人の小さなバッテリくらい大丈夫だろうという判断でルールを守らないというのは絶対にダメだ。

著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーデオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら
(山田祥平)

画像提供:マイナビニュース