香港で自動運転のバス同士がクラッシュ! 単純なシチュエーションでの事故が物語る自動運転の難しさ

この記事をまとめると

■香港国際空港内で自動運転バス同士の事故が発生

■アメリカなどでは淡々と一本道が続くエリアがあるので自動運転の需要が高い

■自動運転同士の事故が発生した際は原因究明に時間がかかると考えられる

無人バス同士での事故が発生

 報道によると2025年6月21日(土)、香港国際空港第1ターミナル近くの制限区域内において、無人運転バス2台による衝突事故が発生した。発生したのは21日夕方となり、第1ターミナル南西角付近の誘導路が交わる交差点とのこと。

 本来なら、優先道路側の無人バスが通過するのを停止して待たなければならなかった無人運転バスが、停止せずにそのまま交差点内に進入し衝突事故が発生したとのことである。

自動運転が抱える課題

 衝突した無人運転バスは空港職員送迎用のものであり、事故を起こした2台の乗客はゼロ。怪我人などは発生しなかったそうだ。

 ただし、事故が発生した詳しい原因解明及び予防対策が講じられるまでは、すべての無人バスの運行停止措置がとられた。空港ターミナルの近い場所で発生したこともあり、2台の無人バスが衝突した画像がネット上で拡散されている。

 香港では中国大手プラットフォーマーとなる「百度(バイドゥ)」の自動運転タクシーサービス、「Apollo Go」が許可を得て試験運行をスタートさせている。試験運行は2029年12月8日までとなっており、10台の同サービス自動運転車両が試験運行を行っている。ただし、アメリカでの自動運転タクシーの試験運行同様に、香港全地域で試験運行が可能というわけではなく、香港国際空港と限られた地域間のみでの試験運行となっているとのこと。

自動運転が抱える課題

 香港の地元テレビ局は、香港国際空港での自動運転バスの事故報道の際、香港での自動運転タクシーの試験運行を引き合いに出し、「自動運転タクシーでも同様の事故が発生するリスクがないのか、確認する必要があるのではないか?」と伝えていた。

 一般道路では自動運転車両とともに、圧倒的にマニュアル運転(人間が操作する)車両の数が多く、混合交通という状況が香港だけではなく多くの地域でしばらくが続くことになる。ただ今回は、香港国際空港の制限区域内で発生し、区域内ではバス以外でも無人運転車両がかなり多く走っている。限られた地域内、しかもかなり条件のよいなかで発生した事故だけに、発生原因の解明が待たれるところだが、関係者のショックも大きかったようだ。

自動運転における事故は原因究明が厄介に

 日本ではレーダークルーズコントロールが急速に普及しているものの、実際は意外なほど活用されていないといった話を聞いたことがある。アメリカではかなり前から、一般的なクルーズコントロールはマストアイテムのように装着されていた。ただし、アナログメーターの針を見て速度設定するので、同じように時速70マイルに設定しても、微妙な設定のズレから、だんだん接近していってしまうことがよくあった。

 その後、アナログメーター車でも計器盤内に小さなデジタルディスプレイが設置され、そこに速度がデジタル表示されるようになり、数字でクルーズコントロールがセットできるようになると、設定誤差というものもだいぶ改善され、定速走行がしやすくなった記憶がある。

自動運転が抱える課題

 とはいえ、個々で設定速度が異なれば速度調整が必要となってくるのだが、しばらくすればCC(クルーズコントロール)ではなく、ACC(アダプティクルーズコントロール ※レーダーなどを使用して設定した速度内で前方車両の速度に合わせて自動的に速度調整が可能)が当たり前となれば、さらにイージーに長距離ドライブを楽しむことができるだろう。

自動運転が抱える課題

 日本で自動運転というものは、バスやタクシー、トラックの働き手不足対策のような捉え方が目立つが、アメリカで砂漠の一本道を走っていると、対向車はおらず、まわりは砂漠が広がっているだけで障害物もないようなシチュエーションがある。こういったシーンでは、「個人運転レベルでも完全自動運転できればいいなぁ」と考えてしまうことがある。

自動運転が抱える課題

 ただ、ファミリーレストランのネコ型配膳ロボットでもロボット同士でぶつかりあうこともあると聞いたことがあるので、絶対といえるほど万全な技術というものは存在しない。自動運転車の絡む事故が発生したときには、今回の香港の事象のように、「なぜ起こった?」と、システムから見直さなければならないという点では、いままでの交通事故より厄介なのではないかと、筆者は考えてしまった。

自動運転が抱える課題

香港で自動運転のバス同士がクラッシュ! 単純なシチュエーションでの事故が物語る自動運転の難しさ