
2025年5月20日に発売がスタートした、NVIDIAの最新ミドルレンジGPU「GeForce RTX 5060」。RTX xx60シリーズは各世代ともゲーミングPCにおけるスタンダードなGPUとして人気を集めているが、ビデオメモリが8GBでは足りないとも言われている現在、前世代から据え置きの容量で大丈夫なのか。16GBの容量を備えるRTX 5060 TiとRadeon RX 9060 XTも交えて、実力をチェックしていこう。
今回扱うGeForce RTX 5060は、RTX 5060 Tiとセットで2025年4月15日に発表されたミドルレンジGPUだ。NVIDIAによる価格の目安は55,800円で、原稿執筆時点の2025年7月上旬はこの価格帯のカードが中心になって販売されている。ただ、最安値クラスだと5万円前後の製品を発見することもでき、RTX 50シリーズとしては買いやすいGPUと言ってよいだろう。
ビデオメモリの規格は上位グレードと変わらないGDDR7で、容量は8GBのみ。RTX 5060 Tiと比べるとメモリバス幅は128bitと変わらないが、CUDAコア数は2割減となった。その代わり消費電力は145Wとかなり低めで、補助電源も8ピン×1基だけで済むのでかなり扱いやすい。シングルファンのショートサイズモデルも登場しており、小型PCに組み込みやすいのは強みと言ってよいだろう。
Blackwellアーキテクチャについて詳しくは『DLSS 4のマルチフレーム生成の威力を見よ! ゲームとAIが融合する「NVIDIA GeForce RTX 5090」レビュー』を確認してほしい。1フレームから最大3フレームをAIによって生成するマルチフレーム生成を実現する「DLSS 4」のサポート、マウスやキーボードの入力から画面への反映ラグを従来よりも75%短縮する「NVIDIA Reflex 2」、第9世代NVENC/第6世代NVDECによるH.264/H.265コーデックの「4:2:2フォーマット」に対応といった特徴は上位グレードと同様だ。なお、NVENCは1基だけの搭載となる。
性能テスト前に、今回使うMSIの「GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OC」を紹介しておこう。なお、RTX 5060にはNVIDIAのリファレンスモデルと言えるFounders Editionは用意されていない。
GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OCはシンプルなツインファンを搭載する一般的な仕様で、カード長は197mmと短く多くのPCケースに組み込みやすい。
○GeForce RTX 4060から着実に性能向上を果たす
さっそく、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。比較対象としてGeForce RTX 5060 Ti(16GB版)/4060、Radeon RX 9060 XT(16GB版)を用意した。ドライバに関しては、GeForce系は「Game Ready 576.80」を使用、RX 9060 XTは「Adrenalin Edition 25.5.1」を使用している。
CPU:AMD Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド)
マザーボード:ROG CROSSHAIR X870E HERO(AMD X870E)
メモリ:G.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSD:Micon Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB)
CPUクーラー:Corsair NAUTILUS 360 RS(簡易水冷、36cmクラス)
電源:Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold)
OS:Windows 11 Pro(24H2)
まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。
RTX 5060は、前世代のRTX 4060に対して約30%のスコア向上を確認できる。着実な進化と言ってよいだろう。上位グレードのRTX 5060 Tiに対しては10~15%程度性能に差をつけられている。
続いて、実際のゲームに移ろう。まずは、定番FPSの「オーバーウォッチ2」、ハンティングアクション「モンスターハンターワイルズ」の公式ベンチマークを試そう。オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。
なお、DLSS SR/FSR SRという表記はSuper Resolutionの略で、モンスターハンターワイルズだけは画質ウルトラのプリセットに従って「クオリティ」設定を採用しているが、それ以外のゲームではすべて「バランス」設定だ。FGはFrame Generationの略でフレーム生成を指す。MFGはMulti Frame Generationの略でDLSS 4のマルチフレーム生成を指し、1フレームに対して3枚の生成をMFG x4と表記している。
オーバーウォッチ2はアップスケーラーやフレーム生成を使っていないので、従来からのラスタライズ性能比較になるが、3DMarkと同じ傾向だ。ただ、RTX 9060 XTに対してはフルHDではフレームレートが上回っているが、WQHD/4Kでは逆転する。4KではRTX 5060 Tiも上回っており、高負荷時に強さを見せた。
モンスターハンターワイルズについては、最高画質だとビデオメモリ16GB以上を求めるだけあって8GBのRTX 5060やRTX 4060は高いフレームレートが出ていない。16GBを搭載するRTX 5060 TiやRX 9060 XTに大きな差を付けられた。とくにRadeon RX 9060 XTが強いタイトルだ。ただ、ゲーム本編では6月30日のアップデートでDLSS 4 / FSR 4に対応したので、機会があれば公式ベンチマークではなく、実ゲームのほうでもフレームレート測定を試してみたい。
続いてフレームレートの上限が60fpsのゲームとしてELDEN RING NIGHTREIGNを試してみたい。これはアップスケーラーやフレーム生成に対応しないタイトルだ。円卓の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。
それほど描画負荷が高いタイトルではないので、RTX 5060はWQHDまでは上限の60fps、4Kでも平均56.7fpsと快適にプレイできるフレームレートが出ている。RX 9060 XTの4Kが伸びなかったのが意外なところだ。
続いてDLSS 4のマルチフレーム生成に対応したゲームを実行していこう。「The Last of Us Part II Remastered」、「サイバーパンク2077」、「DOOM: The Dark Ages」を用意した。
The Last of Us Part II Remasteredはジャクソンの一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077とDOOM: The Dark Agesはゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。DOOM: The Dark Agesは、パストレーシングを有効、無効の2パターンでテストした。
The Last of Us Part II Remasteredはマルチフレーム生成の威力もあって4Kでも平均80.5fpsと快適にプレイできるフレームレートを出した。その一方で、通常のフレーム生成となるRX 9060 XTにはWQHDと4Kで負けている。高負荷時はRX 9060 XTが強さを見せる。
サイバーパンク2077は、すべての光源の経路(パス)を再現するパストレーシングを有効にする設定だけに描画負荷は強烈で、4Kだとマルチフレーム生成が有効に働かず、フレームレートが伸びていない。このあたりにビデオメモリ8GBのミドルレンジGPUの限界が見えるところだ。
DOOM: The Dark Agesのパストレーシング有効時はもっと極端だ。ビデオメモリ不足からほとんどまともに動作していない。超高負荷の状況では基本性能の高さ、ビデオメモリを16GB搭載していることが重要になってくる。パストレーシングを無効にするとフルHDでは高いフレームレートが出るようになるが、WQHD/4Kはやはりまともに動作しない。高画質設定でWQHD以上はビデオメモリ不足だ。それはRTX 4060の結果にも表れている。
○CGレンダリングやAI処理も試してみる
続いて、3DCGアプリの「Blender」を使ってGPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」を実行しよう。
一定時間内にどれほどレンダリングできるかをスコア化するテストだ。ここではCUDAコア数の多さが効くので、それがそのまま結果に出ている。
AI処理はどうだろうか。LLM(大規模言語モデル)の処理性能を見るProcyon AI Text Generation Benchmark、さまざまな推論エンジンを実行してスコアを出すProcyon AI Computer Vision Benchmarkを試した。GeForce系はTensorRT、RX 9060 XTはWindows MLの設定で実行している。
AI Text Generation Benchmarkでパラメーターが大規模になるLlama-2-13Bは、ビデオメモリ8GBではそもそも実行できない。大きなビデオメモリ容量を求めるAI処理を行いたいなら、16GB以上を搭載するGPUが必須になる。AI Computer Vision Benchmarkもシンプルな力関係が出ている。RX 9060 XTは互換性の高いWindows MLでの実行となることもあってスコアが伸びていない。
○RTX 4060より消費電力は増加もワットパフォーマンスは良好
ここからはカード単体の消費電力をチェックしよう。ビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を使用した。サイバーパンク2077の各解像度での消費電力を測定している。
GPUのカード電力通りの結果と言える。RTX 4060は低消費電力だが、より高い性能を実現できているRTX 5060のワットパフォーマンスは決して悪くない。
○GeForce RTX 4060からは着実な進化、ただしVRAM 8GBは後々ネックになるかも
と、ここまでがGeForce RTX 5060のテスト結果だ。前世代から着実な進化を遂げており、DLSS 4への対応など機能面も含めてさすが新世代のミドルレンジGPUと言ってよいだろう。その一方で、ビデオメモリ8GB以上を求めるようなゲームや画質設定、解像度においてはフレームレートがほとんど伸びない状態も確認できた。
フルHD環境で必要十分な品質設定のゲームを快適に遊べれば良い、という用途であればまったく問題ないと思うが、せっかくPCでゲームをプレイする上で多少はリッチな画質で楽しみたいと考えているなら、16GBのビデオメモリを搭載するワンランク上のGPUを選んだ方がより幸せになれるだろう。
(芹澤正芳)

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